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こんにちわ、レッズ・エララ 2

更新が遅れてすいません。これから、出来る限り毎日書きます。時間はまちまちですが、だいたい夜8時~11時あたりに更新できる確率は高いと思います。

 卓郎は兵士の喉を喰いちぎった。

 それは本能的に行われた行為だった。こいつを殺す、こいつを許さない、こいつをズタボロにしてみせる、と。その一心で喉元に喰らいつき、そして、喉のあったかい肉に接触した歯でもって、ごぎゅるり、じゅる、ぐちゃり、と、野蛮に喰いちぎった。


「あああぁぁあああああああ!」


 目を見開いて、動転した兵士は、いきなりバンザイをした。人間、あまりに動転すると、どういう行動をするかわからなくなるものらしい。 

 それは恐怖か。それは当然あるだろう。畏怖? そこまではいかない。なにせ、あまりに突然のことであるからして。

 しかし、兵士の脳裏に浮かんだのは、

「これはヤバイ」

というのと、

「このヤバイ奴は殺さねばならない」

という二つであった。

 よって、猛烈な痛みに耐えつつも、兵士は反撃を企てようとした。あいにく、手元のライフルは地に落ちているから、兵士は、これまでの訓練シーケンスと同じように、腰のサブウェポン……拳銃でもって、卓郎を射殺せんとする。

 だが、卓郎は、その兵士の行動を、ほぼ読んでいたがごとく、同じように兵士の、銃を持った右腕をこれまた「喰いちぎった」!


 「ぎゃああぁぁあああああああ!」


 そこから後は、卓郎による圧倒的な撲殺であった。とにかく殴った。兵士をその場に押し倒して、殴って殴って殴りまくった。顔の形はどんどん変わっていった。ぬるま湯のごとき血潮が溢れては、卓郎の身体を塗らした。肉を殴りつけている、というよりは、骨を殴りつけているかのような感触にまでなっていた。

 だが、そこまでしても、まだ兵士は死んでいない。すでに四肢はピクピク状態となっているのだが、死なない。

 喉元から、ヒューヒューという息漏れの音がする。やはり、はじめのあの一撃は致命傷だったのだ。このまま放っておけば死ぬ。

 それでいい、と卓郎は思った。

 だが、


「足りねえ……」


 そうつぶやいたのも、また卓郎だった。

 俺をこうやってぶちのめした奴に、まだとことんまで殴りつけてない。傷つけてない。まだ足りない。もっと血を見たい。血に触れたい。肉に……裂ける肉に触れたい。砕ける骨に触れたい。

 卓郎の中にあるのは、そういった暴力衝動だった。

 いまここにおいて、卓郎は自覚した。「前の世界」での自滅衝動と、「今の世界=レッズ・エララ」での暴力衝動は、つながっている、と。

 壊してしまいたい。とにかく、卓郎はそう思っている。だって、世界はクソじゃないか、と。人間もクソじゃないか、と。少なくとも、俺に向かってこんなことをしてくる連中は全員死んでしまえばいいんだ、と。

 暗い憎悪が、いよいよ形と方向性をもって、彼の中で作られていく。

 そこまで思ったとき、


「何があった!」


 向こうのほうから、他の兵士たちが走ってやってきた。当然だ。これだけの大音声でもって断末魔が響いたのだから、よほどの敵かと思うだろう。

「……っ! 敵かっ!」

 仲間の兵士たちはそういって、卓郎に向かってライフルを構える。その数、3つ。つまり、兵士3人。しかして、アサルトライフルから放たれる銃弾は……その数倍。

 直感的にそのことを悟った卓郎は(元来これはありえない思考シーケンススピードであるが、現時点の卓郎はその異常性に気づいていない)、まず伏した兵士の身体を起こして、自分の盾にした。

 「撃ってみろ! こいつの命が惜しくないならな!」

 卓郎は、軽々と成人男性一人ぶんの重さを、吊り下げていた。片手で。しかも兵士である。さまざまな装備を含めての重さである。

 それでも、いささか重い、と感じる。能力底上げチートが働いていても、それでも「上出来の人間の身体能力」程度であるらしい。

 じり、じり、と卓郎は「あえて兵士たちに接近する」。引くことを、あえてしなかった。これもまた、本能的によるものである。なぜか卓郎は、「引いたら射殺される」とこの場では思った。ならばあえて牽制するような形にしたほうが、戦局を有利にできる、と「直感的に」思った。

 「クソッ……フリークスが……」

 兵士がそうつぶやいたのも、無理はない。

 だが。

 決定打がないのは、卓郎も同じであった。なぜなら、こちらもまた、相手の仲間の命を盾にしているのも事実であるが、武器と呼べるものひとつない。

 ――なんとなく、もしかしたら、今魔法とか使えるんじゃないか? という夢想をした。これだけ身体能力が上がっていれば、さらなる異世界転生テンプレ「魔法」というのも。ただ自覚はない……



 ――ガゴォン!――


 して。

 このような、戦場における、「呆け」としかいえないような緊張感の緩和が、卓郎の命を奪った。

 卓郎の視線が、以上の妄想によって兵士らから離れたとき。

 卓郎の眼は撃ちぬかれていた。

 痛みを感じたかもしれない。だがそれ以前に、圧倒的なまでのブラックアウトが、卓郎を支配した。

 卓郎は、二回目の死亡を、した。

 そして――




「やっぱり、また会ったね、卓郎くん」


 ――卓郎は、またあの白い世界に、「ナニカ」と「スロットマシン」と共にいた。


全然主人公っぽくないですが、少しずつ「暗黒主人公」になっていきますからごあんしんください。

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