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山江SAの桜
五分咲きくらいの桜は
控えめで美しい
散るまでの短い時の間でも
若々しく
まだ恋を知る前の乙女のよう
乙女なんて
もう死語かも
恋を知る頃なんて
いまではプライマリースクールの
時期かも
桜の下で
山江の栗のソフトクリームを
食べながら
君のことは
考えない
誰にでも向けられる
魅力的な笑顔も
思い出さない
手をつないで
店の外に出たことも
なんやかんやも
三月の半ばの桜は
清楚で綺麗だ
山間の高速の
サービスエリアでも
空気が透明に見える
ただ
まっすぐに帰るのが
惜しくて
できれば
国道なんかを
ゆっくりと
また仕事で来れることを
まあまあ善しと考えて
県境の空気と
風土が変化する
間際を
車の中から感じながら
できれば君が
新しい友人のひとりになって
再会できるならと
祈りながら
溶けて
手を汚しそうな
ソフトクリームを
一気に片付ける
たぶん次回の出張では
違う店に入るだろう
お店での恋なんて
もどきか
ごっこ
それも女性からの
サービスのひとつなんだろう
などと
卑屈にならずに
冷静を演じる自分