聖女サリー
聖女サリーは平時であれば聖者たちの教育を行う教師であり、また大聖者ララに付き従い、身の回りの世話をする侍女でもある。今は大聖堂が機能していないため、教師の仕事は休職状態であるが、ララが聖国に帰国したことにより彼女の看病を再開したところであった。
「サリー様、話し合いはいかがでしたか? みんなが元気になる話題でもありました?」
聖女ルーシーが、ローラシアのバルトス殿下が乗り込んできたことが気になるのかサリーに質問した。
「どうかしら? バルトス殿下は西部地区の平定に意欲的でしたね。連れてきた精鋭を使って下さるようです」
「まあ! 心強い援軍ですわ」
「その精鋭の後方に、私たち聖者を五名帯同してもらいたいとご命令よ。明日にでも人選に入りましょう」
「はい」
そう話しているとドアがノックされ、入室を求める者がいる。聖女アニーが上階で寝ているララの世話を終えて下りてきた。
「アニー、ララ様の具合はどう?」
「……はい、無理に移動されてきたせいか、お体の調子がよくありません……」
「……そうですか、引き続き交代でヒールを行いましょう」
「「はい」」
サリーはそうだわと思い出し、こちらに新たな聖女が向かっていることを話す。
「そういえばこちらに病を治せるという聖女が向かっているらしいわ」
しかし二人の反応は鈍い。
「……それは」
彼女らも偽聖女の事件は記憶に新しい、どう答えていいか迷っている。
「バルトス殿下が来られたのはその方の確認もあるそうよ」
「そのような方が……急にどこから……」
「トーレス地方にいたそうよ」
「「……」」
トーレス地方はパノティアに近く、プリアから遠いためリリア聖国では田舎の地域として認識されている。
「クリフが遠出しているのはその方を迎えに行ったそうなの。こちらに何も話がないのですから困ったものです」
「クリフ様が不在なのはそういうことだったのですか……その方はいつ頃ここへ……」
「わからないわ」
「……」
「まあ、あまり過度の期待を持たずに待ちましょう」
「はい」
サリーは二人が退出した後、上階に行きララの様子を見に行く。ララは相変わらず苦しそうで、ララの側付きとして胸が痛んだ。すぐにサリーはララに触れてヒールをかけるが、安定するのは一時的ですぐに容態がもとに戻ってしまうのだった。
「サリー、ごめんなさい。本来なら私が皆を指揮しなければいけないのに……」
「何を仰いますか、今は無理をされないでください。みんなララ様が元気になられるのを待っているのですよ。危険を承知でここへ戻られたのは病を治せるという方をお待ちしているのでしょ?」
「……ええ、アルテミス様という方らしいのです」
「そんな! 主神と同じ名とはまたびっくりしました。殿下はずいぶんその方に期待されておいででした」
「わたしはこの苦難の時に女神様と同じ名の聖女がいることは偶然とは思えないのです」
「わたくしもそう信じております。ここは女神さまの国ですから私たちをお見捨てにはされません、待ちましょう、ララ様」
「ええ」
サリーはララの寝具を掛けなおし、枕の横に置いてある小さなアルテミス像を見ると、目を閉じてララが元気になることを祈った。




