最終話
マヤンの鉄仮面が今度こそ崩壊した。
「ア・ヤカまで?! 何を考えてんですか!」
しかし、ア・ヤカはいつも通り満面の笑みを浮かべたまま、自信たっぷりに言い放った。
「つぎの族長選、わたしがぜ〜ったい優勝する! だから、わたしがわへーを結べばいっけんらくちゃく、でしょ? それに、わたしが優勝できなくてもレラッカかマヤンが優勝すれば、族長として、ひよこぞくとなかよくすることにすればいいしね☆」
その能天気っぷりと自信家っぷり(もちろん実力に裏付けされてはいるが)に、暫らく呆気に取られる一同……
「……よかろう」
声を絞りだしたのは、たった今までア・ヤカやレラッカと死闘を演じていたピヨキチだった。
「お父しゃん……?」
「ぱぴー!」
娘達の心配気な視線を受けながら、ヒヨコ族の族長はラディのもとに歩み寄った。
「この若者は、命懸けでひよ子を守ってくれた……そして」
レラッカを仰ぎ見るピヨキチ。
「君は、妹を思うブル子に優しく声をかけてくれた……。君たちを見ていると、下らぬプライドのために多くの命を犠牲にしてきた自分が恥ずかしくなった」
「ピヨキチ殿……」
「いまさらこんなことをいうのも図々しいかもしれん。だが、レラッカ殿、ア・ヤカ殿、そしてマヤン殿……シャマイの実力トップ3として名高いあなた達3人と、全てを水に流して和平を結ぶ約束をさせてはくれないだろうか」
シャマイの現在の実質的トップ3は、驚き半分、喜び半分、陰謀1/3の表情で顔を見合わせた。
「「「喜んで!!!」」」
3人の快諾に、周りの戦士達から歓喜の拍手が沸き起こった。
「ラディしゃん……よかった……!」
「ひよ子……」
ひしっと抱き合うラディとひよ子。
そして……
「レラッカ……」
ブル子がうれしそうな顔つきで声をかけてきた。
「これはーあなたのおかげですー。ほんとにー、ありがとー」
「ブル子……そんな! あああたしは何も……」
改まってそう言われると、妙に照れ臭い。
「そうだ、ブル子! お願いがあんだけど」
照れ隠しに、少し大きな声を出す。
「なーにー?」
「これからずっと、友達でいてくんないかな?」
ブル子は、愛らしい笑顔を浮かべてレラッカの手を握った。
「もちろんー!」
こうして、ラディの漢気あふれる愛情と、レラッカとブル子の無償の友情のお陰で、シャマイ族とヒヨコ族は和平を結ぶに至ったのだった――
その後、ラディとひよ子が愛情を育み、結婚式が執り行われるのは、玉吉が鏡の向こうの世界を知ってからのお話……。
[終]