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麦酒

諸君は、ドイツといえば何を思い浮かべるだろうか?


騎士?


タイガー戦車?



ソーセージ?


筆者たる私は真っ先にビールを思い浮かべる。

ドイツといえばビール!

これは外す事は決してできない。

もちろん好き嫌いはあるが、私はビールが大好きなのであえて言わせていただく。


さて、そのビールについて、ドイツには変わった法律がある。その名を「ビール純粋令」という


ビール純粋令とは、ビールに対して人は純粋でなければならないと定めた、やたらと小うるさいドイツの法律である。

この法律は作元々は1516年にバイエルンの小国で制定された法律だが、1906年にドイツ全土に適用された後、国体の変更や何度かの戦争を経て1987年まで400年近くも効力を保っていたという、ドイツ人のビールへの情熱が伺える法律でもある。

作り手の純粋さと飲み手の純粋さを規定している。作り手は混ぜものをせず、いい大麦といいホップ、いい酵母、そしていい水だけでその作り手の独自の味を追求しなければならない。混ぜものをしたものや、特徴のない味のものはビールのようなものとして闇に葬られる。

一方、飲み手は全力を持って純粋にビールを楽しまなければならないとされている。そんなわけで、ビールの新酒ができたことを喜ぶビール祭りでは、その地域の全てがどうしようもないほどの酔っぱらいと化すほどである。世界一規則にうるさいドイツ人だけに、酔っぱらい方にも規則があるのだが、どうやら「行けるところまで行け」という規則になっているらしい


※アンサイクロペディアより抜粋(8割嘘)




・・・大体こんな感じの法律なのだが、1860年に制定され21世紀の今日まで保持し続けられているという世界で最も古くからある食品関連の法律である。

さすがドイツ人規則とビール好きには右に出るものはいない。


そんなドイツはバイエルンのある町の片隅のパブの席の片隅にて、二人の東洋系の人間がビールを主食に食事を取っていた。

東洋系のものが珍しいのかチラチラと見るものもいるようだが、二人はそんな視線にかまわず濃いビール片手に食事を続けていた。

一人は30台半ばのオッサン、もう一人は10代後半の少女だった。

はためには、ちょっと歳の近い親子にしか見えないのだが、実は二人は夫婦だったりする。

・・・いうまでもなく、義男と茜である。



「という訳なんだけれど。どうかな?」


「いや、どうかなって・・・麦酒が美味しいことは確かですけど・・・」


「美味いけど、つまみがないのが悲しいね」


義男は苦笑しながら言った。


この日、義男は茜と二人でドイツ国内にあるとあるパブに来ていた。

いわゆる新婚旅行でのデートという奴だ。

義男は、前世と今生を含めても、ドイツにやってきたのはこれが最初のことであった。

また、義男自身の目的として、ドイツの軍艦のスクラップや人材を集める他に、新婚旅行ということもあったことも忘れてはならない。

商談が一段楽した後、義男は1週間ほど休みを貰って茜といっしょにドイツ中を旅することにしていた。

二人はベルリンにある博物館島や、ブランデンブルク門などの観光スポットを見た後、鉄道を乗り継いでバイエルン方面へと向かった。


ディズニーのシンデレラ城のモデルになったノイシュヴァンシュタイン城があったりするのだが、ドイツの中でも特にビールが美味いところでもある。

先に挙げた嘘が8割くらい混じっているビール純粋令もここ、バイエルンのかつての王様が取り決めたものである。当時、ビールにはおかしな混ぜ物が多く、中には毒物まであったりしたため、それを是正する必要があった。また、ビールを生産、輸出することで税金をてにいれようと考えて制定したらしいのだが、実はうまいビールをたらふく飲みたいから制定したのかもしれない。 


そう考えると、どこか可笑しさもこみ上げてくる。


尤も、義男にはビール以外にも目的があったのだが・・・




ドイツビールの最大の特徴は日本みたいに「とりあえずビールくれ」といった感じに喉を潤すために飲むものではなく、あくまで呑むために飲むものである。


つまり、主食のようなものだ。

実際、中世においてビールは修道院において主食になっていたということもある。

断食のときに、修道士達が「これは食べ物じゃねえ!飲み物だ!だから断食には反しない!」と無理やりこじつけを行って栄養価が高いビールを飲んで腹を膨らませていたという。

また、これはドイツにいったことのある友人から聞いたものなのだが、離乳食代わりに子供にビールを飲ませていたという話もある。(眉唾物だが)

そのため、ビールは「飲むパン」という異名もあるほどだ。


21世紀になった現代でもドイツ人にとってビールの地位は低下しておらず

ドイツでは食事をする前にまずビールを飲み、食事中でもビールを飲み、で、食後もこれまたビールを飲むのが普通なのだそうだ。

・・・良く飲めるな、とか、すきっ腹で大丈夫か?と思う。

どこぞの同人作家が聞いたら速攻で喜び勇んで飛び出していくだろうことは想像に難くない。


また、ドイツビールには驚くべきことにおつまみが付いてこないのが当たり前なのだそうだ。


ビールを出されたらビールだけ飲め!


というのが普通なのだとか


・・・焼いたスルメやタレのついたホルモンとかを頬張りながらビールをグイッとあおるあの感触が堪能できないのだ・・・これは辛い。


いや、別にできないわけではないのだが、習慣とはなってはいないようだ


また、現代の日本のビールと違ってキンキンに冷えてもいない。

ちょっと温いかな?といった感じが本場のドイツビールなのだとか。

(ちなみに、ビールを冷やすことに情熱を傾けるのは日本人とアメリカ人だけだとか)


それが、日本人である義男にとってみたらちょっと残念な所だった。


尤も、悪くもなかったのだが・・・。



「ですが、どうしてここにきましたの?」


茜が不思議そうに尋ねた。


「ん?それはね。会いたい人がいるからだよ。」


「どこかの会社のお方ですか?」


「いやいや、そんな大層な・・・いや、十分大層か。でもまだだけどね・・・」


「?」


「まぁ、この旅行は建前が慰安旅行だけど実質半分仕事、半分新婚旅行だからね・・・できればあまりあいたいとも思わないんだけれど、どうしても仕事柄ね・・・」


義男は申し訳なさそうな顔で茜に言った。


「いえ・・・ですが、お仕事のことでしたら私は・・・」


「いやいや、席をはずしてもらうほどのものでもない。あくまで私的なものだからね・・・それに、必ずしもここで会えるとも限らない。」


「ハァ・・・」


茜は訳が分からないとでもいいたそうな顔をしつつ、食事を続けた。


・・・すでに時刻はドイツ時間午後6時を回ったあたり。

そろそろ夕食時であり、仕事帰りの人々が一杯やるためにパブに集まってきている時間であった。


喧騒がよりいっそう激しくなっていく。


・・・不況であっても飲み屋というものはそれなりに繁盛するものだ。


普通の金持ちは実は余りお金を使ったりはしない。

お金のない人間ほどお金を使ったりする。


大体、お金のない人ほど飲む(飲酒)、打つ(博打)、買う(風俗)をよくする。

で、明けてみれば一文なしというのもまれに良くある。


宵越しの銭は持たないということは、万国共通なのだろう。


ドイツの敗戦ということと、それに伴う深刻な不況と言う「現実」から目をそらしたいからこそ酒を飲むのかもしれない。


義男は周囲のドンチャン騒ぎを横目で眺めながらそう思った。


(こんな世の中だからこそ、彼が現れるだけの土壌があったということか・・・)


この1ヶ月近く、ドイツを見てまわった義男は当時のドイツがどういう状況だったのかと言うことを文字通り肌で感じることができた。


膨大な賠償金、経済の混乱、クルップなどを初めとするいくつもの会社の倒産。


ドイツは先の見えない経済不況へと突っ込みつつあった。


尤も、この不況は必ずしも長く続いたわけではない。


というのも、ドイツにかせられた莫大な賠償金がその経済の好転に一役買ったりしたからだ。


この世界大戦で最も大きな被害を受けたのはフランスであろうといえるかもしれない。(マルクス主義の社会主義者達に支配されたロシアもそうだといえるが)

なにせ主戦場はフランスの国内だったのだ。

4年にもわたってフランス国内で続いたこの戦争はフランス国内に大損害を与えると同時に、アメリカからの莫大な借款を受けることとなり、フランスはその返済に追われることになったのだ。


かたや、最も美味しい思いをしたのはアメリカだろう。

欧州大戦では全くの無傷でかつ高い工業生産能力を生かして欧州に物を売りさばき、莫大な富を毟り取ったかの国では、あらたな需要を見越し、ズタボロになった欧州の復興需要を見込んで莫大な投資を行う。


その結果、ドイツ(賠償金)→フランスなど(借款返済)→アメリカ(復興投資)→ドイツ(賠償金)→…以後無限ループ…という資金の還流が発生したことで、一時期ドイツでの生活水準は欧州一にまでなったりするなど、それなりに経済は美味く回ることになった。


だが、この前提条件はアメリカからの投資が継続されれば・・・ということであった。


1929年の暗黒の木曜日から始まった世界恐慌はアメリカの欧州投資を停止させてしまう。その結果、大恐慌の嵐が世界中に吹き荒れる。


当然ながら先に挙げた経済の流れは断ち切られ、ドイツなどの欧州は再び不況のドン底に叩き落される。フランスなどは植民地との間の貿易を強化して・・・ということになる。


植民地を持っていないドイツ、イタリア、日本などの諸国は結果として軍や独裁者の台頭を許してしまう・・・そして、ドイツに現れるのは恐怖のオーストリア生まれの絵描き伍長・・・ということである。


これは、おそらく誰も今このときは考えていなかったのかもしれないが。


そんなことを考え流ら、ふと義男は腕時計を見た。

ある仲良くなったドイツ海軍の軍人から譲ってもらった中古の軍用腕時計であった。


「・・・始まらないな。そろそろだと聞いたんだが・・・」


「何が、そろそろですの?」


「ん?ああ・・・今日はやらないのかもしれないけど・・・」


「?」


時計を見ながら溜息をつく義男に茜は怪訝な顔をした。


「いや・・・まぁ、いいかな?・・・さて、そろそろ帰ろうか」


「え・・・ええ」


そう言って料金とチップを払って席を立とうとしたとき、不意にざわめきが大きくなった。


何事かと二人が店の入り口を見ると、数人の男が店に入ってくるのが見えた。


男たちの中に、髭をはやした30歳くらいの男が一人混じっていた・・・










今回はドイツビールについてのお話が主です。(短いですが)

ちょっとした前座といったほうがいいでしょうが・・・(更新遅いくせに我ながら何を言っているんだか)

自分、ビールが好きですので、ドイツといえばビールだろ的な感じでちょっと書いてみました。ただ、これも場所柄重要になってくるのですが・・・

本題は次のお話になります。


次は、あの人が出てきます。


後、アンサイクロペディアは大体8割くらい嘘ですので、信用なさらないように・・・面白かったから載せただけですので、詳しいことは、ウィキ先生にお尋ねくださいませ・・・(言い訳)

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― 新着の感想 ―
[一言] コロナ禍直前初めてロンドンへ着いて有名なパブへ入りビールを頂いたがどれもこれもしっかりと冷えてて美味しく頂けまました、イギリスのビールが生ぬるいのは都市伝説だったようです
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