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魔法使いが魔王になった理由(わけ)  作者: 風花刹那
1章 魔法使いの誕生
6/13

魔法

先週は投稿できず申し訳ありませんでした!

『ここじゃ』


長老が商店街から少し離れた一軒家の前で立ち止まる。その家は所謂、丸太小屋というもので、周りに他の家がないせいかこじんまりとして見えた。


『ここは?』


『お爺様の家よ』


ランディールの疑問にソーニャが答える。実は商店街の方にも家を持っているということなのだが、専ら長老として執務をこなしたりするのに使うだけで、普通に生活したり、ソーニャに魔法を教えたりするのには元々住んでいたこの家を使っているらしい。


『ここは特殊な結界が張られておっての。魔法の指南にはうってつけの場所なのじゃ』


長老がドアを開けて中に入る。

そこには、外観からは想像ができないほど広い空間が広がっていた。家というよりは道場と言うべき場所で、血や汗が染み付いたような黒ずんだ床に窓から入る光が反射している。

部屋の一番奥には大きな本棚があり、これでもかと言わんばかりの本がぎっしりと詰まっている。恐らくニオネム村の図書館より沢山の本があるんじゃないだろうか?




『さて、ではまずそこに座りなさい』


長老からの指示でソーニャとソーマは正座で座る。ランディールも慌てて真似をして座った。長老の声は先程までの優しいものだがその周りの空気は打って変わって厳しいものになったいた。


『早速、ランディールには魔法を教える。じゃが魔法を使うためにはまず、魔法とは何かを知らねばならない。ソーニャ。魔法とは何じゃ?』


『想像力です』


『その通り。魔法は体中にある魔力を想像力によって形にする。例えば――』


長老は指を鳴らしてランディールの目の前に大きな炎を出現させる。


『わ!』


ランディールは驚いて仰け反る。そんなランディールに手で触ってみろと促す。

恐る恐る炎に手を伸ばす。だが炎の燃え盛る音とは裏腹に、全く熱を感じない。


『熱く、ない?』


『そう。想像力で熱くない炎を生み出した。これが魔法というものじゃ』


ランディールの胸が高鳴る。想像力と魔力でこんな不可思議なものが出せるなんて。


『じゃが想像力だけではだめじゃ。それをコントロールする術を身につけなければ魔力が暴走し、最後は死ぬ。周りに多大な被害を残してな』


『暴走……』


ランディールの呟きに長老は頷く。


『昔の事じゃが、ある魔族が魔力暴走をおこしてな……。その時は大陸一つが海に沈んだ』


それを聞いてランディールは戦慄する。大陸一つを沈めるほどの力。


『最近ではあまり見ない出来事じゃがな。それとじゃ。いくら魔法が想像力だと言っても使える魔法と使えない魔法がある。こればかりは才能じゃな。後は……詠唱魔法と無詠唱魔法があるがこれはあとでいいじゃろう』


一通り説明し終わったのか長老はランディールを見て、質問は?と聞いた。ランディールは首を横に振る。


『よろしい。では片手を出しなさい』


横をみるとソーニャもソーマも掌を上にむけて出していた。ランディールもそれにならう。


『目を閉じて、体の中にある魔力の流れを感じるのじゃ』


静かな長老の声が部屋にやけに響く。そう感じるくらい部屋にはピリピリとした緊張感が漂っていた。

ランディールは目を閉じる。すると何か、体の中の何か大きなうねりを感じる。何かがたぎって体の中を動き回る感覚。体の隅々まで何かが行き渡っているような感覚。これが魔力なのだろうか。


『魔力を感じたら、それを掌の上に集めるように流すのじゃ』


その言葉通り、ランディールは体の中に動く魔力を掌に流すようにコントロールする。イメージは、脇道へ入りこまないように掌へ続く一本道を作るような――


『……素晴らしいのう』


長老の言葉に思わず目を開ける。すると、目の前には球体が部屋中を照らす光を放っていた。そしてその球体はランディールの手の上にあった。


『これが魔力じゃ』


体に漲るエネルギーの塊。眩い光を放つそれにランディールは心奪われる。集中が切れたからだろうか球体はふっと掻き消え、ランディールの手に吸い込まれる。途端にとてつもない疲労感がランディールを襲った。


『ハァ、ハァ……』


あまりの疲労に正座を崩して地面に手をついて、肩で息をする。そんなランディールに長老がビンを渡した。


『回復薬じゃ。ここで疲れられてもまだまだ困るからのう』


中に入っている液体の色は紅。いかにも薬という感じの苦そうな匂いがする。正直飲みたくはないけど、魔法を習得するためなら……。意を決してビンの蓋を取り一気に飲み干す。


ドクン!


体の奥で何かが胎動するような感覚がする。と同時に体中の血液に力がみなぎるような感覚。まるで何かが体を突き破って出てくるような、そんな痛みが全身を駆け巡る。


『ああ、あ、ああああ、あぁぁぁ、あああああああぁ!』


体中の血が沸騰するような熱を感じる。更にとてつもない頭痛がランディールを襲った。


『なんじゃ!?』


『ランディール!』


二人の叫びを聞いたのを最後にランディールの意識は暗い闇へと沈んでいった。


次回更新は来週の日曜日、20:00の予定です。

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