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アルテミス対サルロ

 

 アルテミス達はそのまま人気がない大通りを歩いていると、横道から唐突に声が掛かる。


「これはこれは、町の男どもが”仕事”をせず歩いているからと見に来てみればお美しい方が歩いていらっしゃる」


 その声に白銀の目がサルロを射抜くと、ぎょっとして彼は硬直したが、すぐに笑みを浮かべた。


「この町の長はすでに死んでおります。ご用であればわたくしサルロがお聞きしますよ」


「あら、探す手間が省けましたわ。そうね、業火の炎で燃やす前にお聞きしたいことがあります。あなた方に闇魔法を習得させたのは誰かしら?」


「フフフ、このような場であのお方の名を口にするのも恐れ多いこと。ただあなたはお美しい。お気に召すかもしれない、フフ」


「お話になりませんわね。まあ使い走りに聞く方が悪かったかしら」


「……おもしろいお嬢さんだ、ところで周りが見えているか?」


 周りの建物の上や窓、背後と黒ローブの集団に三人は囲まれていた。リカルドとジャックはすかさず剣を抜く。クリフは青ざめているが、アルテミスが微動だにしない以上、勝手に動くわけにもいかずその場で体を硬直させた。アルテミスはそんな状況にも笑顔を浮かべて、よいことを思いついたと三人に指示する。


「そうだわ! リカルド、ジャック。わたくしがすべて倒してしまってはあなた方は一向に鍛えられない。あなた方には加護を与えますので後ろの者は任せます。クリフは騎士の援護をしなさい」


 アルテミスはそう言うと、”エデン”来なさいと右手を掲げた。すると彼女の前に銀の光が集積し次第にそれは杖の形になる。アルテミス専用武器であるエデンは、真っ白に色づき始めると淡い銀の光を放った。そして彼女がその細めの美しい白い杖を掴むと一気に膨大な魔力が放出される。


「ど、どこから杖を取り出したのだ⁉」


 サルロは訳が分からず思わず喚く。アルテミスはそれにはかまわず白い杖、エデンを少し振り念じた。


「エデン、鎧は闇を打ち消し、剣は闇を切り裂け、騎士に加護を与えよ」


 そう言うと後ろにいる二人の騎士が銀色の光に包まれた。


「あなた方はわたくしを守る聖騎士になりました。そこに身に着けているのは聖なる鎧と聖剣です。さあ、恐れることはありません、後ろの闇を斬り伏せなさい」


 その言葉が早いか黒ローブ達は簡易魔法陣を展開し、そこから魔法弾を撃ち込んできた。対するリカルドとジャックは自身に付与された魔力を感じると、素早く動いて魔法弾を聖剣で斬り消した。


「いける!」


 次に二人は動揺している敵に向かって突きの体勢をとって突進した。対する闇魔法師は向かってくる二人に防御壁を展開するが、聖剣は難なくその魔法壁を破壊しそのまま鋭い刃に突き刺された。


「戦えるぞ! 俺たち」


 聖都で一方的にやられたのが噓のように剣が闇の魔法壁を切り裂くため、彼らは興奮している。


 一方、クリフはというと、高い位置にいる魔法師に火弾を撃ち込んで援護していた。しかし、クリフが放つ火弾は一つも闇の防御壁を突破できていなかった。それを見たアルテミスは一般魔法の弱さを理解してクリフに指示する。


「火魔法では全く壁を突破できませんね。クリフ下がりなさい。上にいる者は私が対応しましょう」


 上から飛んでくる闇弾は、戦いに余裕ができたリカルドとジャックが聖剣で打ち消して逆にクリフを守っていた。そこへアルテミスの声が響く。


「闇を追跡し、燃やし尽くせ」


 アルテミスはエデンを上に掲げると、そこから銀の球体が出現し上に移動していく。球体は見通しの良いところまで上昇すると、そこから一斉に銀の光線を四方八方に発射した。闇魔法師は家屋に隠れたりするが、放たれた光線は壁を通り越して目的物に当たる。それによって魔法師達は一瞬にして業火の炎に焼かれた。この炎は不思議なことに通常の火と違って罪が火種になって燃えるため、家屋が燃えたりはしないのである。その後、球体は目的物がなくなると発射をやめ霧散していった。


「なんなんだ、これは⁉」


 サルロ一人を残して敵を殲滅し終えるとアルテミスは彼に告げる。


「お待たせしました。静かになりましたので始めましょうか? ふふ、エデンにはあなたを除外するよう命じたのですよ」


 そう言いながらアルテミスはサルロに向かって優雅にカーテシーをしている。


「闇魔法は絶対の力だ! やられるわけがない!」


「それであなた、誰の使い走りなのか思い出されましたか?」


 サルロは最早聞く耳を持たず、自身の最高闇魔法を繰り出す。


「わが魔力よ、闇の鉄槌を下せ!」


 すると、上空から闇の魔力を漂わせながら猛スピードで大きい槍がアルテミスの頭上に降りかかってきた。


「アルテミス様!」


 クリフ達は大声を出して危険を知らせるが……アルテミスは微笑んだまま動かずサルロを見ている。


「質問をしたのですが、聞いてらっしゃいます?」


 槍はアルテミスの頭上、一メートルの所で突き立ったまま静止していた。その異様な光景にサルロは驚愕して尻餅をついた。


「うそだ! こんなことが! 何なんだおまえは!」


「仕方ありません、苦しんでいる民たちを待たせています。終わりにしましょう、業火の炎……」


「ま、まってくれ!……ぐあぁぁ……」


 サルロが焼かれて消え失せると、同時に頭上の槍も消えていた。


 その後、もう町に敵がいないことを確認したアルテミスは、次に町全体を癒すため中央にある広場を目指した。広場までくると彼女は町の惨状について考える。


(半分の町民は死亡し、主な生業である田畑も無残な姿になっていることでしょう。私はすべてを元通りにはできない。残された人たちの手で復興していくことが必要になる。その力を私は信じる!)


「エデン、私の願いを叶えよ!」


 そう言うと、白い杖を両手で直立に持ち、次にそれを下におろして地面を叩いた。すると叩いた音を合図に杖を中心にして一気に魔法陣が展開する。町全体がその魔法陣の中に入るとそこから発する強烈な光が上へとあがった。エデンは主の願いを叶えるべく、すべての人を癒し、さらに死んでいた田畑をも蘇らせた。死者の魂は光で包み安らぎを与え、そして人々の願いの象徴であり、ここから新たにはじめるのに必要な教会のアルテミス像を元通りに直したのだった。


 すべてが終わるとアルテミスは、エデンにありがとうと言い、エデンもそれに答えるように白く輝き返す。


「アルテミス様、町民たちが……」


 病が消え去り町の変化にも気づいた町人たちがわらわらと外に出てきてアルテミスを見つけると、まるで女神像を前にしたかのように跪いたのだった。



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