5 ナチュラルボーン・プリンセス
・急いで書き上げてしまったのであとで改稿するかも。
大社雪子は存外にポンコツである。
もう一度言うがポンコツである。
顔と頭と家柄が非常に良いため、彼女を知らない人間からはよく完璧美少女と誤解されることも多い。
だがしかし、雪子の場合は正直に言うと顔と頭と家柄が良い「だけ」である。
深窓の令嬢とか高嶺の花などの良い感じの言葉や、教室で独り静かに本を読む姿が絵になるからって騙されてはいけない。
よく注視すれば気付けるはずだ。
彼女が運動と料理が苦手で、機械と流行に疎く、意外と自分に自信が無くて少し人見知りするだけの、ただの寂しんガールであることを。
でも、それはそれとして──
「今日のメニューは」
「メキシコ料理」
「そう正解。ならこれは?」
「ごはん……」
「無洗米では?」
「ありません」
「洗米は?」
「してません」
「そこはしましたって言ってほしかった」
──このポンコツっぷりは中々に、キツイ。
「そもそもこれおかゆ……!」
どこにどう使えと……!
メキシコの主食はトルティーヤ!
「こ、これはね、仕方がなかったの! だからえっと、これは、その、えー……仕方がなかったのよ!」
「言い訳が思いつかないなら素直に非を認めてくれ!」
「……カイが怒ってる」
「いや、喜怒哀楽で言えば今の僕は哀だよ」
「可哀想……」
「キミがな」
「私が可哀想だと必然的にあなたも可哀想になるのよ」
「………」
あ、やばい否定できない。
「自分が可哀想な自覚はあるんだな」
「それはもうありまくりね」
「堂々と言うじゃん……」
なんでこんな子に育っちゃったんだろう。
昔は…………元からこんなだったな……。
「こんなことになるなら完成品を持ってくれば良かった……」
そもそも家となりだから出来立てがどうとか関係ないし。
「私の家で作ることに意味があるのよ」
「なんで……?」
「こう、異性の幼馴染が自分の家でご飯を作ってくれているというシチュエーションには得も言われない快感を覚えずにはいられないみたいな……?」
「まあ、分からんでもないけど……」
ろくろを回すな、ろくろを。
「毎朝私にトルティーヤを焼いてくれてもいいのよ」
「……そこは味噌汁じゃないのか」
「だって私はパン派だもの」
「さようで……」
……なんか、一瞬ドキッとしたけど折角ならそれ系の台詞は言う側になりたかったなと思う。
いや炊事担当は別に吝かではないけど、こう、浪漫的な意味で。
でもたぶん一生涯その台詞を言うことはないんだろうな。僕はまだ死にたくない。
「ところでカイ」
「なんだ」
「お腹が空きました、ご飯はまだかしら」
「な、ナチュラルボーン・プリンセス……ッ!」
「讃えても良いのよ?」
「……ははなーるーだいちーのー」
「大地をではないわ」
知ってる。
「あの」
と、そこで立花さんの声が。
そういえばさっきから会話に参加してなかった。
「ドリアを作りましたので今日はそちらを食べましょう」
見れば炊飯器からはおかゆが消えてオーブンにはお皿が三つ分。
チーズの焼けるいいにおいが漂ってくる。
「焼き上がりはまだですけどね。おかゆからのリメイクなら適当かと」
「そういうのもあるんですか」
「今さっき調べました、こういう時便利です」
若干ドヤりながらスマホを見せてくる立花さん。「おかゆ ドリア」の検索結果がスマホの画面には表示されている。くっくぱっど。
手際が良い。そしてナイスフォロー。さすがのプロ。
「……タコスは?」
「残念ながら材料が足りません」
おかしいな、多めに持って来たはずなんだけどな。
トルティーヤがどこにもいないや。
あんなに一緒だったのに。
「……また今度じゃダメか」
「カイがどうしてもと言うならとっても辛いけれど我慢するのもやぶさかではないわ」
「言っとくけどトルティーヤ全滅させたのキミだからな?」
「トルティーヤには悪かったと思っています」
「僕にも思ってくれ」
「カイ……私をキッチンに入れてはダメよ?」
「今度からそうするよ!!!」
ダメだ、なんかもう疲れた。
もう体力が残ってない。
「あらカイ、スマホを出してどうするの?」
「電話だよ」
「……私に?」
「家だよ! 誰がするかこんな零距離で!」
「なーんだ」
なんだってなんだ。
***
「あ、もしもしリンか? 父さん帰ってきてる? まだか。なら頼みがあるんだけど、冷蔵庫に晩飯入ってるだろ……そうタコス、うん、うん? ……いやピクルスぐらい食えよ。じゃなくて! 父さんの分が三つぐらいあるだろ、あれこっち持ってきてくれないか? うん、そう大社家……うん……父さんの晩飯? 冷凍庫にチャーハン入ってるだろ、そう本格炒め。……良いって良いって、どうせあの人昼に良いもん食ってんだから晩飯三百円ぐらいがちょうど良いんだよ……うん、そう、ありがとう、頼むな」
ピッ。っと。
「今すごく悲しい出来事があった気がするのだけど」
「休日にゴルフ行ってる方が悪い」
「い、いいのかしら……」
「お嬢様、コラテラル・ダメージってやつですよ」
「この人も大概だな」
とまあ、父さんには戦争の結果の必要な犠牲になってもらおう。
「戒道くんも甘いですね」
「立花さんほどじゃないですよ」
「ちなみに具は何ですか?」
「豚肉と牛肉とチョリソーです」
「ふむ、そうなると緑が足りませんね」
「ああ、じゃあサラダでも──」
トルティーヤは全滅したが、買って来た野菜はまだまだ生存している。
適当に切って生でも、茹でて温野菜にしても──
「「………………」」
「あ、あのね、今日は足を引っ張てしまったから二人のために私にもサラダぐらい作れるかなって……思いました……」
ましたかー。
・雪子さんが意地悪するのは戒道くんだけだよ。愛だよ。でもやり過ぎたら反省するよ。
・あとネタが尽きたよ。
・ストーリーとかないからお題とかくれても良いよ。




