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婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


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34 小枝は大荒れ、一方その頃辺境では

【悲報】ドラゴンの革、バックと犬の服になる


1:名無しの騎士

 今日のオークション会場にいた奴いるか?

 目の前でドラゴンの革が「おしゃれバッグ」と「わんちゃんのお洋服」に変わる瞬間を見て、俺は持ってた槍を折りそうになったぞ。  


5:名無しの令嬢

 リリア様の可愛らしさは正義ですわ!

 平和な時代に、あんな美しい革を鎧にするなんて野蛮ですもの。

 リリア様が仰る通り、可愛く加工して愛でるのが一番の使い道ですわ。  


10:次期国王

 ハハハ! 見たか!

 第八、第十二騎士団長どもの、あの悔しそうなツラ!

 たかが騎士ごときが、リリアの「美」より自分たちの「命」が優先だと思いあがるとはな。

金ならある、あの元婚約者が泥をすすって稼いだ金がな!  


15:名無しの衛生兵

 >>10

 殿下、本気ですか……?

 今、前線の砦では魔物の強化で負傷者が続出し、ポーションの在庫も尽きかけているんですよ。

 あの革を盾一枚にでも加工できれば、助かる命がどれだけあるか……。  


20:リリア親衛隊長

 >>15

 黙れ下民!

 リリアたんは「聖女」なんだぞ。

 彼女の笑顔が王都の士気を高めているのが分からないのか?

 聖女さまが可愛いバッグを持って歩くだけで、魔物なんて浄化されるんだよ!  


25:壁の花子

 ……ねえ、会場で出された「聖女カブ」の話をしましょうよ。

 あれ、一口食べただけで体の芯から魔力が回復していくのが分かったわ。

 リリア様は「私の魔力と共鳴している」って仰っていたけど……

 正直、リリア様ご本人の癒やし(笑)より、あのカブの方がよっぽど聖女の働きをしていた気がするわ。  


30:名無しの魔術師

 >>25

 ほんそれ。

 あのカブに含まれる魔素濃度は異常だ。

 しかも一緒に並んでいたコンフィの肉、あれフォレストボアだろ?

 本来ならもっと硬くて臭い肉のはずだが、あれほど柔らかく仕上げられるのは、どんな高名な宮廷料理人だ?  


35:王室ウォッチャー

 噂だと、あの料理に使われた素材や香辛料の出所は、北の果て「スカンピア」らしいぞ。

 例の「ホワイト・ファー」や「最強ポーション」もそこから来ているという説がある。  


40:次期国王

 >>35

 またスカンピアか、しつこいぞ情弱ども!

 あんな死の大地に、こんな極上の品を生み出す力などあるはずがない。

 これはリリアの徳が高まったことで、世界が彼女に献上するために生み出した「聖域」の品なのだ。

 あの女が住むドブ溜めと一緒にするな!  


45:名無しの騎士

 殿下がリリア様とカブを頬張っている間に、俺たちの仲間はボス級の魔物に怯えながら、質の落ちたポーションをちびちび飲んでるんだ。

 ……もう、この国に期待するのはやめる。

スカンピアに行けば「命を救う本物の薬」と「腹いっぱいの肉」があるっていう噂を信じてみるよ。


 ビーツやお豆が収穫の時期を迎え、夏がやってきたと実感します。

 春に撒いた大麦も青々としていて、スカンピア産のエールの出荷がそう遠くない日であることに、私の胸が躍ります。


 スカンピアはますます発展しています。

 近隣の他の村から研修生を受け入れて、魔素の強い土地でも育つ作物の種苗をお分けしたり、スライムコンポストの作り方をお教えしたりして、周囲もスカンピアのように豊かになれるような試みを行っています。

 名付けて、「みんなでお腹いっぱいになろう作戦」ですわ!

 ちなみに、他の村の住人で【酪農】のスキルをお持ちの方が見つかったので、ダンジョン産の「サニーミルクカウ」と「デイブレイクチキン」という、二種のモンスターの飼育を外注(おまかせ)もしているのですよ。


 私とヴィオは、今夜のおかずを買いに、ガムルさんの食料品店に向かっておりました。

 今日は何を食べようかしらと考えていたところ、私は衝撃的な光景に出くわしました。


「オークション会場で一口食べたあの味が忘れられなかった。

 あれは、リリア様の奇跡なんかじゃなく、ここで必死に生きる人たちの誇りだったんだな……」


 私は突然、大人の男性が目の前で泣き出したので、困惑しておりました。

 この方は王都からいらした、ソレンさんとおっしゃるお客様です。

 このフォレストボアのコンフィは、クロウリーさんにも卸している品です。きっと、クロウリーさん経由で広まったものを、どこかで召しあがったのでしょう。


「へっ、気づくのが遅せェよ。これは俺の解体技術と、アニーの保存処理、それに嬢ちゃんの魔力で育ったハーブのハーモニーだ!」


 と、ガムルさんとアニーさんが並んで胸を張ります。


「こんにちは。どうかしたんですの?」


「俺は王都で騎士をやっていたんだが、騎士団は今、地獄なんだよ。

 現場はろくな装備もポーションもないっていうのに、アルフォンス殿下と聖女リリアが贅沢三昧。本気で現場のことを考えてくれてる騎士団長にマウントまで取りやがる!

 俺がとあるオークション会場の警備をしていたとき、ビュッフェに聖女カブのマリネやフォレストボアのコンフィが出たんだ。

 そのとき、聖女リリアがな。聖女カブのことを、『自分の魔力と共鳴している』だなんて、手柄を奪うようなことを言ってたから、悔しくてよぉ」


 えぇっ!? 聖女カブはそんなことになっているのですか。クロウリーさんの皮肉が、面白いくらいハマってますね。

 王子とリリアさまは、ご自分たちが周囲からどう見られるか気にならないのでしょうか。

 しかし、ポーション不足はまだ続いているようですね。


「お前、大変だったんだなぁ。

 せっかくだからこれも食ってくれ」


「うめぇ……うめぇ……」 


 ガムルさんはソレンさんのお皿に分厚いミートパイを追加します。

 それのフィリングは確かヘビの肉だったはず……。

 ガムルさん、どさくさに紛れてゲテモノ沼にソレンさんを引き込もうとしていますね?


「領主さま、頼む。この村で働かせてくれ。剣なら振れる。王都を守るより、この『本物』を守りたいんだ」


 ソレンさんが地面に膝を突きます。


「お立ちになって。それは構いませんが、今、転入がとても多いのです。お家がすぐには準備できませんの」


 そうなのです。スカンピアに引っ越したいという人は後を絶たず、また、他の土地から旅行に来る人も増加しております。

 ドガンさんが簡単な素泊まり施設を建てておいてくれていますが、それもいつもほぼ満室状態です。


 私はヴィオに、今日の宿泊状況についてたずねます。


「本日まで滞在の農業研修のグループがありますので、今夜から空きが出るはずです」


「置いてくれるなら、どんなところだって構わない。馬小屋でも倉庫でも……!」


「あらあら、そんなふうにおっしゃらないで。わが村の宿はとってもいいお部屋なんですのよ! ソレンさんのおうちも、うちの凄腕建築士におまかせくださいな。住み心地は保証いたしますわ!!」


 私はソレンさんに家族構成をお伺いします。単身者で、おうちの間取りにはとくにこだわりをお持ちでないそうでした。ならば規格どおりのおうちでよさそうですね。

 それと、ソレンさんは警備のお仕事を希望されているとのことですから、村長さんにもご連絡をして、業務内容や待遇についても話しあってもらわなければなりません。


「それじゃあ、ヴィオ。ソレンさんを宿に案内してくださる? 私は村長さんと、ドガンさんのところに行きますわ」


「わかりました、お嬢様」


「頼む……あぁ、そのあとでいいんだが、薬師がいたら礼を言いたいんだ。スリムポーションで、同僚が助かってな……。あれもこの村で作ったものなんだろう?」


「いいですよ。フレルさんもお喜びになるでしょう。……ドン引きしないでくださいね」


 私はヴィオとソレンさんを見送り、書類をまとめてドガンさんのところへ行きました。

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