人生には何の役にも立たない知識・思考をつらつらと書くエッセイ集
藤井聡太と羽生善治が戦うタイトル戦が、現在開催中なんです。あなた、知ってました?
字数と文章のリズムを考慮し、また将棋界を知らない人にも読みやすいように称号を使わず、棋士の名前のみで書いています。また将棋を知らない人が専門用語の羅列で読みにくくならないよう、3一銀、5二銀などの指し手は書かないようにしました。
なお「指す」という言葉を多用していますが、これは将棋において「一手を進める」という意味です。将棋に詳しくない方はその辺りご留意ください。
現在、王将戦というタイトルを争って、藤井聡太と羽生善治がタイトルを争っております。
彼らは何度も戦っていますが、タイトル戦で戦うのは初めて。
新旧の第一人者が戦うという事で、まさに大注目の戦いなのです。
王将戦は7番勝負。7番勝負とは4先、先に4勝した方が勝ちのルールです。
持ち時間は8時間。
各持ち時間が8時間という事は、二人合わせて16時間。
非常に長丁場の為、この王将戦の戦いは一局、つまり一回の勝負が2日に渡って行われます。
そして、日を改めながらそれを最大7回も行う戦いです。
この戦いのドラマを皆さんに知っていただきたいとの思いから、筆を取った次第です。
どうぞお付き合いくださいませ。
さて、今や知らない人などほとんどいないのではと言えるまでに有名になった、藤井聡太。
史上5人目の中学生棋士(棋士とは将棋プロの事)であり、そして最年少プロデビューを果たし、デビュー以来29連勝という連勝記録の新記録を打ち立て、プロ将棋の世界(以下、将棋界)の最高連勝記録を更新した彼は、一躍時の人になりました。皆さんもニュースで見たのではないでしょうか。
その後、弱冠17歳11カ月で最年少初タイトルを奪取。
そして令和5年現在、20歳の藤井総太はなんと5冠王。もちろん5冠になったのも最年少。
現在は竜王・王位・叡王・王将・棋聖のタイトルを保持し、名実ともに棋界のトップとして君臨しております。
今期の勝率は驚異の8割越えで今季のトップ。5冠王という事で多くのタイトル戦での戦いを含むにも拘らず、とんでもない勝率です。
将棋界で勝率トップの称号は、若手棋士が下部リーグや予選トーナメントの戦いで連勝して稼いだ結果であることが多いです。トップ棋士との対戦が多い藤井総太の勝率が高いというのは異次元のレベルであると言えるでしょう。
藤井総太は現在タイトル戦で12連勝中。つまりタイトル戦を勝ち上がってくるようなトップ棋士でも勝つことが難しい。それだけでとんでもなく強いことが感じられますね。
新進気鋭の、弱冠20歳の藤井聡太。しかしその力は現在の将棋界でトップであると言っても誰も否定しないでしょう。
彼の凄さは現在、様々な記事などで示されていますが、例えば
「ソフトが4億手読んでも3番手候補にさえ上がられなかった手を藤井聡太が指した。それは実はソフトが6億手まで読むと最善手になる手だった」
「対局中の解説に使うソフトが候補に指し示す手が余りに常識からは異常なので、解説のプロたちが『これが指せるなら人間ではない』『もし指したら神の一手だ』という指し手を藤井聡太は指した」
などの伝説を彼は作ってきました。
彼はまさに異次元の能力を持った、新時代のヒーローであると言えるでしょう。
一方、その藤井聡太に対するのが羽生善治。
彼は常に将棋界の第一人者として、長い間君臨してきました。
そして前人未到の7冠全冠制覇を成し遂げた唯一の人物です。
将棋プロの名前を全く知らない人でも、いろんなテレビ番組やイベントに出てくる羽生善治を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
7冠制覇後も彼はタイトルを複数保持し続け、タイトルを取って以降では2冠以下になった事がない。間違いなく将棋界史上最強とも呼べる実績を積み重ねてきました。
そして、2017年に竜王のタイトルを獲得したことで、永世竜王の称号の権利を獲得。これによって羽生善治はついに7つのタイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)で永世称号を獲得。
彼は永世7冠と呼ばれるようになりました。
永世称号って何? って人に解説。
各タイトルでは、連続5期や通算7期、通算10期など、タイトルを取った回数や連続防衛記録を達成した棋士に称号が与えられます。まさに勲章であり、大変名誉なもの、実績十分を示したものと思ってもらえれば良いでしょう。
たった一つの永世称号を得るだけでも名棋士として歴史に語り継がれるレベル。それを7つのタイトルで取ってしまった羽生善治はまさに異次元の強さを誇ってきました。
そんな凄い羽生善治に、時代の流れが襲います。
そう、コンピューターソフトの解析による将棋の進化の加速です。
今の将棋界は、ソフトで良い手を検討し、それを学ぶ。自分が考えた手をソフトに検討させ、本当に良い手なのか調べる。こういった事が当たり前のように行われるようになりました。
もちろん羽生善治もソフトを使って将棋の研究していました。しかし、今まで積み重ねた自分の戦い方に合わなかったのでしょう。永世7冠の目標を達成し、モチベーションが下がった事も要因かもしれません。
羽生善治は、今までにないくらい勝てなくなっていきました。
2018年。ついに彼は今までずっと複数保持していたタイトルをすべて失い、27年ぶりの無冠となってしまいます。
さらに2021年、彼の勝率は見る影もなく落ち、デビュー以来の最低成績、なんと勝率3割台にまで落ち込んでしまいます。
羽生ファンを含む将棋ファンは皆、思いました。
「ああ、ついにあの羽生善治にも年齢と時代による衰えが来たのだ。人間なのだから、衰える事は仕方ない事なのだ。悲しいが、俺たちは羽生善治の晩年を看取らなければいけなくなったのだ」
彼の年齢は2022年には既に52歳、頭の回転の速さや記憶力が勝負能力に直結する将棋という戦いに挑むには、そしてソフトを使った進化の早い現代将棋で戦うには荷が重すぎたと皆が思いました。
彼がアラフィフまで戦えたことが奇跡なのだ。ファンはみな、そう思ってしまいました。
ところが、ところがの2022年。
あの、強い羽生善治が帰ってきたのです。
あれだけ下がった勝率は何と6割を超えるまでに回復。
あれだけ苦戦していた、現代将棋の棋士たちをどんどん撃破。
この王将戦では予選のリーグ戦をなんと6連勝、無敗で突破。
ついに、現在最強の藤井聡太とのタイトル戦に臨むことになったのです。
しかも羽生善治の通算のタイトル獲得数は現在99期。
そうです、あと1回のタイトル奪取をすれば、前人未到の100期が賭かっているのです。
一度は奈落まで落ちたヒーローが復活し、記録を賭け最強の敵に挑む。
まるで小説のプロットのような燃える展開です。
さて、羽生善治は何故復活できたのか?
これは伝聞で聞いた話なのですが
「今までソフトを使ってどうやって勝つかを考えてきたが、それでは勝てなくなった。そこで、ソフトを使っている棋士たちにどう勝つかを考えるようになったら勝てるようになった」
という事らしいのです。
…………はっきり言って、意味が分かりません。
なんでそれで勝てるようになったの?
とにかく、羽生善治がまだまだ凄いのだという事だけは分かりますね。
まさに二人とも生きた伝説と呼べるもの同士の戦い。
是非、ニュースでチェックしてみて下さいね!
将棋プロの戦いをチェックするファンを観る将と言います。
あなたも是非、観る将になりませんか?
難しい将棋の理論なんて知らなくても大丈夫。
まずはこの二人の戦いをニュースで追ってみて下さい。
二人が戦う王将戦は、1月21日・22日に第2局が行われます。
1月28日・29日に第3局が行われます。
注:なお結果が出た後も詳細は書いておりません。
興味のある方は是非、検索して調べてみてくださいね!