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思考する卓郎

しばし「なろう」を離れて、twitterでこの物語を連載していました。

詩小説……詩のような、小説のような、どっちつかずの物語/叙述形式です。

アカウントは@RedsElrlaです。

とぅぎゃったものがこちらになります。

http://togetter.com/id/RedsElrla

このうちの(1)(2)から引っ張ってきました。


ようは、twitter詩小説「レッズ・エララ神話体系」と同じような更新形態です。http://ncode.syosetu.com/n0132bz/

各パラグラフに振ってある番号が、そのまま1ツイートぶんに相当します。

【これまでのあらすじ】

中二病患者のリアル高校生、北条卓郎(以下、卓郎)は、父母の死、そして遺産目的のろくでもない親戚に愛想を尽かし、自殺を試みる。しかし、死ねなかった。彼は――白い空間にいた。そこで「次の人生」を選べる、変な機会を得た。 1


その白い空間には、人の形をした何かがいた。そして、スロットマシンがあった。「ナニカ」は言う。「君が強く望んだものを、このスロットは出す」と。「もとの世界に戻る」「死ぬ」「新しい世界で楽しくなる」の三つが、スロットにはある、と。 2


卓郎は、三つ目の「新しい世界で楽しくなる」を選んだ。そこには、ラノベでよくある「異世界転生テンプレ」が働くだろう、という安易なモクロミによって。だが、卓郎がたどり着いた世界は、戦乱まっさかりの所であった。卓郎はそこで、いろいろあって、また死んだ。 3


そして、卓郎は、またあの白い空間にいる。ナニカと、スロットマシンと共に。ナニカは、これまでの卓郎の所行を――世界全部に対する憎悪を持った卓郎の、安易な行動を批評するところからはじまる 4



(本編開始)



「じゃあ卓郎くん、状況説明をはじめようか」

「一番最初にしろっつーの」

 卓郎は憮然とする。が、ナニカは、無視して自分の言葉を言う。

「レッズ・エララの説明からしようか」

「なんだかお前、神みたいな言い分だよな」 5


すると、ナニカは、口をすぼめた(ように見えた)。フードに隠された深淵なる暗黒のなかに、珍しく「表情」のようなものが見えた。ナニカは言った。

「……どうして、そう思ったんだい?」

「お前だって、この……ええと、れず・えるら?」

「レッズ・エララ」 6


「そう、あの世界。レッズ・エララ。お前も、その世界の”只中”に生きているんだろう? なんだか今の言い方は、その世界を……こう、どこかで俯瞰して見ている、というか」

「……」

 珍しく黙るナニカであった。

 すると、卓郎のなかで、何かのいたずら心めいた疑問心が湧いた。 7


「お前、もしかして、このレッズ・エララとかいう世界を作った奴、とか言うなよな」

「……………………………………………………………………」

 長い、長い沈黙であった。そしてこの白い空間は一切の無音になる。 8


 急に嫌な悪寒に襲われる卓郎だった。こいつは……いったい何なんだ?

 考えてみれば妙なのである。なぜ俺は選ばれたのか? なぜ俺はまだ生きている? こいつの手のひらの上、ということは疑う余地もないが、それにしてもなぜ「俺」なのだ? 9


俺は……北条卓郎という人間は、それはそれは平凡なガキである。何かの主人公という器ではない。強烈なエゴもなければ、強烈な個性もない。特技もない。あるのは……あの時目覚めた、強烈な憎悪だけ。それも、ごくごく短時間だ……もちろん、今も続いている憎悪ではある。 10


 しかし、世には、これ以上強烈に悲惨な経験をした人間もいるであろう。

 なぜ、ナニカは、俺を選んだ?

 そしてそこから導き出される次の設問は決まっている。

 ナニカは、何を俺にさせたがっている? 11


この眼前のナニカは、ナニカにしては珍しく、考えに考えて発言する。いつも軽口しか言わないような奴が。

「まあ、ルールを守るのが僕の美徳なのだから、正直に言おう。……ああ、ルートヴィッヒの奴には申し訳ないが……」12


 ぶつぶつと何かを言う、眼前の得体の知れないナニカ。だが……

 だが……

 このナニカにも、何らかの人格はあるらしい。

 もちろん、前から「胡散臭く」「信用のならない」奴だということは知れていた。 13


だが、このナニカであっても、何らかのことを「深く」考えているということを、はじめて卓郎は思い知った。こいつにも感情はあるのか、と。

 

――感情。


 少しこちらも考えて、笑ってしまいそうになる卓郎だった。俺が、感情? 人間らしいものが、急激に色あせていっている今の俺が感情? 14


バカらしい。

「おい、お前、いいぞ」

「なんだい卓郎くん」

「それ以上、お前が誰かに義理立てする必要はないってことだ」 15


「なんだいなんだい、僕を気遣っているのかい?」

 ニヤニヤするナニカ。それに対して、卓郎は――俺は――最大限のドヤ顔で返してやることにする。 16


「お前のセンチメンタルな来歴に気が向いたとき、それをお前は俺のために聞かせればいい。ただそれだけの話だ。そして、お前がこの世界のキーパーソンだということが知れたとき。また、そのときに、同じように俺に聞かせればいい。それだけだ」 17


 そして、

 ガッ!

 と、地面のない、白い空間を踏みしめ、卓郎は眼前のナニカに向かって放つ。18


「俺が知りたいのは、情報だけだ。あの世界を蹂躙するために、俺が強くなるための、単なる情報だ。――そ、れ、だ、け、だ」 19


 あえて言葉を区切って、中2病満点で言う卓郎だった。

 強がりではない。

 ただ、自分に多少残された、センチメンタル的な「なんか微妙なもの」が嫌になったからだ 20


すべて葬っておこう。人間らしさなど……人間が人間らしさを人間らしく求めたところで、結局は……あの親戚のように、すべて汚濁へと変わるのだ。

 そんなものだ。それだけだ。それだけ……


 そしてナニカは、卓郎に向けて、同じようなドヤ顔でもって、相対する。 20


「うん……やはり、僕は、君を選んで正解だったと、何度でも言おう」

ナニカにしては、ずいぶんと、人間味のあるような発言であった。

「では……君が先ほど問うた、現状に対する疑問について、わかりやすく回答することにしよう」 21



「まず卓郎くん、君の”ここで何ができるか”という疑問だね、かいつまんでいうと」

「まあな。お前前に言ったよな、この空間は、時間が無制限にあるって」

「そうだね。スロットの目がでるまでは、ここの時間はレッズ・エララの時空からは切り離される」1


「”ここ”は何なんだ? お前がいまは誰というのはどうでもいいが、俺が臨死状態になったとき、ここにつれてこられる。じゃあ、俺の死ってのは、なんなんだ?」

「それは、スロットの目をみてごらんよ」

卓郎は、スロットの目に「死ぬ」というのが、真ん中にあるのをみる。2


ナニカは言う。あっけらかんとした口ぶりで。

「君は死ぬことができる。やっぱりここは、死の手前なのさ。選んだら、まったき沈黙……完全なる自己の消滅を享受する。晴れやかにね」

「晴れやかか」

「君は人生に絶望しているのだろう? だったらおあつらえむきじゃないか」3


それを言われたら返す言葉がない卓郎だった。だが……だが……

卓郎は、歯軋りを通り越して、血が滲むほどの苦悶でもって、つぶやく。慙愧の念にそれは近いかもしれない。


「このまま何もしないままで……あの世界に傷跡を残さないままで、死ぬわけにはいかんだろう」4


さて、読者諸賢は疑問には思わないだろうか。卓郎にとって、あの「レッズ・エララ」という世界は、とくに関わりのないものなのである。

それなのに、なぜ「破壊」にこれほど固執するのか。5


暫定解ではあるが、おそらくそれは、彼が「自分以外のすべてに振り回されている」という感覚に、嫌気がさしているからだ。

どこかの誰かが……大いなる誰かが、自分をもてあそんでいるのではないか、という被害妄想。それは神か、それは大衆か。あるいは世界か。6


卓郎は憎悪を心に飼っていた。それは彼の肉体を浸食し、外に出そうなほどになっていた。彼の心は、憎悪一色になっていっている。まるで重油が、凪いだ海を汚すかのように。7


「ところで卓郎くん」突然ナニカが質問をし出した。

「なんだ」

「君、”ここ”での時間をやけに気にするね。どうせ、スロットを回すまでの時間だろう?」それは試すかのような問いかけの言葉であった。8


卓郎は言う。

「いや、この”切り離された時間”というのは、よく考えてみれば、アドバンテージだと思ってな」

「ほう」

ナニカは、非常に興味を示した。卓郎はいう。9


「確かにお前のいうように、俺は配慮が足りなかった。なら、時間も脅威も”ない”、ここでありとあらゆることをシミュレートする。なおかつそして、時間が有り余るほどあるのなら、まず体を……若干の異世界チート補正がかかっているこの体を、まずは理解し、馴らす。俺のものとする」10


ふふっ、と、ナニカは笑う。卓郎は問うた。

「おかしいか?」

「いや……なかなかに、クレバーな判断だ。合格どころか、最上級の賛辞を与えたいほどだよ。君は、このゲーム……そうだね、いわばこの時空は、RPGのキャンプ画面のようなものか。それでもって、戦略を練るか」11


「その通りだ」卓郎はうなずく。言葉を続ける。

「だから、このキャンプ画面的時空で、得られたなんやかやのスキルだの、情報だのが、実際のあの異世界レッズ・エララで”わや”になってしまっては困るんだよ。俺がせっかく考えても、ルール、つか、経験そのものが失効してしまってはな」12


「それについては安心してくれていいよ、卓郎くん。君がこの時空、空間で得た”すべてのもの”は、立派に”次の人生”で引き継がれる」

「レッズ・エララでの新しい……今度は、第三回目の生において」

「そう」13


「よしわかった、俺はこの時空で、好きなだけ考え、体を鍛えることができる。そして、その結果を、次の生に引き継ぐことができる。で、だ。”次の生”ってのは、どっからはじまるんだ? どのタイミングなんだ?」14


「それもまた、君の願うところさ」

ナニカは、その大きなスロットマシンを「ぽん」とたたいて、卓郎の視線をスロットの目に向けさせる。

「君が、あのとき、銃弾で打ち抜かれた、まさにそのとき。そのときをもって、また転生することだって可能さ」15


「ずいぶん都合がいいな」

「都合がいいに越したことはないだろう? 君にとっては」

「違いない……さて、最後の質問だ」

「どうぞ」

「――俺の次の目は、なんだ?」16


ナニカがいう。「まあ、今回は僕が用意したよ」

そしてスロットの目が、くるくると回る。仮の目が、3レーン、あべこべにでる。17



●もとの世界に戻って生きる

●このまま死ぬ

●特殊能力「鉄塔グレイヴ」を新たに拾得して、レッズ・エララで転生する 18



「”鉄塔グレイヴ”?」

卓郎は、その奇妙なネームに疑問符を浮かべた。それに対してナニカは、

「まぁ簡単に言えば、君が任意の場所に念力を込めれば、すごーく強い鉄の棒みたいなカタマリが、相手に突き刺さるって寸法さ」19


「魔法か」

「今の君には、身体能力が多少ある程度で、これといった武器はないからねぇ」

少々イラっときた卓郎だったが、何も言い返せない。事実だからだ。それに……

「……悪くないな、”鉄塔”」

なんだかんだで、彼は中2病だったのだ。20


「さあ卓郎くん、どうするね?」

「もちろん、スロットを回させて、その目を出させてもらうさ……だが」

「だが?」

「そのために、俺はよーーーーーく、考える必要がある」21


卓郎は、にんまりとした邪悪な笑顔でもって、ナニカに答える。

「……次の人生で、どうやって、どれだけ、ブッ壊しまくるかをな。だから何時間か時間よこせ」

それを聞いたナニカも、また邪悪な笑顔を浮かべていた。22


この形式にすることで、少しは更新が早くなるかしら?

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