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婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


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45 わくわくドキドキ! 買い取りタイムですわ!(後編)

 そしていよいよ、ブルードラゴン素材と、その加工品たちの番になりました。

 まるごとは持って来られませんので、解体済の一部をサンプルとしてクロウリーさんにお見せします。


「このポーション、お嬢様が煮詰めるときに居眠りして魔力を垂れ流したとおっしゃっていましたが……見てください、瓶の中で薬草の魂が『早く誰かを救わせろ』と脈動しています!」


 ぎゃーっ、フレルさん、よりにもよって、それを一番に出しますの?

 それは私が作った、ドラゴンの血を使った特級ポーションです。ランクの高いアイテムを調合したほうが熟練度があがりやすいとのことで、挑戦してみたはいいものの、案の定失敗したのです。


「……フレルさん、気持ち悪いのでお嬢様を拝まないでください。クロウリーさん、その『脈動する劇薬』、いくらになります?」


「ふふふ……。王都の騎士団長が、自分の退職金を前借りしてでも欲しがると言えば、その価値がわかるでしょう」


 ヴィオがさげすんだような顔で言いましたが、クロウリーさんはまさかの反応です。

 えぇ!? こんなものがお金になりますの?


「【鑑定】の結果では、『生きてさえいればどんな重傷であっても快癒できる』と出ています。それほどの負傷をすることはめったにありませんから、当然治験はされていないのでしょう?」


 クロウリーさんが言います。ええ、その通り、治験なんかしていません。これを誰かに使うことなんて、とてもとても……! 捨てたと思っていたのに、フレルさんが隠し持っていたのですから!


「ほら! 僕が言ったのと同じでしょう?」


 ええ、たしかにフレルさんも「女神の生み出した聖なる逸品」とかなんとか言っていました。ただ、誰もが聞き流していたのです。


「クロウリーさんもそうおっしゃるなら、価値のあるものなのでしょう」


 ヴィオがめちゃくちゃ悔しそうです。

 私も信じられないような思いです。


 次は、ドガンさんの作品です。


「こっちはドラゴンの武具じゃ。グリーンレッサードラゴンのものはこっちの箱、ブルードラゴンのはこっちじゃ」


 一時期はリゾート建築の仕事で忙しかったドガンさんですが、リゾートが完成してからは、ドラゴン装備の制作に没頭しておられました。

 箱の中には革を張った大小の盾や、ベルトでサイズが調節できる胸当て、そして木材とドラゴンの骨や腱とを組みあわせて作った合成弓(コンポジット・ボウ)。魔石や鱗を使った杖や護符もあります。


「これは……素晴らしいですが」


 クロウリーさんは真剣な口調でおっしゃいました。


「そのブルードラゴンの鱗と革、ドガン殿が作った武具……そしてその『死者をも躍らせる』完快ポーション。これらは今すぐ売ってはいけません」


「えっ? でも、これを売ればすぐにでも借金が完済できるくらい稼げそうですのに」


「商売はタイミングです。今、王都は飢えています。混乱が極まり、皆が『本物の救い』を求めて叫び声を上げるそのとき……大オークションの場でこれを披露するのです。

 そうすれば、王国の国家予算をひっくり返すほどの値がつくでしょう」


 私は情勢を思い出します。今は贅沢品ばかりが尊重され、騎士団や冒険者ギルドの予算は厳しく絞られているそうです。

 なので、売れ筋は安価でランクの低いものか、間にあわせの消耗品ばかり。

 需要はあるのに、お金はない。つまり、ない袖は振れないということでしょうか。


魔法箱(マジックボックス)をお貸しします。容量は縦横奥行き十六メートル、時間停止つきです。これならブルードラゴンの素材を劣化させることなく、売りどきを待つことができます」


 クロウリーさんが、豪華な宝箱型の魔導具を出しました。

 すごいです! この魔導具の価値は一億ゴールドはくだらないはず。

 こんなものを貸してくれるなんて、私たちを信用してくれているということ。


「わかりましたわ。まだ借金の返済期限まで二ヶ月はありますもの。待ちましょう」


 私が了承すると、クロウリーさんは今回の買い取り金額を査定してくれました。

 それにリゾートや、村で直接販売したものの売り上げからの私の取り分や、前回オークションに出した香木やグリーンレッサードラゴン素材の落札価格から、オークションハウスの取り分、クロウリーさんの仲介料などを引いた金額などを計算します。


「返済に充てられるのは、金貨にしておよそ七千五百。つまり残りの借金は、金貨千枚ですわね」


 完済まであと一歩! 途方もない金額と思っていましたが、ようやく終わりが見えてきました。


「あのときは、一生お日様の下を歩けないと思っていましたわ……」


 私は追放された日の、あの冷たい風と絶望を思い出し、ヴィオの手をギュッと握ります。


「一人で鉱山送りになる覚悟をしていましたけれど……今はこんなに心強い仲間がいますのね」


「お嬢様、現在の稼ぎペースなら完済は夢ではないでしょうが、タイミングがシビアです。念のため、売れ筋商品の生産は油断なく続けていきましょう」


 ヴィオが気を引き締めるように警告します。

 しかしクロウリーさんは私を安心させてくれる申し出をしてくれました。


「いざとなれば、ブルードラゴンを担保に、私のポケットマネーから貸し付けしてもよろしいです。あなたにはそれくらいの支援をする価値がありますからね。では、次はまた一ヶ月後にお会いしましょう」


「それは助かりますわ! ……ええ、ちょっと早いですが、借金の返済期限を考えたら、まめに買い取りに来ていただけると嬉しいですわ」


 そうしてクロウリーさんは、また何もない物陰へと、ヌルリと消えていきました。


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