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婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


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04 突撃! スカンピア村の晩ご飯

 地上に出た私たちを出迎えたのは、骨まで凍みるような晩秋の寒風でした。

 鉛色の空の下、色あせた草原の先に、いくつかの建物が身を寄せ合うように建っています。


「あれが……スカンピア……」


 言葉を失いました。

 家と呼ぶのも躊躇われるような、ボロボロの小屋。屋根は抜け落ちかけ、壁には穴が開き、枯れ草や泥で必死に補修された跡があります。

 これはとても領都と呼べるものではありません。村です、寒村です。

 その村全体が、まるで灰色に塗りつぶされたようでした。


「ようこそ、我が領地へ。……と言いたいところですが、これは予想以上ですね」


 ヴィオが珍しく、声を低くしました。

 私は伯爵家の人間でしたのに、領地がこんなことになっていたなんて、何も知りませんでした。

 そのとき、一軒の小屋から、枯れ木のように痩せた老人が出てきました。彼らは村長のガヴさんとその娘アニーさんと名乗ります。

 ガヴさんは私たちを見ますと、泥のついた服のまま、地面に膝をつきました。


「おぉ……なんと、新しい領主様がいらっしゃるとは。何のもてなしもできず、申し訳ございません……」


 村長さんの案内で、私たちは「領主の館」へと向かいました。

 館とは名ばかりの、少し大きな平屋の木造建築です。

 中に入りますと、風がヒュオオオと通り抜けていきました。窓ガラスなどあるはずもなく、木の板が打ち付けてあるだけです。


「寒いです……」


「お嬢様、これを」


 ヴィオが自分のショールを私にかけてくれます。


 そのとき、私のお腹から「ぐぅぅ~~」と情けない音が鳴りました。

 人心地ついたからでしょうか。私は急に空腹を覚えます。すると、村長の娘だというアニーさんが、申し訳なさそうに木の器を差し出しました。


「あ、あの……これしかありませんが、よかったらどうぞ」


 出されたのは、少し濁ったお湯のようなスープと、黒くて硬いパンの切れ端でした。

 貴族への礼にかなっていない行動をヴィオがとがめようとしましたが、私はそれを制し、アニーさんの好意を受け入れることにしました。感謝してパンを一口かじります。


「……!」


 ガリッ、という音とともに、口の中に広がったのは、土の匂いと、ザラザラとした繊維の感触。

 飲み込もうとしても、喉に引っかかって痛みが走ります。


「これは……」


「……おがくずと、乾燥させた苔を混ぜて焼いたパンです」


 アニーさんが悲しげに目を伏せました。


「今年は特に冷害が酷く、作物は全滅でした。食べられる草も採り尽くしてしまい……今は、加工して毒を抜いた苔や、木材の粉を混ぜて、なんとか腹を膨らませているのです」


 スープのほうも、ただのお湯に塩と香草を少し入れただけのものでした。

 ヴィオが、鋭い眼光でスープを見つめ、静かに言います。


「……栄養価は皆無。ただ胃袋をごまかすだけの固形物。これを、村の全員が?」


「はい。子供たちには少し多めに分け与えていますが、それでも、冬を越せるかどうか……」


 村長さんの声が震えていました。

 貴族である私にこれを出すのは、きっと相当な覚悟が必要だったことでしょう。

 およそ食べ物とは言えないものを食事として出すなど、無礼だと処罰されてもおかしくない行いです。

 ですが、彼らはそれでも「領主」である私に実情を訴えたかったに違いありません。


 私は、かじりかけのパンを見つめました。

 王都では、ふわふわの白パンや、砂糖たっぷりのケーキが当たり前でした。私がドジをして床に落としてしまったマカロン一つでさえ、この村ではご馳走なのかもしれません。


 ――借金一億ゴールド。

 その返済をしなければ、私の人生は終わります。

 でも。


 私はパンをぐっと飲み込み、立ち上がりました。


「村長さん、アニーさん」


「は、はい」


「借金の返済は後回しです。まずは、ご飯ですわ!」


 私の言葉に、全員がポカンとしました。


「ご、ご飯、ですか?」


「ええ! 衣食住が足りてこそ、いい仕事ができるというものです! こんな隙間風だらけの家で、おがくずを食べていては、借金を返すための力も湧きませんわ!」


 私はビシッと、窓の外――先ほど落ちた「大穴」の方角を指さしました。


「あそこには、生まれたてのダンジョンがあります。魔物がいるということは、お肉があるということです! 植物が異常成長しているということは、食べられる木の実やキノコもあるはずです!」


「で、ですが領主様! ダンジョンは危険な魔物の巣窟と聞きますぞ……!」


「大丈夫ですわ。私には最強の侍女ヴィオと、頼れるドガンさんがいますもの!」


 私が振り返りますと、ドガンさんがニヤリと笑い、ヴィオがやれやれと煙を吐きました。


「……お嬢様。借金を『後回し』にするのは感心しませんが、村人(ろうどうりょく)の確保が最優先という判断には同意します」


「けっ、しゃあねえな。このボロ屋の修繕も、わしの仕事ってわけか」


 二人の心強い言葉に、私は胸を張りました。


「決まりですわ! オルダー領復興作戦、第一弾! 『まずはおいしいご飯をお腹いっぱい食べましょう』計画、スタートです!」


 私の宣言に、村長さんとアニーさんは顔を見合わせ――そして、枯れた瞳にわずかな希望の光を宿したように見えました。

【ゼジィ】

レベル:3

HP:45

MP:530,000


STR:3

VIT:5

INT:40

DEX:2

AGI:4

LUK:999


スキル:

・ユニーク

災い転じて福と為す(ミラクル・ミステイク)

 失敗行動が高確率で「良い結果」に変換される。


・一般

【火魔法lv1】【治癒魔法lv1】【身体強化lv1】【浄化】


所持金: -1億G(借金)


称号:『辺境の不運姫』『借金王』


【ヴィオ】

レベル:12

HP:650

MP:80


STR:45

VIT:50

INT:35

DEX:60

AGI:70

LUK:15


スキル:

ユニーク

・???


・一般

【投擲術lv8】【身体強化lv5】【暗視】【短時間睡眠】


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