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婚活

さて、近代の結婚や恋愛についての話をしよう。

明治時代より四民平等が政府より布告されたことにより、建前上は華族と平民との間の通婚もできるようになった。

大正時代になれば都市部ではサラリーマン層による恋愛結婚も出てくるようになる。

とはいえ、当時はまだまだ家同士の結びつきを重要視するため見合い結婚が盛んに行われていた。

地方ではそうであったろう

また、会社の社長などのいわゆる名士層や上流階級においては見合い結婚が主流だったのだ。

(現代でもその感じがまだ残っている)

つまりは、そういうことだったのだ。


この当時、結婚年齢は平均して男性27、女性22前後が主流だったのだがこれはあくまで平均でしかない。

あまりたいした年齢差ではないではないか

と、思うかもしれないが(晩婚化の進む現代と比べてはならないのです!)、平均とは恐ろしいもので、計算さえ合えば30代結婚があったり、10代結婚があってもすべて平均で何とかされてしまうのだ!


ということで、10代での結婚も割りと行われていた。

そして、当時は見合いをする=結婚するというのと同義語であった。

また、結婚も見合いが主流であったといっても中にはもっとひどいことがあって


「あ、有りの侭に起こったことを話すぜ・・・家に帰ったら知らない女の人がいてその人が嫁だった・・・何を言っているのか分からないと思うが、俺にも分からない。頭がおかしくなりそうだった。見合いなんてチャチなもんじゃねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を見たぜ・・・」(※プライバシー保護のため、音声は変換してあります)


ということが本当にあったそうである。



さて、そういう訳だから魔法使いからクラスアップしてSLBを撃てるような魔法少女ならぬ魔法おっさんを目指すお気楽独身貴族である義男にもいいかげんに年貢の納め時ということで、結婚の魔の手が迫ろうとしていた。


1916年5月某日 来島家


この日、雷蔵は義男を居間に呼びつけ、義男が座ったところでいきなりこう言った。



「見合いしろ」


「・・・え?」


「だから見合いしろ」


「・・・なんで、俺?」


「お前もう今年で32だろ。いい加減嫁の一人くらいもらえ」


雷蔵は溜息をついた

いつの間にか完全に賢者と化している義男に呆れたとも言える。


「でも・・・」


「あのな、義男・・・」


雷蔵はそういうと一息つくと、息を少し吸い込んだ。


「俺だって孫と嫁の顔が見たいんだよぉ!」


雷蔵は怒鳴った。

涙目であった。


「それなのにお前ときたら全く女のおの字もない!見合いもしようとせん!どげんせいっちゅううんや!?」


「親父、お願いだから落ち着いてくれ。血圧あがるだろ?」


「・・・すまん。やけどな、お前ももう32や。わしも長くはない。いい加減に安心させちくれ


(あんたならもう100年生きても死ぬようには思えないんだがな)


義男は寸前まででかかった言葉をなんとか飲み込むことに成功した。


「でも、相手はどうするんだ?年齢的に無理なんだろ?10にもなっちょらんとか40の後家さんとか・・・」


「うむ、だがこの間、見合いの誘いがあってな・・・」


雷蔵は訥々と話し始めた。



別府周辺の名士達に「いくら雷蔵さんの頼みでん丁度いいのがおらんから・・・」と断られた雷蔵ではあったが、九州北部は筑豊地方のほうから打診がきたのだ。

いまや別府造船所は大分最大の造船所であり、その成長の立役者である義男は30にもなって独身である。

別に犯罪者でもないし、最近出てきた社会主義にかぶれているガキでもない。(というかむしろ否定している)

特殊な性格(厨二など)は持っているようだが、男色の気があるわけでもない。

むしろ、年商1億以上を稼いだ優秀な投資家(外面は)である。

つまり、年齢その他若干に目をつぶれば超優良物件なのだ。

そのため、目ざとい者は直ぐに目をつけていた。

で、雷蔵が別府周辺で嫁を探してもいなくて途方にくれているという情報をキャッチした彼らは早速別府造船に打診したのだ。


嫁の当ならあるぞ?と


雷蔵はそれに飛びついたのであった。


「・・・マジっすか?」


「本当だ・・・地元ならなんとか断れたかもしれんが(断る気はなかったが)、無理だな。取引にも支障をきたす。」


「つまり?」


「諦めろ、試合終了だ。」


その言葉に、義男はため息をついた。


「いいよ、別に結婚したくないわけやなかったから。」

そう、義男は別に結婚したくないわけではなかった。

ただ、婚活が面倒だっただけだった。(そんな暇あるなら遊ぶか仕事するかしたい)



「そうか・・・」


「で、相手は?」


「うん、貝島さんがたろの親戚筋の娘さんらしい。」


「貝島って・・・もしかして北九州の?」


「北九州・・・?」


「ああ、筑豊のほうな?」


「・・・ああ、そうだ。」


貝島家。

安川や麻生と並ぶ筑豊の3大地方財閥の一つである。

貝島太助によって興された。

炭鉱の経営によって財を成していた。

井上馨を顧問に招いており、鮎川義介(日産コンチェルン創始者)と縁戚関係にあり、また三井などとも関係が深かった。


「で、どげんな人?」


義男は雷蔵に尋ねた。

彼の頭の中には財閥という言葉からどう考えてもアニメなどに良く出てくるいかにもお嬢様!的な感じがする女性を思い浮かべていた。


「それが分からんのや。取り敢えず会っち欲しいといわれただけでな。」


雷蔵はかぶりを振った


「兎に角、こらーもう決まったこつやからな。しっかりやっちもらうぞ?」


「分かった」


雷蔵の言葉に義男はうなずいた。




さて、それから数日後、義男は雷蔵と共に貝島家の邸宅に向かった。

そこには一人の中年の男がいた。

男の名は貝島太市。

貝島炭産の社長である。


「このたびは、お越しいただき有難うございました。」


「いえ、こちらこそ・・・」


雷蔵と貝島が笑顔で挨拶をした。


「来島義男です。本日はよろしくお願いします。」


義男は貝島に向けて頭を下げた。


「あなたがそうでしたか・・・一度お会いしたかったと思っていたところですよ。」


ハッハと笑いながら貝島は義男の手を握った。

別府を短期間で大分随一の造船所に育て上げただけでなく、鉄鋼メーカーを傘下に入れるなど時代の流れを良く見ることができる、新進気鋭の投資家。

そう考えていた。

3人が談笑をしていると、


「お茶をお持ちしました・・・。」


と、女性の声がしてふすまが開いた。

みると赤を基調とした着物を着た少女がいた。

10代くらいにしかどうしても見えなかった。


「時に、そちらのお嬢さんは?」



「ああ、こちらは私の親戚筋の娘の茜です。ほら、来島さんにご挨拶をなさい」


貝島に促され、茜と呼ばれた少女はペコリと頭を下げた


「茜と申します。本日はよろしくお願いします。」


「・・・もしかして、この娘が?」


「ええ。まだ13ではありますがね」


なん・・・だと!?


ちなみに、この時代女性の結婚可能年齢は法律で15歳からとなっていた。


「まぁ、そういう訳だから、しっかりやれよ?・・・では、貝島さん我々としても長居は無用と思いますので」


「そうですな、では茜、私達は別室にいるから・・・」


そういうと二人は部屋を出て行った。

ニヤリと雷蔵が唇を一瞬歪めたのを義男ははっきり見た。


(あのクソオヤジ、俺を嵌めやがった!)


出て行く二人を引きとめようとしたが、そこに間が入った。


「どうしたのです?」


茜が不思議そうな顔で義男に尋ねたのである。

義男としてもここで騒ぐわけには行かなかったので


「いや、何でもありません。」


そういって見合いの席に着いた。

その後、茜と義男は茶菓子などを食べながら会話をしたが、正直、義男は何を言ったのか覚えていなかった。

後、菓子の味は結構甘くできていたはずなのになぜか砂の味がしたのは多分気のせいだろう。



まぁ、兎にも角にも、来島義男と貝島茜の婚約が成立することとなった。


ちなみに正式な結婚は茜が15になってからということとなった。



不幸である。




今回は義男の見合い話です。

そろそろいい加減に嫁の一人ぐらい必要ですしね・・・


欧州系もよかったのですが、結局閨閥入りが必要ということで同じ九州の財閥の娘さんと結婚させることにしました。

あそこは人脈も結構いいですしね。

当初は住友や安川や麻生、華族(中堅以下)などとくっつけようと考えたり、その娘で東京師範学校卒業のキャリアウーマン系とくっつけようとも思ったのですが、そうなると主人公がかえってつぶれるんじゃないかと考え、ロリっこにしてみました!

祝!主人公が犯罪を犯すことになりそうです。


今回、親子同士の会話に大分弁を少々入れてみました。

これからも地元系の人々との話の中でちょくちょく入れていくつもりです。


追記

北九州は当時はなかったようですので、代わりに筑豊と変更させていただきました。

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― 新着の感想 ―
お巡りさん、こっちです!
無茶苦茶な結婚は昭和40年代前半まではあったようです。テレビで見たのは縁談が来て相手は割と美人の姉?妹と言われて承知していざ結婚式挙げたら不細工な姉だか妹で逃げ出したが親が籍を入れてしまったためしばら…
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