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070 体育祭⑤

 

「お兄ちゃん?」

「ああ、ちょっと行くところがあるんでな。月夜のこと頼む」

「え、ああ」


 星矢はそのまま月夜の体を僕に渡そうとする。月夜はびっくりして抗い始めた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」

「こんな所で暴れたら危ないよ!?」

「だって、私……またお姫様だっこだなんて」


 といっても慣れない靴で合計600m近く走った月夜の足はかなり痛んでいるだろう。僕は平気なので星矢から月夜を受け取った。


「うぅ……恥ずかしい」

「でも今の月夜はお姫様っぽいからお姫様だっこはありなんじゃ」

「た、太陽さんじゃなきゃいいんです! それに今、私重たいし」

「軽いよ」

「……汗かいてくさいし」

「いいにおいだよ!」

「っ! もう!?」


 月夜は真っ赤になって、僕の胸に体を埋める。くそ、この鎧みたい服、厚いから感触が分からない。

 しかし、月夜とこうやって密着となるとやはり照れてくるなぁ。

 星矢はどこへ行ったのだろう。あ、僕達のグループである赤組へと走っていく。そしてそのまま赤組団長、北条火澄さんを持ち上げる。


「え、神凪!?」

「暴れるな、落ちるぞ」


 お姫様だっこするように持ち上げた。北条さんは170センチ、星矢は180センチ。この2人の背丈だと見栄えすんごくいいな。

 でも火澄さんが物凄い赤い顔しててかわいいな。あーいうのに慣れてなさそう。いや、彼女の場合は普段持ち上げる方かもしれないね。


「赤組! 団長に優勝を捧げるぞ!」

「おおーーーーーーーーっ!」


 赤組盛り上がってるなぁ。あの場にいて、僕もおーって言いたかった。

 僕は月夜をお姫様だっこしたままトラックを歩く。


「お兄ちゃんがあんなことするなんて」

「朝と大違いだね。応援団に今回のリレー、星矢のやる気の導線に火がついたのかも」

「お兄ちゃんは変わったなぁ。みんなのおかげなのかな……でも私は」

「月夜も変わったよ。僕にはそう見える」


 月夜はじっと僕を見つめた。顔面を覆う帽子をかぶってるので完全に目が合うことはないんだけど、不思議と目が合っているような気がする。

 すると月夜はいきなり僕の体に抱き着いてきた。くっそ、この服じゃ感触が分からん。首に手をまわして捕まる。


「つ、月夜さん?」

「ふふ、お姫様抱っこはこうすると負担が減るんですよ」


 ドキドキしてかえって疲れそうなんですが……。ここまで密着は何だかいけない気がする。

 月夜の体を感じてみたかった。

 もう少し視界がよければなと思わずにはいられない。


 このまま僕達は外周を手を振りながら1周することになる。それを終えた後、他の部活動対抗リレーが始まるので僕達5人は着替えるために校舎の中の控室へ入った。


「みんな着替える前に写真だけ撮ろう」


 男子、女子更衣室へ分かれる前に5人を集める。


 王子の恰好の星矢に姫の恰好の月夜、女騎士の世良さんに魔法使いの瓜原さん。

 僕を含む5人を是非とも写真に残しておきたい。


「それはいいんだが……」


 星矢は当然のように声をかける。うん、それは僕も分かってる。


「月夜はいつまで抱き着いているんだ」


 月夜さんが離れてくれません。引きずるわけにもいかないためここまで持ってきたが……そろそろ僕の腕は限界です。

 どうしたら離れてくれるんだろうか。


「やだ、もうちょっとこのままで」


 甘えるようにふりふりと抱きしめてくるので僕としてはとても嬉しいのだけど、やっぱり腕が限界なんだよなぁ。

 対応策を考えていると瓜原さんが声を上げる。


「月夜、山田先輩はその服を脱がないと覆面を脱げないから顔が見えないよ」

「太陽さん降ろしてください」


 はやっ!

 月夜を降ろして無事解放。手が痛い……。

 控室に置いてあったカメラのタイマー機能を使い、5人の集合写真、それぞれの写真を撮りおさめていく。

 みんないい写真だけど、やっぱり月夜の姫の写真は別格だな。絶対秘密のフォルダに是非とも残しておかなければ。

 撮った写真を眺めていると月夜が僕の服を引っ張る。


「どうしたの?」

「私は兜がない方がいいと思います」


 兜なしの闇の騎士が見たいってことかな。まぁ、それでもいいか。

 星矢に手伝ってもらって、全身服を脱いで、覆面を外し。再び全身服を着てこの控え室に戻ってきた。


「兜ってか覆面を外してきたよ」

「きゃっ!」


 月夜が目が輝かせて僕の側に駆け寄る。


「やっぱり太陽さんは顔を隠さない方がいいです! そっちの方がカッコイイです!」


 月夜はまるで星矢に見惚れる女性陣のように両手を組んで、僕の周囲をまわって、じろじろ僕の顔を見ていく。

 正直恥ずかしいんだけど、月夜の恍惚とした表情がまた目新しくて僕は僕で月夜に見惚れていた。


 ふと他のメンバーの視線に気づく。星矢も世良さんも瓜原さんもしらーとした顔をしていた。

 まぁ……そうだよね。僕の顔だったら顔を隠していた方が映えるよね。


「うーん、でもやっぱり顔を隠してた方がいいかな」

「もう、海ちゃん! この良さが分からないなんて」

「私も……そう思うよ!」

「木乃莉まで!? 私は悲しい」

「正直どうでもいいな」

「私はお兄ちゃんの方がどうでもいい」


 思わぬカウンターパンチに星矢の膝が崩れる。しかしこうなってくると……。


「月夜ってもしかして男の趣味悪い?」

「なんで太陽さんがそれを言うんですか!!」


 自分で言うのも何だけど……顔がいいわけじゃないからねぇ。

 こんなやり取りをしつつ、今年の体育祭は僕達赤組の逆転優勝で盛り上がったまま終わったのでした。

 このリレーは僕にとって一生の思い出になりそうだな。


 さて、2大行事が終わり……季節はまもなく冬へと近づくのです。


話を読んで頂きありがとうございます。


この作品を少しでも面白いと感じて下さった方、作者のモチベーションに影響しますので、

是非ブクマ、評価、感想等を頂けると嬉しいです。


評価は最新話の方の一番下にございます。宜しければ!

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朝宮美月と結婚したい! ~12年間会話0だった幼馴染が実はポンコツだったので褒めて伸ばしたらいつの間にか甘やかされていた件~


新作投稿始めました! 現代恋愛カテゴリーで毎日更新の長編となります。
本作と同じ男女両片想いモノになります!

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