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テンプレ

西暦1884年6月13日 


明治の文明開化真っ盛りのころ一人の男が誕生した。

彼の名は来島義男

ただの子供ではなく、21世紀の日本からの転生者であった。


職場からの帰りに一杯引っ掛けて酔っ払って歩いているところにテンプレ的にトラックに轢かれ


テンプレ的に神に会い


テンプレ的に転生し


テンプレ的に過去の世界だと気づき


「よろしい、ならば歴史改変だ。」とテンプレ的に厨二病めいた台詞を吐いて


テンプレ的に能力を開花させて周囲を驚かせ


で、テンプレ的に「山本五十六のブレーンになって太平洋戦争変えてやんよ!」ということで、海軍軍人を目指し、挫折した。



そもそもこの時代、軍隊はスーパーが十個くらいつくエリート組織であった。

いや、一般兵士ならばまだやりようはあったものの、士官ともなると帝国大学に入学するくらいの学力+キツ~イ軍務に耐え切れるだけの体力が必要であった。

おまけに毎年の入学する生徒の数は大体500人程度である。

確かに、海軍の軍備拡張計画の進行に伴って士官の採用枠は年々広がりを見せてこそいたがそれでも少なかった。

その小さな枠を狙って日本中から秀才ともてはやされた人々が押しかけてくるのである。

・・・正直、帝国大学に入るよりも難しい。

お陰で、兵学校に入学を目指すための予備校まで存在していた程の鬼畜振りであった。

そして、戦時中ならともかく平時においてはそんなに士官はいらない。(※そんな金あるなら設備投資にまわしたい。by海軍)

と言うわけで、江田島の海軍兵学校を目指した来島はものの見事にコテンパンにされてしまった。

彼は当時そこそこの学力などは有していたがそれでも全国からやってくる秀才たちには手も足も出ないレベルだった。

と言うのも、義男は前世からの記憶があるためほとんどまじめに勉強しようとはしなかったのだ。

おまけに運動は大の苦手であり、いつも平均以下の成績を雷撃機並みの低空飛行をしていた。

と言うわけで、自業自得なのだがぼこぼこにプライドをブッ飛ばされた来島は自分の限界を悟ることとなる。

自分は選ばれた存在だ!オリ主最強!とか、周囲の人間から見たらドン引きするようなそういう類の厨二病からの脱却に彼は成功したのだった。



それには彼が日本史と言うものを表面的にしか知らなかったこと。

あるいは知っていても部分的なものしか知らなかったこともまた彼が正気に戻ることを後押しした。

来島は転生前は普通のサラリーマンであり、一応日本の近代史は頭の中に入っていた。

だが、彼が頭に入っていたのはせいぜい大正時代以降から太平洋戦争まで。

それも、戦争関連のことが中心と言う有様であった。

つまり、まがうことなき軍オタだったのだ。

で、流石にこれはマズイ

と、ようやく気づいたのだ。

はっきり言って遅すぎである。


その後、正気に戻った来島は取り敢えず生きるために普通に就職することを考える。

と言う訳で、父の営んでいた大分県別府市のはずれにあった小さな造船所に就職し、10年ほど社員として営業および経理の業務を行った。

造船所といってもそんなに大きなものではない。

せいぜい漁船を中心に建造するどこにでもあるような小さな造船会社(笑)であった。

名を別府造船(株)という。

300トン前後の沖合い漁船を建造する船台が2つと

一応700トンクラスの小型商船が入れるドックが一つあるだけであった。

社員も来島を入れてもせいぜい200人にも満たなかった。


時は日露戦争が終わったころの日本。

一応戦争に勝利(実質的に引き分け)はしたが、賠償金は手に入らず、おまけに小村寿太郎によってハリマンとの南満州鉄道株売却契約もオジャンにされてしまったために戦時国債の支払いに汲々としている時期であった。



(さて、親父の造船会社に就職したのはいいけれど、どうする?このまま行っても歴史どおりに進むだけだし、かといってこんなちっぽけな造船所じゃやることもかぎられてくるんだよなぁ・・・)


来島は海軍入隊して大暴れ!といういかにも十代半ばの少年が夢見そうな夢は破れたがこりずに歴史を変える気でいた。

さすがに、数百万の人間が死ぬ暗黒の未来と言うものをみながら死ぬと言うのはいかに厨二病を乗り越えたと言え彼にはちょっと許容できなかったのだ


しかし自分には何が出来る?

こんな小さな会社の営業係長じゃぁ、やることに限りがある。

それに戦艦とかを作るには当たり前のことだが膨大な設備投資が必要だし・・・

・・・いや、待てよ?

あてならあるんじゃないか?


でもあれでもなぁ、幾らなんでもうちの会社にそんなことが出来るのかな・・・?

あの膨大な需要を供給できる設備に投資ができるのかな?



・・・ま、考えても始まらないしやってみるか。

どうせ一度死んだ身だ。

できたら儲けられるだけ、儲けさせてもらうさ。

損にはならないだろうしな・・・。



と言う訳で、来島はある計画書を書き上げて父の元へと向かった。


この行動こそが、彼が歴史を変えるための第一歩であるといえた。


さて、第1話何とかあげました。


この時代、海運は伸び盛りの業界でありました。

実際この話の後の数年後にはパナマ運河が開通し、そして第一次世界大戦・・・船舶需要は伸びに伸びております。

しかし当時の日本には十分な数の遠海航路の貨物船はありませんでした。

あっても外国からの傭船か中古品。

そのためにT型貨物船などが整備されたわけですが。

でもそれを整備してしばらくしたら第一次大戦後の不況

おまけに主人公の会社は九州のど田舎の一造船所

これはちょっとまずいですね

第二次大戦前に倒産しそうな感じがするのは私だけでしょうか・・・?

ちなみに我等が別府造船所は史実では幻の海軍大神工廠が検討されていたあたりに作ってあります。





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