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魔法使いが魔王になった理由(わけ)  作者: 風花刹那
1章 魔法使いの誕生
9/13

誕生日

『光よ!我が意のままに敵を照らせ!閃光(フラッシュ)!』


両手を大きく振りランディールは目の前の少女に向けて魔法を行使する……が、


『ダメです、ランディ。ちっとも明るくなりません』


当のソーニャは特に変わった様子もなくランディールに向けて言い放つ。


『光魔法だけ……何でだろう』


ボヤくのはランディール。特殊属性魔法の一つ、光魔法を今習得しようとしているのだ。


『イメージはしっかり出来ていますか?相手の顔に光をぶつける。それだけですよ』


『わかってるさ。けど上手くいかないんだよ』


自分の両手を見つめランディールは教わった事を思い出す。


(特殊属性魔法はどんな魔法よりもイメージが必要。向き不向きが一番顕著に表れる魔法。闇は上手くいったのに……)


『向いてないのではないですか?』


ソーニャの問に微かに首を横に振る。


『もう少しなんだよ……。もう少しで何か掴める気がするんだ』


以前闇魔法を習得した時と同じ。あともう少しで手が届きそうな……そんな感覚が。


『何故ここまで拘るのですか?他の魔法をより訓練すればいいでしょうに』


長老に教わった魔法は光魔法を除けば全て初級はマスターした。属性魔法については火、風が既に上級。残りの水、木、土も中級はマスターしてあるのだ。確かに光魔法一つにここまで拘る必要も無い。でも――。


『やってみたいんだ』


ランディールの言葉にソーニャが少し顔を上げる。


『一つでも多くの魔法を身につけたい。一つでも多く究めたい』


飽くなき知識欲。それの為にランディールはやめることが出来ない。さしずめ魔法の魅力に取り憑かれたといったとこだろう。


(まだ八歳だと言うのに……)


ソーニャはため息をつく。

聞けばランディールはここでの魔法の修行とは別に家で魔術の修行もしているという。誕生日プレゼントだった杖を使って水を出現させて両親を驚かせ、魔術の訓練を始めさせてもらったと。魔力をそのまま自然界へ働かせるのが魔法で、魔力を魔導具や魔法陣などを通して働かせるのが魔術。普段から魔法を使っているランディールには水を出すことなんぞ容易いことだったのだろう。

魔法に魔術。どこまでやれば気が済むのだろうか。


『魔術では光魔法の様なものは使えないのですか?』


ふと思いついてランディールに聞いてみる。魔術の訓練をしているのならそこに何らかの糸口があるのではないか。

しかしランディールはその質問に首を横に振って答える。


『光の魔術は神様から認めてもらった人しか使えないんだって』


その可能性をランディールも考えなかった訳では無い。しかし、光の魔術は聖職者でも教皇レベルの者でないと使えないのだ。


『おーい!ランディ!』


急に一人の少年が声を上げて走ってくる。


『ソーマ!どうしたの?』


『今日はもう帰りなさいっておじいちゃんが』


どうやら長老から言伝を受け取ったようだ。


『お前、今日誕生日だろ?早く帰れって。はいこれ』


そういって差し出してきたものは赤い綺麗な宝石が嵌めてある指輪。


『これは?』


『俺たちこの村の衆から、プレゼントだ。この石はルビライトっていって魔力の回復を速めたり、火属性魔法をブーストしたり色々効果がある。オマケに大きくなっても嵌めれるように輪の部分にも細工がしてあるのさ』


『え?こんなの貰っていいの!?』


話に聞くだけでも物凄い効果だ。こんなのどこかのお城の宝物庫にあってもおかしくないんじゃないか?


『いいんだよ。九歳だしな。二分の一成人のお祝いだ』


十八歳で大人と認められるこの国ではその二分の一の九歳も盛大に祝う。


『そう……。ありがとう!』


『いいってことよ!それにお礼はその石をとってきた姉ちゃんにするべきだな』


思わずソーニャの顔を見る。


『お礼を言われるほどのことではありません。友達ですから』


そういってそっぽを向くソーニャの頬が少し赤いのは夕日のせいだろうか。


『うん。でもありがとう』


ランディールはまた明日と二人に声をかけ家への道を走り出した。






家に帰ると既に夕食の支度が済んでいた。フレイメル家はそんなにたいした貴族ではない。屋敷の規模も小さいし、使用人も三人ほどしか雇ってない。だからあまり大規模な誕生日会は開かれないと思っていたのだが……。


「お父様、これはやりすぎなのでは?」


普段偉い人が来たときにしか使わない広い客間にテーブルを置き、料理がところ狭しと並んでいる。


「あー、これはお母様の発案だ」


私は関係ないと言わんばかりの口調でランディールの母、ナタリーのせいにしようとするカークランドだがその口元は少しにやけている。


「アナタ。子供の前で嘘はよくなくてよ」


後ろから御本人様登場でカークランドは笑いを爆発させた。


「でもまぁ私も張り切ったのは間違いじゃありません。久しぶりに料理を作りましたよ。お誕生日おめでとう、ランディ」


「ありがとうございます、お母様!」


ランディールを囲って誕生日会が始まった。

宣言通りに終わらなかった……。

次回更新は来週の日曜日です。第一章を終わらせます!

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