051 月夜とハイキング①
「太陽さん何か元気ないですね」
「そ、そんなことはないよ。ごめん、せっかく遊びに来たのに」
「遊びじゃないです。これはデートです!」
練習デート企画第2回。
まさかこんな気持ちでデートをすることになるなんて……。昨日の靴下大好きヤロウに言われたことが尾を引くとは……。
月夜は僕のことが好きであって恋ではない
月夜が好きな相手が僕ではないと吹っ切ったはずだったのにな。
元々この日曜日にやる予定で計画を立てていたので昨日の天と瓜原さんの件は予定外なのだ。
「体調悪いんですか?」
「大丈夫だ!」
気持ちを振り切ろう。今すぐこの関係がどうにかなるわけじゃない。
悩むのはやめだ!
そういうわけで僕と月夜は少し遠出をしている。
9月も下旬となり、若干気温も落ち着いてきた。この前は月夜の服装のおかげでいい写真が撮れた…‥違う。
服装のおかげで運動関係の遊びがまったくできなかっため今回は山へハイキングに行くことになったのだ。
運動関係の遊びとなるとボーリングなどでもよかったのだが街中デートだと同級生に見つかる可能性があったのでこの吟画山に来ている。
月夜は大きな帽子は被っているが帽子からはみ出る栗色の髪は相変わらず綺麗で輝いている。
Tシャツの下にはウェアを来ており、ボトムスに淡い色のキュロットを着ている。黒のタイツのおかげで白い肌がまったく見えないのが残念だがこれから秋や冬になってくるから仕方ない。
つまりザ・山ガールである。
「揃えるの大変だったんじゃないの?」
「水里ちゃんから借りました。体型が似ているんで着ても大丈夫かなって」
なるほど、だから服が一部ぶかぶかなわけだな。胸部だけはきつそうなのに。
このネタは対水里さん用に残しておこう。
吟画山は標高も高くなく、2時間ほどで山頂までいけるのでハイキングコースとしては有名な山だ。
近くにもう少し低い山があり、人はそっちに集中するため意外にこのハイキングコースは人が少なく穴場なのだ。
さっそく登山のスタートだ。
「天気よし、人も少ないし、空気もおいしい!」
始まりの登山道、月夜は大げさに手振り身振りをしてその興奮を僕に伝える。
「月夜はテンション高いね」
「そりゃそうですよ。今日は本当に楽しみにしてました。太陽さんが誘ってくれたデートですから」
「そ、そうだね……」
そういえばそうだった。自分が誘ったという事実に少し照れてしまう。
女の子を誘うことがこれだけ大変だと思ってもみなかった。
慣れてきた月夜ですら誘うのに一呼吸がいるんだ。
「昨日の最後、ちょっと変な感じだったじゃないですか。もしかしたら昔を思い出してドタキャンされるのかなって不安になりました」
「そんな黒歴史みたいに言わなくても……。でも心配かけてごめんね」
「でもちゃんと来てくれたので嬉しいです」
月夜は明るく振る舞ってくれる。本当にいい子だなと思う。正直迷わなかったといえばウソになる。
でも……この明るい月夜と一緒にいたいと思ってしまった。笑顔を曇らせたくないそう思ってしまったんだ。
2時間ほど歩き続けると頂上付近まで到着だ。ちょうど展望できる場所に出てくる。かなり広いスペースで食事をしている人達がちらほら見える。
時間もちょうどいい頃だ。
「いい景色!」
月夜は手すりに手をあて、自然豊かな光景に感嘆の声を上げている。
いい絵だ。これは是非とも撮っておきたい。僕はカバンからカメラを取り出し、その綺麗な姿をファインダーで捉えて、シャッターを切った。
「あ、また盗撮した」
「失礼だな。たまたま景色を撮ろうとしたそこに月夜が入っていただけだよ」
「盗撮犯はみんなそう言う」
「言わないよ!」
今度は普通にポーズを取ってもらい何枚か撮らせてもらった。僕の月夜フォルダがどんどん充実していく。
「昔は恥ずかしがりながら撮ってたのに……今は堂々と撮りますよね」
女の子を撮ることに抵抗がなくなったおかげかな。コスプレイヤーを撮る人の気持ちが分かってきた感じだ。
「でも!」
月夜は僕の方に近づいてくる。
「私以外を撮っちゃだめですから」
くりくりの二重の瞳にじっと見つめられ、僕は頷くしかなかった。月夜は満足したようでまた景色を見にいく。
元より他の人なんて撮る気はないけど……別の意味で月夜の魅力に取り込まれそうだ。
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