08 第九王子の野望
●Side アルフォンス
緑と金を基調とした執務室で、俺ことアルフォンス・サン・ガルディアは通信魔法【セカンド・チャンネル】の接続を切った。
俺は第九王子。王位継承順位は数えたくもない。
大変遺憾なことに、兄上も叔父上も優秀な方ばかり。俺のような王家の血を引いているだけの下位の王子は、出家させられるか、運が良ければ跡継ぎになり得る男子のいない貴族家の入り婿だ。
俺にあてがわれた前の婚約者もそのような感じで、伯爵家の一人娘だった。
家柄こそ伯爵家だが、大して美しくもなければ賢くもない。魔力こそ多少恵まれていたようだが、令嬢としてのマナーも身についていないような愚鈍な女だった。
こんな女が俺にお似合いだと、自分の価値のなさを見せつけられているようで、顔を合わせるたびにイライラした。
だから婚約破棄を突きつけてやったときはせいせいした!
思惑通りに初代国王の像を壊してくれたときは、笑いがこらえきれなかった。
あれは、わざとヒビを入れておいた偽物だ。
いざというときは突き飛ばしてぶつけてやろうと思っていたが、期待通りにドレスの裾を踏んでくれた。神に感謝したい。
うまくことが運んだおかげで、借金を背負わせ、あの女の身ぐるみを剥いでやることができた。自分の策謀の冴え渡りっぷりが恐ろしい。
あの女は、何もない辺境送りになった以上、この先死刑になるよりも辛い一生を送ることになるだろう。それでこそ、足を踏まれるのに耐え続けた甲斐があるというものだ。
「ああ、愛しいリリア。俺の天使」
俺はリリアの肖像画を見つめる。
不思議だ。彼女と会うまでは、俺はもっと冷静な男だったはずだ。
だが、彼女の甘い声を聞くと、頭が痺れて、全ての判断が「彼女のため」に塗り替えられていくような……。
いや、これこそが「愛」なのだろう!
画家どもは本物のリリアの魅力を描き出せるほどの腕を持っていないようで、いくら描き直させても、出てくるのは似ても似つかぬものばかり。これは何枚も描かせた中でやっと出てきた、少しはマシと思えるものだ。
彼女のユニークスキルは【聖なる癒天使猫姫】。わかりやすい【聖女】ではないことは気になるが、あのように愛らしく優しい彼女が聖女でないわけがない。パレード以降、リリアの人気はうなぎ登りだ。聖女の格と、民人気という世論があれば、決してその夫となる俺をないがしろにはできまい。
俺は下位王子のようなつまらない立場で終わる男ではない。
もっと、もっと成り上がってやる――!
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