悪役令嬢はメンヘラちゃん。
僕の婚約者は今日も可憐だ。
僕の隣に寄り添い、綺麗な微笑みを浮かべている。
いつものように僕の瞳の色のドレス、僕の髪の色のアクセサリーを見に纏い、軽やかに踊る。
彼女は天使のように愛らしく、美しい。
彼女が毎回つける、綺麗な光沢を放つシルクのロンググローブ。
その下がどんなことになってるかなんて、側からは分からない。
どんなに美しく、優しくても彼女の中身は、
ロンググローブと同じ、ズタズタだ。
「何故こうなった?」
始まりはいつだっただろう。
最初の頃は普通だった。
あどけない笑顔が好きだった。優しくて泣き虫で。
ある日彼女が何日間か高熱を出したんだ。
そして数日後お見舞いに行ったら泣きながら
「私は悪役令嬢。 貴方は私を捨てるのね。」
そういったんだ。そんなことないって君が好きだよって
何回も伝えてもダメだった。
それからだ。彼女がおかしくなったのは。
きっと彼女にはなんらかの地雷がある。
1つでも破ると令嬢なのに傷が増えるんだ。
彼女のロンググローブは清廉なる証なんかじゃない。
あれは僕を縛る魔法なんだ。
そうだね。君は悪役令嬢だ。