55 歓喜の王都と魔王復活?!
【朗報】影の商人クロウリー、支援物資を大量投下中!
12:名無しの騎士
おい、夢を見てるんじゃないか!?
中央サン・アリア区の大聖堂に、あのペストマスクの商人クロウリーが現れた。
「領主様からの贈り物だ」と言って、魔法箱から信じられない量の物資を無償で置いていきやがった!
25:絶望の衛生兵
>>12
こっちにも来た! ポーションだ!
最新の丸薬タイプや、ドラゴンの血を煮詰めたような超回復ポーションが山ほどある!
一粒飲ませただけで、さっきまで死にかけていた仲間の傷が塞がった。
これ、王都の最高級ポーションより遥かに効くぞ……!
48:防衛線の魔術師
見てくれ、この「水瓶」に入った大量のポーション!
泡だらけで不気味だが、スカンピア・ブルーミントの強烈な香りがする。
一口飲んだら、枯渇していた魔力が一瞬で溢れ出してきた。
おかげで突破されかかっていた東門の戦線を押し戻せた。これを作った奴は神か!?
49:名無しの錬金術師
>>48
調合初心者がポーション瓶を節約するために、水瓶に製作物を溜めておくことはままあるよ。
それを作った奴はたぶん新米だ。
どうであれ非常事態に大量供給GJ。
72:名無しの騎士
盾だ! ドラゴンの革で作られた大盾が配られた!
ワイバーンの炎をまともに受けても、煤ひとつつかない。
ドガンとかいう刻印があるが、こんな名工がまだこの国にいたのか?
殿下がバッグにしたあの革を、誰かが「命を守る盾」にして届けてくれたんだ!
115:飢えた避難民
飯だ……温かい飯だ……!
できたてアツアツのカツに、モツ煮込み、肉の串焼き……。
見たこともないデカい蜘蛛の脚みたいなのも入ってるが、死ぬほどうまい!
食べてるそばから筋肉がミシミシ鳴って、力が湧いてくる。
これなら魔物なんか怖くない、俺たちだって戦えるぞ!
230:名無しの騎士
支援物資の出所がわかった。「スカンピア」だ。
辺境に追放されたはずの、あの「不運令嬢」ゼジリア様が送ってくれたんだ。
中には村で採れた「聖女カブ」や燻製、塩まで入ってる。
自分たちだって大変なはずなのに、王都を……俺たちを見捨てなかったんだ……。
315:元・王宮騎士
アルフォンス殿下、掲示板を見てるか?
あんたが「ドブ溜め」と呼んで蔑んだ場所から、王都を救う物資が届いたんだ。
あんたがリリアのために宝石を買い漁っている間に、ゼジリア様は俺たちの命を買ってくれたんだよ!
468:名無しの冒険者
ポーションを飲んだ瞬間に、折れていた足の骨がバキバキと音を立てて繋がった!
痛みで叫ぶ暇もなかった。……おい、これを作った奴は誰だ? 俺たちはまだ戦えるぞ!
580:名無しの市民
「聖女カブ」を食べて魔力が戻った魔術師たちが、次々と結界を張り直してる。
空のワイバーンも、ドガンさんが作った「ドラゴンの合成弓」で撃ち落とされてるぞ!
反撃開始だ! スカンピアに、ゼジリア様に報いるために、この街を守り抜くぞ!!
●Sideリリア
「【闇魔法】、【次元歪曲】」
封印の鍵を盗み出すことに成功し、王都を抜け出した私は「ガリア大坑道ダンジョン」の最下層へやってきた。
ここは王都から最寄りのダンジョンで、すでに人間たちが撤退していたから都合がよかった。
龍脈の一番の要所は王都のお城だったけど、あそこは地上。いくら魔力があったとしても魔素が薄すぎる。
魔王さまを復活させる場所は、魔素の濃密なダンジョンの深部でないと都合が悪かった。
魔素は魔力を媒介・放出する物質。魔素と魔力の両方がないと、魔法生物の肉体は生まれない。
かつては、ドワーフたちが掘り進めた、活気ある場所だったこの坑道。実は大量の魔素が流れる、主要な龍脈がぶつかる場所であり、今は多すぎる魔力で紫色の煙が立ちこめている。
氾濫でモンスターを吐き出し尽くした後で、なんの生き物の気配もしない、空っぽの領域。だけど今の私にとっては素敵な花園と同然に見える。
これほどまでに魔王さまの復活に適した場所はないわ。
いよいよ、偽りの聖女ごっこはおしまい。もう馬鹿王子に媚びを売る必要なんてないわ。
私の真の主がようやく目覚めるのだから!
「お目覚めください、魔王さま!」
私は封印の鍵を地面に打ちつけた。
中に封じられていた魔王さまの魂が、ダンジョンに満ちた魔力を吸収していく。
そこに私が人間たちや王都の結界から奪った魔力も加えていく。
大量の魔力によって、周囲の魔素を変質させる。魂を中心に凝集した大量の魔素が肉体を再生させ、魔王さまは蘇る――はずだった。
そこに現れたのは、強大なドラゴンなんかじゃなく、三十センチくらいの卵だった。
「どう……して?」
どうしてどうしてどうして。
なぜ、こんな幼体未満の未熟な体しかできないの?
魔素も魔力も十分だったはず。
「【深淵を覗く目】」
私は慌てて探知の魔法を発動する。
自分に残っている魔力を空っぽになるほどに使って、広域に、詳細に大地を探っていく。
その結果わかったのは、どこかのタイミングで王都への魔素の流入が止まったのかもしれないということ。
魔素も魔力も、予想の半分くらいしか溜まってない!
「かなりの割合で魔素と魔力が奪われている!?
いいえ……他の場所に流れた!?
この減り方、まるで『エンシェントドラゴン級の魔物』が復活したような……」
まさか。いつ? それともいつから?
私は血の気が引くのを感じた。
探知の魔法は魔力を使いすぎるから、こまめに発動することはできなかった。
最後に使ったのは、去年の夏ごろだったかしら。
思い当たったのは、最悪の可能性。
「まさか、誰かが上流の『龍脈の要所』に『エンシェントドラゴン級の魔石』を設置したとでも言うの?」
エンシェントドラゴン。
魔王「ブラックエンシェントドラゴン」を筆頭とする、五色の竜たち。
かつてこの大陸を支配していた伝説の存在。
魔王さま以外のドラゴンは、遙か昔に人間に討たれたはず。
もしかして――その魔石が現存していた?
う、嘘よ!
万が一、魔石が残っていたとしても、肝心の「エンシェントドラゴンの復活の方法」、龍脈の要所に置いて魔石に魔素と魔力を吸収させるなんてやり方は、人間にはわからないはずよ!
勘づいていそうなのは、五百年前にドラゴンを討伐した当事者くらいだけど、念には念を入れて、彼らの家系の現当主はみんな「不慮の事故に見せかけて殺した」はずなのよ! 秘密が漏れているはずはない。
と、いうことは、つまり。
「『偶然』――だとでも言うの?!」
偶然、どこかにエンシェントドラゴンの魔石が保存されていて。
偶然、誰かがその魔石を持ちだして。
偶然、私がチェックしなかった期間中に、龍脈の要所に魔石が落ちた。
そんな奇跡が、起きるはずないわ!!
「うぐっ……」
魔力が枯渇した。
視界が暗転する。でも、魔王さまの卵だけは守らなくては。
私は卵を抱いて、意識を手放した。




