表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いが魔王になった理由(わけ)  作者: 風花刹那
1章 魔法使いの誕生
8/13

とあるエルフの少女

私がランディに会ったのは森の中だった。

襲いかかってきたダークウルフに初級魔法の炎球(ファイヤーボール)をぶつけて追い払った後に草陰から出てきて私の傷を回復させた。最初、恐怖の表情を顔に浮かべていたのに。回復させたら私が襲いかかるかもしれないのに。その髪と同じ茶色の瞳の中には迷いが一切なかった。


私たち魔族が人間にどう思われているのかは勿論知っている。十歳になって村から外へ出る権利を得た時にソームお爺様に教えこまれたから。人間に会ったら捕えられて殺されてしまう。お爺様に教えられ私自身そう思い続けてきた人間への印象は少しではあるが良いものへと変わった。だから心に余裕を持てた。あのままだったら助けてくれた彼を攻撃してしまっていたことだろう。


――困った時はお互い様って母上が……。


人間には話せないはずの魔族語を使ってたどたどしく喋る彼を見ると警戒心が薄れていくのが自分でもわかった。ソーマはそうではなかったようだけど。


彼が魔法を使えるようになりたいと言った時、正直かなり困ってしまった。私が師匠であるお爺様に教わったことでは人間は魔法を使えない。例え教えたとしても上手く発動することは出来ないとされていたからだ。でも彼の願いを叶えなければ掟に反することになってしまう。

その時お爺様が現れて魔法を教える事を決めた。正直なぜお爺様がそんな事をするのか全く理解出来なかった。人間が魔法を使うことが出来ないと私に教えたお爺様がなぜそんな事をするかと。でも、そう思う一方でこうも思った。


――魔族語が話せる彼ならあるいは、と。


そしてその考えは程なく正しかったと証明された。彼はただの一度で作り出したのだ。中級の魔法使いがやっと作り出せる魔力塊を。


その眩い光を見た時、私は感じた。


――なんて力強く、美しい魔力なのだろうと


魔法に関して言えば私は周りから天才だ、神童だ、なんて言われるくらい才能があった。その大きすぎる力が故にソームお爺様の元で修行することになった。私の魔力塊もそれなりに大きく、エルフの魔力特有の緑色の光を放つ。でも彼のそれはまさに圧倒的だった。

光が消えたあとソーマも私も一言も発することができなかったのも無理はないことだった。





その後彼が魔力回復薬を飲んで倒れてしまうハプニングがあったものの修行はそのまま行われた。属性魔法、つまり火、水、土、木、風を操る魔法に始まり、光と闇の特殊属性魔法、空間魔法や付与魔法などの特異魔法(ユニークマジック)などを彼は日をかけて学んでいった。私も一緒に学んだけれど、彼の飲み込みの速さには到底敵わない。魔法は想像力。私は彼にその部分で勝てないのだろう。

彼が村に来て二年目にさしかかる頃私は完全に彼に並ばれ、そして四年目には抜かれていた。まだ八歳の子供に抜かれてしまったのだ。その時は流石に落ち込んでしまった。そこから私を引き上げてくれたのも彼だった。


「ソーニャのお陰で僕はここまでできるようになったんだ。だからこれからは僕がソーニャを助けるよ」


だからか。

彼の言葉を聞いて納得した。

彼の魔力があれほど白く輝いていたのか、と。

同時に思った。


負けたくない。


より一層私の力を研いて、いつかまた追い越そうと。


因みにソーマは最初からその気だったそうだ。あの魔力を見たソーマは本能で勝てないと悟った(本人談)らしい。あれほど彼に突っかかっていたソーマが初日の修行の後に態度を手のひらを返したように変えたのは彼を見直したからだろう。それを聞いて、なんで私はあれほどまで落ち込んでしまったのだろう……とまた少し凹んでしまったのは私の秘密だ。


ランディはソームお爺様から"封魔の呪い"という魔法の使用ができなくなる呪いを村を出る時にかけられたのでこの村以外では魔法は使えない。

だから私は彼が帰った後、彼に追いつくために今日も一人、魔法の修行をするのだ。


次回で第一章は完の予定です。今回出てきたそれぞれの魔法については後々説明を入れていきます。

次回更新は来週の日曜日です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ