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2話


そして高校2年目の夏、とある連絡が来た。


「はい、〇〇です。はい、はい、え?」


少年がぐうたらと家で過ごしていた時、家に電話がかかってきて母親が対応していたのだが。


「本当......ですか?」


「ええ、うちの子も会いたいとは言っていました、でも............」


「そうなんですか............わかりました、伝えときます。はい、失礼します」


驚きの後に少しずつ少しずつ涙ぐんでいく声になっていき。

電話を切ると泣きながらこっちに来た。


「〇〇〇、〇〇〇ちゃんが、〇〇〇ちゃんが亡くなったそうよ............」


そして泣きながら衝撃的なことを言った。


少年の幼なじみ、幼き頃の約束の相手が亡くなったと。


「え?」

「自殺だそうよ、遺書が残っていたって。それとあなた宛に手紙もあるそうよ」

「う、そ、嘘だ!嘘だよ!そんなの!そんなのって、そんなのって............」


信じたくなかった。好きだった、いや、今も、今までずっとずっと好きだと思っていた人が自殺したなんて信じたくなかった。

それから移動時間や家族の仕事を含めるとお通夜に参加できないのでお葬式に行くということに決まった。


......お葬式の日は雨が降っていた。

まるで親族や少年の心を表すかのように。

その時に少年は渡された。


少女が遺した手紙を




この手紙をあなたが読んでいる頃には私はこの世にいないでしょう。


ふふ、それっぽいことを書いてみたよ、どう?


遺書が残ってると思うけどそっちはそれっぽいこと書いてるだけで本当の理由はこっちに書くね?

あ、誰にも見せないでよ?


私さ、ある人との約束でアイドルを目指してたんだ。

色んな人を笑顔にするため、そしてその笑顔にできるような私の力で私が好きで好きで好きで大事な人の笑顔を守れたらいいなと思ってさ。

それともう一つ、こっちの方が大事なことなんだけどね?

アイドルになることでその人がさ迎えに来てくれるんだ。

私の王子様が。


だから私は頑張った。

周りがなんと言おうとも努力した。

王子様は努力する人が好きみたいだからね。

そして自分を磨いてアイドルになるためにオーディションを受けたの。

そしたら受かってさ!知ってる?弥生芸能事務所って言うんだけどね?

最近色んな有名アイドルや歌手、俳優を排出してる事務所なんだけどそこに受かったんだ!そこで下積みしてメジャーデビュー出来るって所まで行ったんだ。


だから、だから私は、私の王子様は今どうしてるかな?って思ってさ私のお母さんに聞いたの。

知ってた?私たちのお母さんたちって連絡し合ってたんだよ?ズルくない?

そしたらさ、言われたんだ。


あの子の両親が諦めさせたらしいわよ?


って。


あの時の私の気持ち、分かるかな......


心の奥底が冷えてってさ、でも怒りは湧かないんだ。

ちっちゃい頃の約束だしな、とか両親が諦めさせたって事はずっと頑張ってたんだろうな、とか。

仕方ないって思ったよ。

でもさ無理だった。

無理だったんだよ。


怒りは湧かなかったけど私の中で全てが無くなったんだよ。


今まで周りから可愛いけど無理だと思うよ?とか、自分が可愛いからって調子に乗るなとか現実見ろとか夢が叶うって思ってんの?とかそんな子供みたいな夢を見てるより現実を見据えた方があなたのためだとか。

いっぱいいっぱいいーっぱい言われてきて自分を削りに削って。

芸能事務所に入ってからも別の事務所の子は私よりももっともっと可愛くてでもそんな子達の中から選ばれなきゃいけなくて。

私より後に芸能界に入った子が先にデビューしたり、デビューしてない子達の中でも上下関係みたいのがあってそれでいびられたりとかいっぱいいっぱい大変で、でも夢のためだって、王子様が来てくれるって。

削りに削って磨耗していったけど我慢してた。

まぁ、アイドルになる上でグループを組んでいた子だったり親友とかにも助けてはもらっていたよ。

でもさ。


無理だったよ。


耐えられなかった。


今まで信じていたものが。

大事にしていたものが。

約束が。

無くなってしまったから。


だから、だからさ。


忘れて欲しくなかった。

一生あなたの心に残るような。

忘れることが出来ないような。

そんな女の子になりたかった。

わがままだって分かってる。

だけどさ、この気持ちは私のこの気持ちは一生で一度の、そして最初で最後の恋。

初恋だったんだ。

だから




一生忘れることが出来ないような傷をあなたの心に刻むことはできたのかな?




私に恋を教えてくれた貴方に、願わくば来世があるのなら貴方と共にいれるといいな。



ありがとう、さようなら。




不知火 暁斗に恋をした女、白雪 心音





この手紙を読んだ少年は、不知火 暁斗は母に一言歩いてくると伝え手紙を握りしめて傘をささずに歩いた、雨の中フラフラと倒れてしまいそうに歩いた。


「そうか、心音、お前はアイドルになったのか、知ってるよ、ここ数ヶ月で有名な芸能人を出し始めた事務所だろ?たぶんお前が入った頃はまだ弱小、いや、今も弱小だけど来年にはもう、大手と呼ばれているであろう事務所だろ?知ってるよ、知ってるさ、なのに............」


なんで夢が叶ったのに死んじまったのさ。


分かってる。

分かってるさ。

そもそもその夢は通過点で夢だったのは俺と共にいることだったんだろ?

でも、でもなんで死んじまうんだよ!!

アイドルじゃなくても、俳優じゃなくても伝え合えば一緒にいれたじゃないか!なんで、なんでなんだよ!


いや、でも、違う、違うんだよな。

通過点でも夢であってならなきゃいけなかったし、約束を一番にしてきたのに一番がなくなってしまったからなんだよな。

支えが無くなったから。

いや、無くなったんじゃないな。

俺が支えをとったんだ。


俺が、俺があいつを............

俺のせいで............


「あっ......」


ズシャァ


雨の中車の通りのない交差点で転ぶ。


手の中で握り締められていた手紙はもう、雨で濡れてしまって読むことは出来ないだろう。


プァァーン!!!


「!!?」


そこでさっきまで全く車が通らなかった交差点にトラックが猛スピードで走ってきた。


本来ならブレーキを踏んでいたであろう。


だが今日は視界が悪くなり本当に前が見えなかったのだろう、近づいて初めて鳴らしたのだから。


転んでしまった体を動かし避けようとしたのだが。


ふと思ってしまった。


これは贖罪なのではないだろうか。


心の奥底では理解している。

心音はそのようなことを望んでいないであろう。

むしろあの手紙では生きて欲しい、生きた上で私を忘れないでという気持ちが込められていた。


だけど......


「夢を諦めてしまうような心の弱い男が耐えられるわけないだろ、会いたいよ............心音」


もし、もし次の人生があるなら何があっても折れないような人間になりたいな。


そう思った瞬間、トラックに引かれ......




不知火 暁斗は帰らぬ人物となった。


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