40 リベンジ! ブルードラゴン戦ですわ!(後編)
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「ガムルのウキじゃ! よし、起動じゃ!」
海面に浮かび上がったガムルさんの合図を見つけるやいなや、ドガンさんはとっておきの大型魔導具を動かします。
これは、巨大な巻き上げ機です。
巻き上げ機の本体はダンジョンの岩盤に金属の杭で固定されていてとても頑丈です。これでもって、ガムルさんがドラゴンの体内に打ち込んだ錨につながっている鎖を引っ張り上げるのです。
「ドラゴンのやつが力比べをするのは、このダンジョンの地盤そのものじゃ! かかかっ、何分持つかのぉ!」
ドガンさんはハンドルで巻き上げ機の角度をちょいちょいといじっています。
その様子は歴戦の釣り人のようです。
「ここにきてバラしたら台無しです。私も手伝います」
すでに息を整えたヴィオが、ふぅっとパイプをふかします。
煙が鎖にからみつき、頑丈さを増します。
「そろそろ頃合いでしょうか。お嬢様、お願いします」
フレルさんが強化ポーションを一気飲みします。
「わかりましたわ! 治癒魔法、【魔力譲渡】!」
私は杖の先をフレルさんの背中にくっつけ、MPをフレルさんに供給します。
フレルさんは自身の上限を超える魔力を、一時的に体に保持することになります。
「フレルさん、魔力が溢れてしまいましたらごめんなさいまし!」
私はフレルさんの様子を見ながら徐々に魔力を渡していきます。今、フレルさんの体内では膨大な魔力が暴れ狂っているはずです。フレルさんの鼻から一筋の血が垂れます。
「大丈夫です、宮廷薬師時代の『締め切り当日の深夜三時』に比べれば、この程度の脳への負荷、むしろ心地よい刺激ですよ……!」
【社畜】スキルが生えるような職場って、このような状況が日常茶飯事でしたの?
大人になるのって怖い!
「これですよ、この過負荷! 理不尽な要求をされてこそ、薬師としての真価が問われるというもの……! さあお嬢様、もっとです! 僕を完膚なきまでに使い倒してください!!」
「も、もっとですね……! わかりましたわ!!」
「アァッ!! お嬢様の魔力が、血管を濁流のように駆け抜けていきます……! ああ、これ、最高級の覚醒ポーションを原液で点滴されている気分です! 視界が三倍速に見える! 僕、今なら一週間不眠で新薬を開発できる気がします!」
「実況はいいですから」
フレルさんが苦しみながらもどこか恍惚とした顔をしているので、ヴィオがめちゃくちゃ嫌そうにしていますね。
私は恐る恐るたずねます。
「大丈夫ですの、フレルさん? 爆発しませんか……?」
「爆発? させませんよ。そんな勝手な爆発は認められません……。僕の『社畜』スキルが言っています、『納期までは倒れるな』と!」
そうしている間に、ブルードラゴンの頭が海面からにゅうっと飛び出てきました。
ガムルさんも息切れしながら磯へと上がっていらっしゃいます。
「ぬおぉ!! 急げエルフ! いまが好機じゃぞ」
ドガンさんがタイムリミットを伝えます。私は慌てて魔力の流量をドバッと上げてしまいました。
フレルさんの体から湯気が立って、パチパチと魔力の燐光が散ります。
「ひぎゃっ! 蛇口が……、魔力の蛇口がバカになりましたわ〜! 止まりませんの!」
「うぐっ……! 宮廷時代の『三徹明けの栄養ドリンク一気飲み』に比べれば、この程度の負荷……! 僕の【社畜】スキルが『まだ働ける』と叫んでいますよォ!」
細い体をはち切れさせそうな、およそ七十万という規格外の魔力が、フレルさんの丁字の聖杖によって綿密に織り上げられ、一撃必殺の大魔法として昇華します。
「【風魔法】、【破壊の雷霆】!!」
フレルさんが放った雷撃は、ドガンさんの巻き上げ機の鎖を伝ってドラゴンへと炸裂します。
私の魔力と、姉妹同然に育ったヴィオの魔力は、相性バッチリです。鎖がまとっていたヴィオの魔力が超伝導の回路となって、ドラゴンの体内へと雷を直撃させます。
「ギャオオオォォォォォンッッ!!!」
海面から出たドラゴンの上半身が激しくけいれんし、煙が上がります。喉の一部は内部から焦げたようになっているのが、外側からもわかりました。
バシャァァーン!!
ドラゴンが巨体を海面に打ち付け、ぷかぁと浮かび上がってきます。
その姿は、どうみてももう生きてはいません。
同時に、汗だくで鼻血まみれのフレルさんも倒れました。
普段は温和なエルフの顔が、過剰な魔力で真っ赤に染まり、鼻血を拭う余力すらないようです。
ですがその瞳は、納期を死守した社畜だけが持つ、不気味なまでの達成感に満ちていました。
「……ふふ、見ましたか。定時ぴったりで討伐完了ですよ……」
フレルさんはなんだかとっても満足げです。
「いかん、ドラゴンにあがってきたクラーケンがたかっておるぞ!」
「こしゃくなイカですね。倒しましょう」
「おっイカのおかわりか、ありがてェ!」
ドガンさんとヴィオとガムルさんが、ドラゴンの回収と他のモンスターの掃討に向かいました。魔力が枯渇した私は、それを見守っておりました。
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ブルードラゴンを討伐し、しっかり巣にあった万年氷も回収したあと、私たちは村に戻り、再びのドラゴン討伐の報を伝えました。
「さすがはお嬢様ですじゃ」
ふふふ、ガヴさんはびっくりしておられますね。
「こうもうまく行くとはのう」
「本当なら詰めの風魔法は、百人程度の魔術師による儀式魔術で行うんですけどね。二人でやれたのはお嬢様の魔力量があってこそです」
皆さま、嬉しそうです。この間のグリーンレッサードラゴンの収入は莫大なものでした。
今回はさらに上位のモンスターです。
翌日、村では先勝パーティーが行われました。
広場に屋外用のテーブルやベンチを置いて、みんなで海鮮料理を食べるのです。
「おまちどう。深海の王の黄金スープだ」
ガムルさんが、テーブルにお皿を置きます。
使われているのはブルードラゴンのヒレです。硬かったヒレは、コラーゲンが溶け出して「プルプル」かつ「トロトロ」の絶品食感になっています。
「面白い食感ですわ!」
「ドラゴンのヒレは煮込めば煮込むほど魔力がスープに溶け出す。こいつを一口すすれば、筋肉の細胞ひとつひとつが『歓喜の咆哮』を上げるぜ!」
「濃厚なドラゴンの魔力が食材と調和しています。この一皿で、エリクサーなみの効能がありそうですよ!」
フレルさんがそうおっしゃるなら、ただおいしいだけでなく、体にもいいのでしょうね。このメニューのチョイスは、ガムルさんの優しさなのでしょう。フレルさんの体はズタズタになっているはずなので、これで元気になってくれるといいですね。
「王都の贅沢なだけのフカヒレとは格が違う。これは『命』を食らうためのスープだ」
ガムルさんは胸を張ります。本当に彼の料理はいつもおいしいですね。
「バッグや犬の服なんかじゃねぇ。これこそが本当の『命』の使い方だ……!」
ソレンさんは泣きながらスープを飲んでいます。
「お前は見込みがあるな。これも食え」
ガムルさんはまた何かをソレンさんにあげています。
「あれ、なんでしょう?」
私は隣にいたドガンさんに耳打ちします。
「あれはわしももらった。生のイカの身にワタを和えた『塩辛』という料理じゃ。うまいし、酒には合うんじゃがのう」
ソレンさんはガムルさんに、完全に仲間だと思われていますね。
「こちらも食べてみてください。魚の燻製のサンドイッチですよ」
アニーさんが持ってきてくれたバスケットには、小ぶりのパンが入っていました。
パンには切り込みがあり、その切れ目には、魚の燻製とチーズ、葉物野菜が挟まれています。
また別のパンには、蒸してほぐした魚を、クリーミーなドレッシングで和えたものが挟まっていました。
「焼いたお魚もおいしかったですが、燻製はまた味がかわりますね」
ヴィオは燻製のサンドイッチが好みだったようです。
「具材のバリエーションが豊かで、こんなに味変されては無限に食べられてしまいますわ〜!」
アニーさんのお料理は素朴で素材を活かしつつ、手が込んでいてほっこりします。
お弁当にもよさそうですね。次のダンジョン探索では、これをリクエストしようかしら?
「リゾート施設の資材は揃った! ドラゴン素材も手に入れた!! スカンピアはもっと豊かになるぞ」
ドガンさんは杯を掲げます。
私も嬉しくなって、同じように杯を上げました。
【ゼジィ】
レベル:14→17
HP:51→60
MP:701,384→880,204
STR:4
VIT:7
INT:98→115
DEX:2
AGI:4
LUK:999
スキル:
・ユニーク
【災い転じて福と為す】
失敗行動が高確率で「良い結果」に変換される。
・一般
【火魔法lv7】【治癒魔法lv4→5】【身体強化lv3】【浄化】【水魔法lv2】
称号獲得:『魔力タンク』
【ヴィオ】
レベル:17→20
HP:990→1,020
MP:125→154
STR:60→66
VIT:62→65
INT:50→55
DEX:91→128
AGI:129→157
LUK:22
スキル:
ユニーク
・【紫煙の支配者】
吐き出した煙の成分や形状を自在に操る固有魔法。
・一般
【上級投擲術lv2】【身体強化lv9】【暗視】【短時間睡眠】【気配遮断lv1】
【ドガン】
レベル:50
HP:3,650
MP:210
STR:890
VIT:972
INT:152
DEX:1,250
AGI:42
LUK:121
スキル:
ユニーク
・【超速加工】
資材さえあれば、一瞬で加工・建築を行う。
・【構造解析】
対象に魔力を浸透させることで、建物や道具、あるいはダンジョンの構造を解析できる。
・一般
【上級槌術lv2】【上級鍛冶lv3】【上級建築lv3→6】【縫製lv1→2】【鑑定lv5】【身体強化lv1】
【ガルム】
レベル:26→28
HP:3,770→4,200
MP:180→200
STR:680→755
VIT:297→302
INT:91→96
DEX:185→198
AGI:97→105
LUK:41
スキル:
・ユニーク
【暴食の探求者】
食事をすることで一時的なバフを得る。バフ内容はメニューによって変わる。
・一般
【解体lvMAX】【斧術lv8】【火耐性lv5】【毒耐性lv8】【鑑定lv3】【上級調理lv1→2】【食品加工】【身体強化lv1→2】
【フレル】
レベル:60→61
HP:920
MP:12,500→12,750
STR:35
VIT:36
INT:1,580→1,610
DEX:621
AGI:96
LUK:65
スキル:
・ユニーク
【緑の声】
植物の感情や状態を理解し、その生長や特性を最大限引き出す。
・一般
【水魔法lv9】【風魔法lv7→9】【調合の匠】【鑑定lv8】【社畜】【身体強化lv1】【限界突破】New




