第1話 若人隊へ
春。
様々な出来事の始まり。
俺、霧ヶ峰 青砥もそんな新たな始まりを迎える1人。
俺の生まれ故郷は、首都からは程遠い『ド』がつくほどの田舎。
首都から、列車をいくつも乗り継いでやっとの所。
藤宮という小さな町だ。
そしてある日、俺が15歳の時。
藤宮に首都からの使者が来て、
「13歳から17歳の者達に若人隊適性テストさせてもらう。男女は問わない。該当者は、集まるように」
と言った。
そのテストに俺は見事合格し、若人隊へと入隊するために首都へ赴く事となった。
こんなことになった全ての元凶は、2年前の研究室大爆発事故により、そこで開発されていた液体型ウイルスが空へと散乱したことによる。
そして、最近になってウイルスの活動が活発化していることが確認され、更にウイルスが姿を変え、人間へと攻撃を仕掛けてくる可能性が非常に高まってきたのだ。
ここまでのことは、俺も人から聞いた話のためあくまで最低限のことだけだ。
若人隊に関わっていない一般の人達でも知っているようなことのみ。
詳しいことは知らない。
最新の情報なども知らない。
まずもって知るよしもない。
何故なら、政府が世間に対する公表内容を、ほぼほぼ制限しているからだ。
しかし、こんな危機に直面して何もしないわけにはいかない。
そこで政府は、人々を混乱させないだけの最低限の情報だけ世間に伝え、理解をしてもらった上で対抗手段として、戦える若い者を集めた。
その上で更に、戦いの素質・適性がある者を、『若人隊』と呼ばれる対ウイルスの戦闘集団へと加入させる手筈をとった。
『若人隊』では、ウイルスについての知識を高めたり、様々な形態のウイルスに対抗する為の戦いの訓練、対ウイルス最新兵器の使い方などを学び、戦闘に備える。
ウイルスに対する基本情報、最新情報を一般の人より明らかに多く知ることが出来る。
しかし、その情報は国家機密にも匹敵するもの。決して漏らすことがあってはならない。
そして、そのような技術・知識を元に、液体型ウイルスに対抗し、迎え撃とうとしている。
ウイルス開発者の話によると、ウイルスは液体の中にある極小の粒子同士がぶつかり合うことで複製していくように、更に量を増やしていくという。
あくまで本体、つまり核となる部分はその極小粒子なのである。
その為、『若人隊』では粒子ごと殲滅させて根から枯らしていこうとしている。
この辺りの情報は、テストに受かった時点で首都からの使者であり、また試験官でもある若人隊員に少しだけ教えられた。
この様に、『若人隊』は常に危険と隣り合わせで、任務を果たさなくてはならない。
そのため、全国からその危険にさえ立ち向かえるだけの素質のある者を集めているのである。
そして、『若人隊』への入隊が決まった若者達は、まずは更に詳しく学ぶ為に、『若人隊訓練学校』ヘ入学する。
そして、俺も入学する為にわざわざ故郷の藤宮を出て、列車を乗り継ぎ多くの時間を費やし、学校のある首都ヘと向かっているのだ。
実は、今回藤宮から選ばれた合格者は俺1人だけでなく……
「ねぇねぇ、まだ着かないの~?待ちくたびれたんですけど!!どうにかしてよ~」
などと言っているコイツが、俺以外の今回の合格者だ。
名前は、如月 紅葉。
俺の幼馴染みで、年も同じ16歳の女だ。
美しいセミロングよりも少し長い金髪を一つに纏め、高い位置でポニーテールをしている。
髪飾りには、『藤宮』にちなんで淡い紫の藤の花が付いている。
少しつり目がちな薄い紫の大きな目で、勝ち気そうな表情をしている。
スタイルも良く、胸も布越しからでも分かるほど豊かに育っている。
他人から見れば、美少女の部類に入る位の容姿らしいが、見慣れ過ぎた俺にはその感覚がよく分からない…。
というか、褒めてしまってコイツが調子に乗るのだけは、避けたいからかもしれない。
調子に乗せてしまうと、ぶっちゃけ面倒くさいほどだ…。
明るく気さくで誰とでもすぐに打ち解けられる性格だが、少々口煩い。
ふざける事も多くどうしようも無い奴だ。
しかし、たまに気弱なところも見せることもある。
「ねぇ~暇だよぉ~。何かやってくれな~い~?……ねぇ、無視って酷くない!?うぅ、暇すぎて死にそう…!」
生憎何か出来るような面白いものなど持っていない。
「……煩い」
「助けてぇー」
「嗚呼もう、煩いってば……。もう直ぐで着くからちょっと位我慢してろよ……。」
流石に呆れ返る。
「無理ぃ~。つまんない」
「だから……あのさ……」
更に呆れて、もう一度言い直そうとした時
【 次は***。***。】
車内アナウンスが流れた。
「おっ!キタキタ!!はぁ、やっと着く~」
「はぁ、良かった。やっと着く…」
其々安堵の表情を浮かべた。何故だか、どっと疲れた気がするが…。
しかし、俺の心は疲れを吹き飛ばすくらいの高揚感で一杯だった。
「さぁ、やってやろうじゃないか!」
俺は、新たな始まりの一歩を踏み出した。