15話
翌日、朝から隣の家が騒がしくなっているような気がする。
うーん、多分だけど引越しの作業中かな?
まぁ、あれか?
昼過ぎくらいには終わるかな?
きっと挨拶に来るよな?
あ、でも荷解きとか時間かかるか。
うーん、どうしようかなぁ。
俺は昨日の夜から悩んでいた。
というのも告白する、と決意したわけなのだがどこで告白をしよう。
となったのだ。
少なくともウチは無い。
家族に見られる可能性が高い(引っ越してくるのを知っているため母さんが家にいる)からだ。
そして同じ理由でここちゃんの家もない。
かといってどこかに出掛けて言うべきだろうか?
出来るならそうしたい、何かデートのようなことをしてから告白するような流れにはしたかった。
のだが、引越しの作業時間とかを考えると、昨日、明日会った時に返事をする、と言ったことでそれは不可能になってしまった。
くっ、昨日の俺は何してるんだよ......
そうなると割かし手詰まりなのだ。
ハァ、まぁ、考えても仕方ないか。
というのも今俺は髪を切りに行っているのだ。
発端は昨日、大地のところに書類を出しに行った時のこと。
『お前、その髪ってオーディションの演技のためだったのか?それとも普段からその髪か?』
『いえ、オーディションのためです』
『なるほど、じゃあ髪切ってこい』
とのこと。
まぁ、芸能人?として生きてくならやっぱり身だしなみを整えないとな。
美容院(ここに行けと大地に言われた)で髪を切ること一時間。
「これで大丈夫ですか?」
「はい!ありがとうございます!」
ふぅ、さっぱりスッキリって感じだな。
やはり今までの髪の長さだと目に髪がかかるので邪魔だったのだ。
まぁ、ピンで止めれば大丈夫ではあったが。
あとは帰って今日の作戦を、と考えていた時だ。
「い、いや俺は忙しいんで」
「えぇー、いいじゃん少しくらいー!」
「それに忙しい割にここでしばらく立ってたじゃん!」
あれは、花澤?
そこには花澤蓮が女子大生?くらいの人達にナンパされていた。
おぅわぁ、モテモテなこって。
ナンパされるなんて素晴らしいじゃないか。
と思ってスルーしようと思ったのだが、とても迷惑そうにその女性たちを見ているので、誠に、誠に遺憾ながら助けてあげるかと思った。
「おっす、花澤!待たせたな!」
「えっ、お前は誰「なになになに!この子もイケメンじゃん!」」
「ねぇねぇ君、君も一緒に遊ぼうよ!」
「そうそう!二人とも一緒にさ!」
花澤と女子大生?の間に入っていくと凄い勢いで俺にも寄ってきた。
うわぁ、めんどくせぇ、何かねぇかなぁ。
じっと見つめて情報を読み取ると面白そうなことが分かった。
「いやぁ、遠慮しときますよ......そちらの女性、こっちの女性の父親と不倫してますし、そんな変な趣味してる人とはちょっと......」
「なっ!」
「えっ......ウチのオヤジと......」
「ちょっ!ちがっ!」
「あんた、その反応マジのやつじゃ......」
「行くぞ、花澤」
「え?え?どいうこと??」
女子大生?二人組が言い争っている間に花澤を連れて脱出する。
三分ほど歩いたところで止まる。
「この辺まで来れば大丈夫だろ」
「た、助かりました、ところであなたは?」
「え、一昨日オーディション一緒だったのにわかんないのか?ってあー、俺髪切ったからわかんないのか」
あんなに食ってかかってきたのに忘れられたのかと思ったが良く考えれば髪を切ったから気づいてないのかと分かった。
「オーディション、髪切った......あぁ!あのヤバい人!」
「ヤバくねぇわ!」
なんで助けたのに俺悪口言われてんの!??
「あぁ、悪口じゃなくて褒め言葉だよ、いやぁ、マジで助かったよ、ありがとう」
「いやいや、問題ない」
「というか髪を切ったらマジでイケメンなんだな」
それはお前には言われたくねぇぞ。
「あぁ、そういえばね、俺、アイドルとして弥生芸能事務所に入ることになったからよろしくね」
「は?」
は?どういう流れでそうなったんだ?
「いやぁ、あの後さ、もしアイドルになってもいいって言うなら連絡してきてくれって言われてさ、今までは俳優をめざしてたけど、そもそも俺のなりたかったのって芸能人なんだよね」
ほほぅ、つまり歌手でもスポーツ選手でも何でも良かったってことか。
あぁ、だから他人を見てないで吸収しない上に色んなところをちらほら手を出してるから本来のポテンシャルを出してなかったのか。
「それで、すぐに連絡しようと思ったんだけど、なんかそれっておかしくない?って一度冷静になってさ周りの人に聞いたんだよね、そしたら元々花澤ってアイドルじゃね?って言われたんだ」
???
つまり、俺らの私たちのアイドル的な?学園アイドル?
「それで、周りからの目はそもそもアイドルだったのかぁ、とか良く考えれば普段の行動は俳優として、とよりアイドル的な立ち回りが多かったような気がして、ならアイドルになった方が良くない?って思ったんだよね」
「つまり、今までの経験を活かせる上に周りの期待に添えると?」
「そういうことだね、それで昨日オーディションを受けてきた」
は?なんで?
連絡したら入れるんじゃないのか?
「ぷっ、不知火って結構顔に出るんだな、オーディションは俺が受けたいって言ったんだよ、正直ズルだろ?周りが努力して受けてる中、だから平等に扱われた上で俺が必要かどうかって判断してもらったんだよ」
......なるほどな、筋は通ってる、芯もある。
こいつ、すげぇ、いいやつだな。
「まぁ、そんなこんなだからこれからもよろしくな」
「あぁ、よろしく、というか年齢っていくつなんだ?」
「今が15今年で16だね」
同級生じゃねぇか、ということは
「もしかして高校も一緒か?」
「?あぁ、年齢が一緒だったのか、多分同じ高校だね、元々俺は芸能科通ってたし」
「へー、そうなのかぁ」
「ということは月曜日に編入してくるのかな?いやぁ、同い歳で友人が編入してくるとは、楽しみだねー」
友人?いつの間にか友達になっていたようだ。
いや、まぁ、嬉しいっちゃ嬉しい、というか普通に嬉しいけども。
「あぁ、じゃあ、まぁ、月曜日からもよろしくな」
「おう!」
そこで俺はもうそろそろ帰らないとか?と思ったのでそう切り出して帰ることにした。
ちゃんと連絡も交換したよ?
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