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魔法使いが魔王になった理由(わけ)  作者: 風花刹那
1章 魔法使いの誕生
4/13

お礼

宣言したのに……。更新遅くなって申し訳ございません。

数日が過ぎた。

ランディールは森に近づくこともしなかった。巷で忌み嫌われている魔族への恐怖。でも不思議にも思った。何故見逃してくれたのか。確か攻撃するのは掟に反するとかって……。それとお礼はまたって……。それを考えると彼らが手放しで恐ろしいとは思えなかった。

ただ一つ、ソーニャが使った魔法。それが彼の中に残っていた。




「ランディ。森に薬草を採りに行ってくれないかしら」


ある日、ナタリーがランディールに声をかけた。日頃から森に行っているランディールはナタリーよりも森の中のことを知っているのだ。


「……うん、わかった」


怖い。けど知りたい。

彼らを。

少し考えた後ランディールは頷いた。



「……悪い人たちじゃないとは思うんだけど」


ランディールは薬草を探しながら独りごちる。

たまに来る冒険者や村のお年寄りたちは魔族を危険な種族だと言う。戦争のせいで大勢の人たちを殺したと。

確かにこの前見た魔法。あれが人に向けられたら……。父上や母上ならなんとかなるだろう。実際に魔術の練習をしているところを何度も見たけど本当にすごい。手を前に出して呪文を唱えると土の壁がにゅっと出たり、水がぷしゅって出たり。だけど村のみんなは……。

でも、あの人たちなら大丈夫なんじゃないか?根拠のない、ただ楽観的感覚。ランディールには彼らが悪だとは思えなかった。


「とりあえずこの前の場所に行ってみるか」


頭で考えていても仕方ない。自分でもう一度見てからだ。

ランディールは歩を進めた。



そして薬草を取り終えたランディールはこの前彼らに出会った場所まで来た。


「いない……か」


周りを見渡したがソーニャたちの姿はない。


「まぁ当然か……」


大人は人間と魔族の間ではずっと戦争をしていると言った。なら人間が魔族を恐れるように魔族もまた人間を恐れるのもあながち間違ってはないだろう。とすると人間であるランディールに場所を知られたのだ。言うなという口約束だけでは心配でここに近寄らなくなったことは十分考えられることだ。

ちょっと寂しい気もするが――


『こんにちは。ランディール』


突然、あの言語で背後から話しかけられる。


「うわっ!」


ランディールはビックリして地面に倒れ込んでしまった。目の前にはこの前の魔族の少女、ソーニャがいた。


『あ、驚かせてしまってすみません』


ランディールのリアクションにソーニャも驚いたようで律義に頭を下げる。金色の長い髪が太陽光で反射してキラキラと光っている。


『い、いえ気にしないで下さい』


どうすればいいか分からなくてとりあえず立ち上がって頭を下げた。


『これだからソーニャは……』


ソーニャの背後から刈り上げている同じ金髪の魔族の少年、ソーマが現れた。


『こ、こんにちは』


挨拶を無視してソーマはランディールの周りをゆっくり歩き回っている。その耳は何かを警戒しているようにピクピクと動いていた。


『先日は助けていただきありがとうございました』


ソーニャに視線を戻すとまた頭を下げているのが目に入った。


『あ、いえ、その、困った時はお互い様って母上が……』


頭を掻きながら応えるランディールにソーマが口を開けた。


『一人で来るとは感心だな……。誰にも言ってねーよな?』


『は、はい』


『ソーマ!』


咎めるような口調のソーニャに悪びれもなく、


『そいつは人間だ。いくら長老が礼を重んじてもそいつらがそうだとは限らない……。そうだろ?』


『だとしても言い方というものが――』


『うるっせーな!』


不貞腐れたようにそっぽを向くソーマ。ランディールは会話についていけずに目を回していた。


『ごめんなさい。弟が失礼なことを』


再び頭を下げようとするソーニャを慌ててランディールは止めた。


『や、やめてください。大丈夫ですから』


これ以上女の子に頭を下げさせるのは良くないような気がした。人として。


『えっと、それで何の用でしょう?』


『あ、はい。えっとですね――』


要約すると彼女たちの村には掟というものがあるらしい。その掟は厳格なもので破ったものは村から追放される。ソーニャたちの種族エルフは自然と暮らす種族で、常に自然に対する感謝を重んじる。それと同様、手を差し伸べてくれる他者への感謝も重んじるのだそうだ。


『つまり、私には掟に従ってあなたに対する感謝の念を示さねばならないのです』


それが目に見えるお礼と言うことらしい。


『何か欲しい物や、して欲しいことはありませんか?』


欲しい物……。して欲しいこと……。ランディールは考える。


『魔法……』


考えた末の結論。


『僕……、魔法を使えるようになりたい』


ソーニャの放った炎が鮮明に思い出される。あんなふうに魔法を使ってみたい。


『魔法、ですか……。いや、ですがそれは……』


ソーニャは困ったような表情をしてソーマの顔を見る。ソーマも同じような表情でソーニャを見返していた。


『駄目……ですか?』


『いえ、ですが魔法は確か人間には――』


『良いではないか』


突然茂みの中から髭を生やしたエルフがでて来た。豪華そうなローブを身に纏い手には長い杖を持っている。


『おじ――、い、いえ長老!』


ソーニャが慌てたようにその場で跪いた。ソーマもそれに続く。

これがソーニャたちが言う長老。村の一番偉い人か……。ランディールはその圧倒的な雰囲気に呑まれ立ち尽くしていた。


『頭を上げよ二人とも。ランディールといったか、楽にしなさい』


その落ち着いた優しい声に緊張が解けるのを感じる。先程まで場を支配していた威圧感はなくなり、ランディールの目にはその長老がただの人のいいおじいさんのように映った。


『お礼は絶対じゃ。その子が魔法を望むのなら授けなければいかんじゃろうて』


優しく諭すように長老が言う。


『しかし長老!人間に魔法を教えるのは……。そもそも人間には魔法が使えないのではないのですか?』


ソーマが食ってかかるように言った。


『やって見なくてはわからんじゃろ?何せ彼は我々の言葉を喋ることができるのだから。それにここまで一人で誰にも言わずに来た子じゃ、今更人に言うこともあるまい』


『よろしいのですか?』


『ああ。儂の孫娘がお礼をしなかったともなれば周りもうるさいしのう』


ケラケラ笑う長老にソーニャは黙って頭を下げた。


『感謝致します。ソームお爺様』



『えっと……』


どうやら魔法を習えるようにはなったのだろう。展開の速さについていけてない所もあるが。


『ついてはお主を我々の村へと招待せねばな』


長老は杖を掲げて地面へと突き刺す。

そこを中心に光がランディールの視界を塞いだ。

次回更新は2/5の八時頃の予定です。

今回はあまり満足がいってないので恐らく何度か改稿すると思います。修正後、詳細は活動報告の方で報告させていただきます。

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