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エピローグ ただ月ばかり満ちる



 雲が月を隠し、部屋が闇に包まれた。その一瞬で、黒い狼は血を浴びた男に姿を変えた。

 ウィルは、メアリーを縛る縄をほどいてやった。

 メアリーは、恐怖か驚きか、それとも安堵か、口を開いたり閉じたりしていた。ショックで声が出ないのだ。

 ウィルは、コルがどこからか持ってきたぼろ布をメアリーに掛けてやった。外から持ってきたのか、少し汚いが何も無いよりはマシだろう。自分のコートは、メアリーに掛けてやるには血なまぐさすぎた。

 男の死体を抱え上げる。家の前にでも出しておこう。そうしたら遅くても朝にはだれか気が付くだろうし、ここに置いたままでは、メアリーがかわいそうだ。

 ウィルはこのまま、この町を出る。不審に思われる可能性もあるが、獣の噛み跡が残っているので、誰も人間の仕業とは思うまい。メアリーが何も言わなければ、だが。

 ウィルはメアリーに背を向けた。

「何も言わなくていいのか」

 メアリーに聞こえないくらいの声で、コルが囁いた。

 ウィルが振り向くと、メアリージェンヌが彼を見上げていた。その目から何をくみ取ればいいのか、やはりウィルには分からなかった。人を(あや)めて、どこか、心が摩耗したのかもしれなかった。

「メアリー、」

 ウィルは言いかけたが、それ以上何も言わなかった。

 メアリーの名を呼びっぱなしのまま、そしてメアリーの視線を感じながら、ウィルは再びメアリーに背を向けた。

 男を担いで地下室を後にする。

 あの忌まわしい闇から、月光満ちる外の世界へ。

 ウィルを次の町へと導くかのように、コルが前を飛んでいる。

 今、彼女はどんな気持ちなのだろう。

 





ご愛読ありがとうございました。


また、いつかどこかで彼らに会いましょう。

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