31 肉の暴力には何人もあらがえませんわ
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香木とドラゴン素材の一部はのんびりオークションにかけるということで、クロウリーさんはひとまずの収支決算を出してくれました。
今回の総利益は、金貨数万枚に達します。
私はそれを、村の運営費、仲間たちの報酬、そして私の借金返済のための個人利益と分配します。
私の取り分は、およそ千五百ゴールドとなりました。
「スカンピアの一年分の予算を、たった一度の狩りで稼ぎ出すとは。お嬢様、あなたの『運』は、もはや国家の経済バランスすら破壊しかねない。して、ここからいくら返済に充てますか?」
「銀貨以下はお小遣いで、金貨以上は返済に充てますわ。私は領地から離れることはできませんから、クロウリーさんにお預けしても?」
クロウリーさんの問いに、私は答えます。
「承知いたしました。この金貨、私の信用を使い、確実に王都の債権者へ届けましょう。……彼らが、辺境の『素寒貧』から届いた莫大な金貨を見て、どんな顔をするか楽しみですね」
「これで完済まであと八割ちょっと……。やっと、ゴールが見えてきましたわ!」
「これだけでも国家予算並みの金額なのですが……。借金の金額のせいか、金銭感覚がバカになりそうです」
ヴィオが顔をしかめます。
取引が終わり、品物を魔法鞄に収納したクロウリーさんが「では」と立とうとするのを、私は引き留めました。
「クロウリーさん。日時を今日に指定したのは、この日、スカンピアでちょっとしたパーティーがあるからなんです。お時間がよろしければ、少し覗いていってくださいませんこと?」
ちょうどいいタイミングで、「ジュゥゥウウ!」という音が聞こえて来ました。
「一体なんのパーティーですか?」
「ドラゴン肉の試食会ですわ!」
私が胸を張って言いますと、クロウリーさんも興味を引かれたようです。
「おや……。影を伝って逃げようと思いましたが、この芳醇な香りは反則です。ドラゴンの脂が弾ける音は、金貨が触れ合う音よりも私の心を揺さぶりますね」
私は「さぁさぁ!」とクロウリーさんを案内します。
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村の広場では、ガムルさんが分厚い鉄板を駆使してステーキを焼いていました。
その隣のかまどでは、大きな鍋でスープが煮込まれており、香草のスパイシーな香りが立ちこめています。
「いいか、ドラゴンの肉は本来、鋼のように硬い。
だが、このダンジョン産のキノコと村の畑で採れた根菜を一緒に煮込めば、その繊維は魔法のように解けるんだ」
硬い部分は工夫を凝らして、トロットロに煮込んだおいしいスープに。わずかに取れる柔らかい部位は、あえてそのままの歯ごたえが楽しめるステーキにしたそうです。
「こいつを最初に味わうのは、この場で最も身分の高い者。つまり、嬢ちゃんだ」
ガムルさんはそう言って、鉄板の上の肉を切ってお皿に盛り付け、私に差し出します。
私が「いいのかしら?」と思って周囲を見ますと、みんながにこにこして、どうぞどうぞとジェスチャーしています。
「まあ、なんて芳醇な香り……! いただきますわ!」
ナイフを入れた瞬間、驚きましたわ。あれほど強固だった鱗の下の赤身が、まるで熟した果実のように柔らかく切り分けられたのです。
一口運べば、舌の上でドラゴンの濃厚な脂が爆ぜ、野性味溢れる肉の旨味が濁流となって押し寄せます。
それでいて、一緒に添えられた香味野菜の爽やかな風味が後味を上品に引き締め、次の一口を誘うのです。
「おいしいですわ~~! 皆さまも、ぜひ召し上がって!!」
村のみんなが、わっとガムルさんのところに殺到します。
料理が行き渡ったころ、私は二皿目をいただきました。
続いて供されたのは、ドラゴンの骨つき肉を三日三晩煮込んだという『黄金の香味スープ』です。
琥珀色に透き通ったスープには、肉の旨味がこれでもかと凝縮されており、喉を通るたびに五臓六腑へ熱い魔力が染み渡るのがわかります。たった今ブランド野菜となった『聖女カブ』の甘みが、ドラゴンの力強い出汁と絶妙なハーモニーを奏でておりました。
「はぁ……極楽ですわ……」
私がうっとりと余韻に浸っていると、隣で同じくスープを飲み干した村長のガヴさんが、何やら奇妙な唸り声を上げました。
「う……うおぉ……。力が、力がみなぎる……ッ!」
見れば、ガヴさんの全身から蒸気が立ち上っているではありませんか!
以前、アイアン・オークの肉を食べたときも皆さまムキムキになりましたが、今回はその比ではありません。
ミシミシと音を立てて膨らむ大胸筋。丸太のように太くなる腕。
かつて枯れ木のようだった老人の姿はどこへやら、そこには全盛期の英雄もかくやという『超・筋肉』へと変貌したガヴさんが立っておりました。
「あぁ、お嬢様! 今ならこの借金一億ゴールド分、わしが素手で掘り出して来れそうな気がしますぞ!」
「落ち着いてくださいガヴさん! その丸太のような腕で私を抱きつぶさないで……ああっ、危ないですわ!」
興奮したガヴさんが、喜びのあまり近くの共同作業所の壁を軽くポンと叩きました。
――ドガァァァン!!
凄まじい轟音と共に、ドガンさんが丹精込めて補強したはずの石壁が、まるで紙細工のように粉砕されました。
「…………あら?」
「ひ、ひぃぃ!? 壁が、壁が跡形もなく消えましたぞ!?」
ガヴさんは自分の拳を見て呆然としています。
他の方々も同様で、ハンスさんは指先で金貨をひん曲げ、アニーさんは巨大な水瓶を片手で軽々と持ち上げて……。
「直したばっかりの壁がなくなっていきよるぞ!?」
ドガンさんが頭を抱えて絶叫します。
「……ドラゴンの肉には、ステータスを爆増させるバフ効果があるのでしょうか? フレルさん……」
ヴィオが冷静に、しかし少し引き気味にフレルさんへ問いかけると、彼はガンギまった目でノートに筆を走らせていました。
「素晴らしい……! ドラゴンの魔力と新種野菜の相乗効果でしょうか?
それとも、『聖女カブ』にこんな効果があったんでしょうか、要検証ですねぇぇ!!
お嬢様、スカンピア村は今、『世界で最も平均筋肉密度の高い村』になっていますよ!」
「平均筋肉密度ってなんですの~~!? そんな概念知りませんわぁ~~!!」
私の絶叫が、喜びと破壊音に沸くスカンピアの夜空に響き渡ったのでした。
「ははは、なんと賑やかな村だ。王都の連中に見せてやりたいですね」
クロウリーさんは愉快そうに笑います。彼の手にも、ドラゴンのステーキがありました。
【ゼジィ】
レベル:12→14
HP:51
MP:620,250→701,384
STR:4
VIT:7
INT:85→98
DEX:2
AGI:4
LUK:999
スキル:
・ユニーク
【災い転じて福と為す】
失敗行動が高確率で「良い結果」に変換される。
・一般
【火魔法lv6→7】【治癒魔法lv3→4】【身体強化lv2→3】【浄化】【水魔法lv1→2】
称号獲得:『竜殺し』
【ヴィオ】
レベル:15→17
HP:990
MP:125
STR:54→60
VIT:62
INT:50
DEX:91
AGI:108→129
LUK:20→22
スキル:
ユニーク
・【紫煙の支配者】
吐き出した煙の成分や形状を自在に操る固有魔法。
・一般
【上級投擲術lv1→2】【身体強化lv7→9】【暗視】【短時間睡眠】【気配遮断lv1】
【ドガン】
レベル:49→50
HP:3,570→3,650
MP:200→210
STR:875→890
VIT:947→972
INT:152
DEX:1,224→1,250
AGI:41→42
LUK:120→121
スキル:
ユニーク
・【超速加工】
資材さえあれば、一瞬で加工・建築を行う。
・【構造解析】
対象に魔力を浸透させることで、建物や道具、あるいはダンジョンの構造を解析できる。
・一般
【上級槌術lv1→2】【上級鍛冶lv1→3】【上級建築lv3】【縫製lv1】New【鑑定lv4→5】【身体強化lv1】New
【ガルム】
レベル:25→26
HP:3,550→3,770
MP:180→200
STR:656→680
VIT:281→297
INT:85→91
DEX:182→185
AGI:94→97
LUK:40→41
スキル:
・ユニーク
【暴食の探求者】
食事をすることで一時的なバフを得る。バフ内容はメニューによって変わる。
・一般
【解体lvMAX】【斧術lv7→8】【火耐性lv5】【毒耐性lv8】【鑑定lv3】【調理lv8→上級調理lv1】【食品加工】【身体強化lv1】New
【フレル】
レベル:60
HP:920
MP:12,500
STR:35
VIT:36
INT:1,580
DEX:621
AGI:96
LUK:65
スキル:
・ユニーク
【緑の声】
植物の感情や状態を理解し、その生長や特性を最大限引き出す。
・一般
【水魔法lv8→9】【風魔法lv7】【調合の匠】【鑑定lv8】【社畜】【身体強化lv1】New




