思考する卓郎 2
またtwitter連載からの転載です。
もとのログはこちら
http://togetter.com/li/746659
次回もまたtwitterで連載するか、こっち(なろう)で書き連ねるかは、まだ決めていません。無軌道!
さて、俺(卓郎)は、じっくりと考えることとする。
俺はまず……というか、最終目標は、まぎれもなくあの世界をブッ壊すことだ。だがこれも妙な話かもしれない。俺はあの世界に、何らの義理ももっていないし、あの世界が綺麗な世界だっつー可能性だってバリ盛りだって話だ。それは確かだ。1
だがそんなことは、割に知ったことではない。
例えば、あの世界で虫けらのように扱われたことが気に入らない。もとの現代社会でも同じかよ、と。
……そして、これは俺にもよくわからない考えなのだが、「そんなことで世界を憎むなんてオカシイよ!」と良い人ヅラで、もしくはしたり顔でほざく奴ら。2
こいつらをぶっ殺したくて仕方がない。俺はこの手の、
「お前の呪いとか憎しみとかは、他の誰でも思っていることなんだけど皆それを頑張って抑えて、どうにかしているんだよ。君もがんばらなくちゃ」
という言い回しが憎くて憎くて仕方がない。俺の呪い、憎しみは俺だけのものだ。誰に指図される事無い 3
それが常識なんだ、と俺は知っている。だからこそ、この常識というやつを壊したい。常識で成り立っている世界を壊したい。常識のうえでのうのうと成り立っている世界を……ああ、だんだんわかってきたぞ。俺は「皆が我慢してるんだから君も我慢しろ」というのがとことん気に食わない。4
俺の怒りは俺だけのものだ!だから俺はこの怒りを「自分のもの」として、俺が俺であるということで、ぶちかます権利がある。そこに大儀なんて必要ない。そこに正当化なんて必要ない。俺がしたいんだから俺は壊すんだ! 異世界に転生したから、この世界全部ブッ壊してやる!5
第一なんだ、「皆が我慢しているから君も我慢しろ」?
これのどこが「正義」の考えだというんだ?俺はこの考えをあのクソな親戚――父母が死んで、その遺産をたかろうとする親戚から、ものっそい押し付けられてきた。そんなものにどこの正義がある。第一「皆」ってなんだ。それほど価値のあるものか 6
ああ憎い。「皆」が憎い。
皆、が存在しているあのもとの世界が憎い。
そしてあのもとの世界と大して変わらない……娑婆苦、という意味ではなにも変わらないこのレッズ・エララという世界も、気に食わない。
俺はただちょっと物資がほしかっただけだ。それなのに銃で殺されるかよ 7
ああ、あの銃でさんざんやらかしてくれたあの軍隊も気に入らない。マッチョの奴ら……俺が何したよ。
ああ、殺してやる殺してやる。俺が負けたということが気に食わない。殺してやる……! 8
さて。じゃあ世界をどのようにして壊してやろうか。
そのためには、まずあの世界である程度放浪してみることが必要だ。そのためには財産がちょっとは必要だろうが、
それはあの崩壊した町から簒奪すればいいだけの話だ。そのためには、あそこにいる軍隊が邪魔だ。よし、殺そう。9
鉄塔……
この力が、次の俺の人生には、ある。努力なしに手に入れた異能だ。よし、十分だ。これでもって俺はまず第一歩を踏み出すことにする。どうせあの世界で、このような異能を持っている奴など、そうはいまい。いたとしても、「突然表れた異能持ち」に即座に対応できる奴はいない 10
そこがミソだ。
撹乱するんだ。
突然あの世界に再び舞い降りて、奴らが混乱している間にぶっ殺し、ぶっ壊しまくるのだ。
それからのことは、それから考えよう。11
そして俺は、ナニカの隣にある、あのでっかいスロットマシンに手をかける。
「お、卓郎くん、もう考えはいいのかい?」
「だいたいまとまった」
「壊しにいくんだね?」
「ああ」
「修羅の道、後悔はしないかね?」
「だったらこのスロットで「死」を選ぶっつの」
「それもそうか」12
「いくぞ」
「いってらっさい」
じゃかじゃかじゃかじゃか、ジャン!
スロットが派手な効果音を鳴らして、目を出す。
【鉄塔を得て、また転生する】
――いくぞ、第三番目の生。13