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婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


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47 思わぬ強敵との遭遇ですわ!

 私とヴィオはドガンさんの後ろについて、ダンジョンへと来ていました。

 ドガンさんは第二層に鉱脈を見つけたそうです。


「いい金属の鉱石ですの?」


「いや、普通の魔鉄じゃな。じゃが、安価な武具や消耗品が売れ筋じゃとペストマスクが言ったじゃろ。ちょっと大量生産しようかと思っての」


 ドガンさんもいろいろ考えてくださっているのですね。

 私の目的の薬草は、比較的どこでも手に入ります。ドガンさんが採集している近くで、私とヴィオも必要な素材を探しました。


「おぉ、コイツはミスリルか……。しかし最近、レア素材が出やすくなっておる気がするのう」


「いいことではないんですの?」


氾濫(スタンピード)の前にこういう現象が起きることがあるんじゃ。ドラゴンの出現といい、不穏なことが続いとるじゃろ」


「それはそうですわよね。弱いモンスターの数も、相当間引いているはずなのに減った感じがありませんし」


 私はガヴさんの言葉を思い出しました。

 このスカンピアに、何か悪いことが起きそうな予感がします。


 夕方近くになって、そろそろ帰ろうと思ったころです。

 私たちは、そこにいるはずのないものに遭遇しました。


 体高は二メートルを超えるくらい。金属質な、緑がかった黄色の鱗を持つ巨体。

 太く力強い後脚と、長大で棘のある尻尾。

 そして緑色の大きな双眸が、爛々と私たちを睨みつけています。

 やや小ぶりであり、色も違いますが、この姿には見覚えがありました。


「おい……おいおいおい! イエローレッサードラゴンじゃと!?」


 ドガンさんが慌てたように言いました。


「たたたた、大変ですわ! 村に逃げて、応援を呼びましょう!」


「いや、わしらはあのときよりレベルが上がっておるし、装備もよくなっとる。勝てるかもしれん」


「しかし、危険では?」


 ヴィオはドガンさんの提案に異論を唱えます。


「こんな浅い階層におるドラゴンを放置して、外に出てこられたら大変じゃぞ!?」


 ドガンさんの言う通りです。ここから村まで、私たちの足で歩いて三十分もかからないのですから。


 攻略法はわかっています。動きを止めて、逆鱗を貫く!

 私たち三人でやりおおせなければ……。


「やれるだけ、やってみましょう……!」


 真っ先に動いたのはヴィオです。パイプから煙が出ていたドラゴンを拘束しようとします。が、ドラゴンの魔力が風を生み出し、煙を散らしてしまいます。


「くっ……イエローレッサードラゴンの属性は【風】。煙とは相性がよくないようです」


「まだ手はある! ダメージをガンガン与えて怯ませるんじゃ!」


 ヴィオはナイフでドラゴンとやりあい、回避盾の役割をしていてくれます。ドラゴンは尻尾の棘でヴィオを斬り裂こうとしていますが、【身体強化】を使用したヴィオはその攻撃を見切っている様子。


「紅蓮の魔力よ、我に応えよ! ――【燃焼(イグニッション)】」


 私は新しく作っていただいた、ブルードラゴンの魔石を先端に埋めた杖で魔法を発動します。

 

「ギャアアッ!」


 よし、ダメージは通っていますね!

 ドガンさんもハンマーを振り回し、ヴィオとともに前衛をしてくれています。


 ヴィオもドガンさんも、徐々に負傷が増えてきています。

 私もガンガン強めの攻撃魔法を詠唱します。


「清き水よ、穢れを包み込め! ――【水球(ウォーターボール)】」


「グォォオオオン!!」


 水球に頭部を包まれ、呼吸を塞がれたドラゴンが、苛立ちと共にその巨体を激しく震わせました。

 次の瞬間、ドラゴンの周囲に真空の刃が幾十にも発生し、私の魔法を内側から引き裂いたのです。


「危ないですわ!」


 弾け飛んだ水のつぶてが、散弾のように周囲を襲います。私は思わず杖を盾にするように構えましたが、そこで私のDEX2が悪さをいたしました。

 濡れた足元に滑り、杖の先端が変な角度で岩の隙間に突き刺さってしまったのです。


「あだっ!? ま、また転んで……!」


 しかし、その瞬間、私のユニークスキル【災い転じて福と為す(ミラクル・ミステイク)】が発動しました。

 岩に突き刺さったブルードラゴンの魔石から、制御を失った莫大な魔力が地面を流れます。それが地表を伝わり、ドラゴンの足元を凍結させました。


「グルゥ!」


 風を操るドラゴンの足元が凍りつき、その自慢の俊敏さが奪われました。


「ナイスじゃ、嬢ちゃん! これなら逃がさんぞ!」


 ドガンさんが重厚な『軽銀の剛甲アルミナイト・ガントレット』を叩き合わせ、跳躍しました。

 そのハンマーには、ドワーフの執念とも言える魔力が凝縮されています。


「【隕石落とし(メテオ・ストライク)】!!」


 ドガァァアン!!


 ドラゴンの脳天に、文字通り隕石が落ちたかのような衝撃が走りました。

 昏倒し、無防備に晒されたその「逆鱗」。

 ヴィオの銀髪が、風を切り裂いて舞いました。


「……仕留めます」


 彼女の手には、ドガンさんが打ったナイフがありました。

 それが抜群のコントロールで投擲され、吸い込まれるようにドラゴンの顎の下へと突き刺さり、命の灯火を断ち切ったのです。


 激しい戦いの後には、ドラゴンの巨体と、私たちの荒い息遣いだけが残りました。

 ヴィオが乱れた服を整えながら、倒れたドラゴンを見下ろしてつぶやきます。


「……お嬢様、やはり異常です。この個体、小さいながらも、やはり一端のドラゴンでした」


「わしも同感じゃ。本来なら五層にいてもおかしくない強さ……。ダンジョン全体が、何かを『吐き出そう』としておるような、嫌な予感がするのう」


 ドガンさんの言葉に、私の胸のざわつきは止まりませんでした。


 私たちは三人でイエローレッサードラゴンを倒しました。

 決して楽な戦いではありませんでしたが、それでも成長を感じられる善戦でした。

 それは朗報でありながらも、第二層にドラゴンが出現したという、凶報でもありました。


「すぐに村へ戻りましょう。私たちの魔法鞄には、このドラゴンを収納できる容量はありません。応援を呼ばなくては」


 ヴィオが言いました。


 私たちはドラゴンの巨体を解体する時間すら惜しみ、最低限の素材だけを魔法鞄に詰め込んで、急いで地上へと戻りました。


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