第二話
あの後
驚愕して動けない僕たち→騒ぎを聞きつけ店員さん来る→
僕、女の子をひっぱって一緒に逃げる→近くのスギ屋に避難←イマココ
「イマココ!!じゃないですッ!!」
「うわぁ!!」
めっちゃキレられた・・・。
見た目と全然ちげぇな・・・。
彼女の名前はl幸原歩。
部活の後輩だ。
学校で会ったら、ちゃんと近づいてきて挨拶してく、礼儀正しい後輩。
いつもニコニコ笑顔を絶やさない。
そんなイメージだったんだがな・・・今の歩はまるで、怒り狂うハムスターだ。
「誰がハムスターですかっ!!私はハムスターみたいに小さくなんてありません!!」
「小さいじゃん。僕も身長高くないけど・・・歩、151cmくらいでしょ?」
「違います。もっとあります。」
キッ!!
うわ~こわっ・・・汗
「私は153cmもあります!!本当は153.1cmですが、随分身長は伸びました!!」
「・・・。」
「なんなんですか、その憐れむような目は!!」
「アハハハハハハ・・・」
「先輩・・・私の扱い、気を付けた方がいいですよ・・・」
急に、声が変わったのが分かった。
「え・・・」
「先ほど、先輩が出てきたのは・・・明らかにBLコーナーでしたよね?」
「っ!!」
「あれ?先輩、顔色が悪いですよ?どうかなさいまして?」
歩ってこんな子だったっけ?
目が笑っていない・・・。
冷や汗が背中を伝うのが分かった。
「ぐっ・・・」
「先輩って・・・受けっぽい顔してるな~って、常々思ってたんですけど。やっぱりそっちでしたか・・・」
にやりと口元を大きく歪ませて、歩は言い放った。
「先輩の欲しいBL本、買ってきてあげましょうか?」
そう、歩が言い放ったのは僕の秘密をばらす・・・
って、えっ!?
「マジでか!?」
「はい。」
「マジでいいの!?マジのマジ!?」
「はい、構わないです。」
歩が・・・歩が天使に見えた・・・。
「今まで、絶対男と付き合ったことないだろうな~とか思っちゃっててごめん!!
お前みたいな性格のいい女子に僕は初めて出会った!!きっといつか素敵な彼氏ができるよ!!うん!!」
「随分な言い草ですね・・・」
嬉しさのあまり、饒舌になった僕の口は、止められなかった。
「いや~~歩がこんなにいい後輩だったとは・・・お兄さん知らなかったよ!!」
「はあ・・・」
「なかなか、あの女子女子した感じのコーナーには入れなくってさ・・・金剛有美先生の新刊どうしても今日読みたくって!
僕んちの近所の本屋じゃ明後日まで並ばないしさ・・・いや~ホントに助かるよ!!ありがとう」
「もちろん、タダでとは言ってませんよ?」
「えっ?」
この間約20秒。
「先輩にも、買ってきてほしいものがあります」
「な・・・なんだよ・・・」
「『成人向けの百合同人誌』」
歩は堂々と言い放った。