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第三話


「か・・・買ってきましたぁあ・・・!」


みんなの記憶に新しい、青く、中身が見えないように配慮されたビニール袋。

俺は両手でしっかりと抱きながら、自動ドアから飛び出した。


「よくぞ舞い戻った、河野二等兵!!」

腕を組んで仁王立ちした歩。


「え・・・えっと・・・歩大尉さん?僕は無事任務を」

「誰が大尉だ!!私のことは中尉と呼びなさい!!」


「大尉ぐらいしかしらないんだもん・・・」

「私はリザさんみたいな、クールビューティー中尉なんだ!!」

「はいはい、分かった分かった」



「こらー!!スルーすんな!!」


怒り狂うハムスター。



「だからハムスターじゃない!!」

「はいはい、言われた通り買ってキタヨー。」

「中身は?」

「お望みの、成人向け『まじ百合』同人誌。サークル、みったん屋の新刊二冊とコミック百合娘。五月号ですよ~。中尉さん」

「うは~~~!!キタコレぇ!!」


僕の手から袋を奪い取ると頬ずりをし始めた。

※ここはアニメズメイトの真ん前です。


「百合娘。の五月号なんかは普通に女性向けの雑誌コーナーにあったよ?なんで僕に買いに行かせたの?」

「私、今制服だから・・・百合娘。ならまだしも、成人向けなんて売ってもらえないじゃないですか・・・。」


ああ、なるほど。

だから、制服じゃない僕にわざわざ買いに行かせたって訳か。

まあ、歩なら私服でも絶対に、売ってもらえないだろうね。


「それと・・・い、からデス・・・」


ぼそぼそと小声でつぶやいた。


「え?」

「だ・・・だから・・・怖い・・・からデス・・・。」


顔を真っ青にして言った。




「私も百合とか、最初は毛嫌いしてたんです・・・。『同性同士なんて』って・・・だから、他人がどういう風に思ってるかとか容易に想像できます。たとえ、こういうお店の店員さんにも、知られたくないんです・・・。」


歩の言ってることはよくわかった。


僕だって学校じゃアニオタってことは隠してなくても、(部活のことネ?クラスではアニオタなことも内緒だ!)腐ってるってことは隠してる。


最近はオタクって随分認知されて、肩身の狭い思いからは、解放されてきてはいるが、

やはり犯罪との関係性や因果関係なんて、取り上げられることもまだ多い。


特に同性同士もの。なんてのはな~・・・。



「私・・・何回もやめようって思いました。でも、やっぱこっちが好きなんです・・・」

「いいんじゃないの?」

「え・・・」

「いいじゃん、趣味なんだからさ。」

「・・・。」

「ほら、次は中尉さんの番デスヨ~。僕の欲しい有美先生の新刊『社長とKISS☆』と『ラグビー少年RYU』のアンソロ本一冊とBLCDの『官能作家彼氏』ね」

「か・・・かんッ・・・!?」

「ほ~らほら、早くいかないと、お兄さん怒るよ~」


右手をひらひら振ると、渋々歩は店の中に入って行った。

一応言っておくが、さっきから僕たちはアニメズメイトの真ん前で濃い話をしていたわけですよ、みなさん。




十分後、急いで買ってきたのか、歩は息を切らせながら帰ってきた。


「おお!!有美先生の新刊~~~❤」

「・・・。」


無言で歩は袋を突き出してきた。

顔を真っ赤にして、ものすごく怒ったような顔をしている。


カム着火インフェルノォォォォオオウ!!って感じか。


「恥ずかしかったぁぁ・・・穴が有ったら入りたいぃい・・・」


ずるずると地面に崩れ落ちる歩。


「男の人が・・・裸で・・・裸でっ!!」


涙目になりながら、喚き始める。


「先輩はMだと思ってたけど、全然違う!!Sだ!!ドSだっ!!百合的な意味のSならまだしもっ・・・!!!」


そういえば、歩は苦手なのか、部活でもなかなかそっち系の話には入ってこない。

そっち系の話ってのは18禁的な行為系なお話のコトだゾ!!☆

むしろ、この顔で話に入って来られてもお兄さん困っちゃうケドね☆


「百合的な意味のSって何?」

「ggrks!!」

「酷いッ!!」

「先輩」

「お?」


急にむすっとした顔で僕に向き直った。


「ありがとウ・・・ございました・・・。」





今まで見たこともないくらい・・・不細工な歩の顔がそこにはあった。




「歩ってそんなに不細工な顔してたっけ?」


この後、アニズメイトの前で、怒り狂うハムスターこと変な後輩に、小一時間ほど追い掛け回されたのは・・・言うまでもない。




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