winter night
今日はカップル達が仲良さげに過ごす日…
クリスマス…
僕はそんな日にソシャゲの嫁《2次元》と過ごしていた
「ああ…可愛いなぁ…5万円でクリスマスコスの嫁が引けてよかったよ…」
そう呟いている時に家のインターホンがなった
「彼女ができなくてクリスマスを1人で過ごす哀れな 哀れな男の子はいるのかしら?」
僕は胸を抑えながら応答する
「僕は!一人で過ごすのではなくて嫁と過ごしてます
から!クリスマスイベント回ってますから!」
インターホン越しに弁明をする僕
インターホン越しに早く入れろという目をする女
僕はドアの鍵を開けた途端、女は入ってきた
「あらあら、本当にひとりじゃない…可愛そうね」
口がかなり悪いこの女性は僕のひとつ上の先輩
田村菜峰先輩だ
あと、ついでに僕のことを紹介しておこう
僕の名前は増井奏太だ
趣味、嫁と会話 というどこにでもいるオタクだ
「いつ来ても思うのだけど…フィギュアの箱を重ねて置くよりも引き出しとかに直したらどうなのよ…」
僕のフィギュアの箱を指さして
勝ち誇ったかのように言われたので反論することにした…いや、反論せざる負えなかった
「僕は箱を直すための引き出しを買おうとは思うんですけど…アニメグッズの方ばかりいつの間にか買っていて…すると…はは…」
苦笑いをして誤魔化した
田村先輩が途中から聞いていなかったからだ
「可哀想にね…」
「いやいや!ほとんど聞いてなかったでしょ!」
口論の末…
僕はあることに気がついた
「田村先輩はどうして部屋の中なのにずっとコートを着ているのですか?」
ため息を漏らされ追撃をせんとばかりに、口を開く
「聞くのが遅いわね…オタク部屋に女子がいるだけでおかしいのに更にコートを着ているのを今!今気づくなんて…彼女ができない訳よ…ホント…」
「すいません…ホントすいません…
僕の部屋に来る女性って田村先輩か親しか来ないものでして…はい…」
「来てもすぐに帰ると思うわよ」
「僕もそんな気がします…」
急に話を戻したのは田村先輩だった
「で、コートを着ている理由は…中にサンタコスを着
てきているからよ」
コートを脱ぐとそこには少し露出度が高いサンタの服装をした田村先輩がいた
「ねえ…増井くん…2次元《嫁》と三次元《私》
どちらが可愛いかしら?」
「2次元《嫁》ですかね」
一切の迷いもなく僕は先輩に答えた
「2次元《嫁》はクリスマスプレゼントをくれますし
可愛いし…」
「私では…貴方の2次元《嫁》には勝てないのね…
せっかくクリスマスプレゼントとケーキを持って
きたのに…残念ね…」
「僕にクリスマスプレゼントですか?」
「ええ…貴方のために買ってきたこの組立式棚を買っ
てきたのよ…それとケーキも」
「うぉぉおお!コレは…かなり入る!ありがとうございます…先輩!」
「私も喜んでもらえて何より」
先輩は嬉しそうにして袋からケーキを取り出す
「増井くん…ほら、あなたにもコスプレのものを買ってきたから私がケーキを切っている間に着替えておいて貰える?」
僕はかなりワクワクしながら袋の中身を見た
コミケの時は先輩とサークルメンバーでコスプレをして本を売っていたのでかなりワクワクした…
「えっ…サンタじゃなくてトナカイ?」
「そうよ、私がサンタなら貴方はトナカイでしょ
ほら、サンタが乗るのはトナカイじゃない」
「サンタが乗っているのはソリであってトナカイはそ
りを引っ張ってるだけですよ!」
ひとりのトナカイとしてひとりのサンタに反論するトナカイは僕だけであろうと思った
「ま、早く着替えてちょうだい」
「わかりましたよ…」
しぶしぶ僕は隣の部屋で着替える時に先輩が「ここで着替えてもいいのよ?」という小言はあえて無視した
「着替えてきましたよ…似合ってますか?」
「ええ…最高ね、早速そりを引っ張ってもらおうかし
らね」
「冗談ですよね?ね?」
「冗談よ」
全くこの人は…
「あ…クリスマスプレゼントはこの前欲しいって言っていた僕のこのフィギュアあげます」
先輩はそれじゃないという様な感じで僕に近づく
「クリスマスプレゼントはフィギュアじゃなくて…」
──柔らかいものが僕の頬に触れた
どこか優しくて包まれるような…そんな感触だった…
僕は混乱していた
「え…せ…先輩!?え…」
「私が欲しいのはフィギュアでもお金でもないわ…
私が欲しいのは貴方よ増井奏太くん」
とびっきりの笑顔で僕らはまた…