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婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


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28 フルメンバーでボス戦ですわ!

「お出ましですわね……緑の暴君が」


 色鮮やかな花々が咲き乱れる第三層の最深部。その美しさにそぐわない、大地を震わせるような重低音が響き渡りました。

 茂みを割り、のっそりと姿を現したのは、鈍い緑色の鱗に包まれた巨躯――『グリーンレッサードラゴン』。


「グルァァアアアア……ッ!」


 黄金の瞳が私たちを射抜きます。その咆哮だけで、空気の震えが肌に突き刺さるようです。

 ですが、今の私は数日前の私ではありませんわ!


「皆さま、準備はよろしくて?」


 私はドガンさんが丹精込めて作り上げてくださった『白檀の魔杖サンダルウッド・ワンド』を握りしめました。高級素材の滑らかな手触りが、不思議と私の震える指先を落ち着かせてくれます。


「いつでもいけますよ、お嬢様。……掃除の邪魔をする不届きなトカゲは、私が黙らせます」


 ヴィオがパイプをくわえ、紫色の煙を細く吐き出しました。

 その隣では、ガムルさんが巨大な『大鉄顎の斧』を肩に担ぎ、舌なめずりをしています。


「へっ、太い脚と尻尾……いい脂が乗ってそうだ。解体しがいがあるぜ」


「ううん、素晴らしい魔力反応……! あの鱗の隙間に生えている苔、研究用にぜひ欲しいですねぇ!」


 フレルさんは相変わらずの変態……いえ、探究心溢れる笑みを浮かべ、聖杖を構えています。

 そして、私のすぐ隣で、ドガンさんがハンマーを片手に、地面を強く踏みしめました。


「嬢ちゃん、魔力を溜めておけ! 隙はわしたちが作る!」


「ええ、信じておりますわ。……さあ、スカンピアの豊穣を邪魔するなら、お覚悟なさいませ!」


 私は杖を掲げます。いざ、戦闘開始ですわ!


「お嬢様、集中を! 【紫煙の支配者】」


 真っ先に動いたのはヴィオです。

 紫の煙がドラゴンの足元に絡みつき、動きを一瞬止めます。


 しかし、ドラゴンの行動を止められたのは一瞬だけ。

 ドラゴンは長く太い尾をしならせ、ヴィオに打ち付けます。

 ヴィオはヒットの瞬間後ろに跳んで衝撃を殺します。しかしそこに、石つぶての追撃が……!


「【緩衝(ダメージバッファ)】! ヴィオさん、大丈夫ですか?」


 フレルさんが素早く魔法を使い、ヴィオの周囲に風の障壁(バリア)を展開します。石つぶては風に阻まれて、地面にぽとぽとと落下します。


「くっ……腐ってもドラゴンですね」


 ヴィオが無事で私はホッとします。しかし、作ったばかりの革のドレスは大きく裂けていました。あの尻尾の棘は、相当斬れ味がいいようです。


「今じゃ!!」


「おうっ!」


 ドガンさんとガルムさんが、ドラゴンの後隙を狙って同時攻撃を仕掛けます。

 ハンマーと斧がドラゴンの鱗に食い込んだ――と思った刹那。


 ガキィィイイイン!!


「なっ!?」


 二人の攻撃はあっけなく弾かれてしまいました。

 ハンマーが弾かれた反動で胴体ががら空きになったドガンさんに、ドラゴンはタックルを仕掛けます。


「ドガンさん! 今【治癒魔法】を……」


「わしはまだいける! 攻撃するんじゃ!」


 ドガンさんが心配ですが、私はドガンさんを信じて攻撃を選択します。


「貫け! 【火槍(フレイムランス)】!」


 ゴォォッ!!


 私は魔法の炎を槍状に束ね、ドラゴンにぶつけます。


「グォォ……」


 多少効いた手応えはあります。しかし、ドラゴンはまだピンピンしています。


「へッ、面白くなってきたじゃねェか……!」


 ガルムさんは斧を握り直します。


「以前の杖ならこの量の魔力は、流した瞬間に爆発していましたが、この白檀の杖は、暴れ馬のような私の魔力を優しく……いえ、必死に食い止めてくれていますわ!」


 私もみんなを励まします。

 私たちは、ドラゴンを相手取れています。

 戦いはこれからです!


「ヴィオ! わしが盾をやる!」


「……任せます」


 前衛のフォーメーションが変わります。

 ドガンさんがドラゴンの正面を受け持ち、ハンマーで頭を殴る作戦です。

 ヴィオはドラゴンの背後に回り、ナイフを投げます。

 さすが、ドガンさんの特製ナイフです。ダメージは針が刺さったようなものかもしれませんが、しっかりと刺さっています。


 ガルムさんは懐から肉の塊を取り出し、口に入れて丸呑みします。

 あれはアルミラージの肉です。ガルムさんのユニークスキル、【暴食の探求者(グルメハンター)】が発動します。

 その効果は、食事をすることで一時的なバフを得るというもの。バフ内容はメニューによって変わります。アルミラージの肉を食べたガルムさんは、脚部に魔力を集約させます。


 次の瞬間、ガルムさんは大きく跳躍。

 グリーンレッサードラゴンの頭上を軽々と飛び越し、背中へと斧を振り下ろします。


「ギャァ!!」


「そのデカい図体なら、上から攻撃されたことなどないだろう!」


 ドラゴンは大きなダメージを受けたようで、悲鳴を上げます。そして憎々しげにガルムさんを睨みつけ、特大の石つぶてを生成。


 ガガガッ!


「ぐはッ……!」


 ガルムさんは石つぶてを食らって吹っ飛びます。

 倒れたガルムさんを、ドラゴンはさらにさらに踏みつけようとします。


「だめっ! 【火矢の雨(ファイアアロウズ)】!」


 ドォンドォンドォン!


 いくつもの火球がドラゴンへヒットします。おかげでドラゴンは私にヘイトを向けてくれます。

 たちまち、空中でドラゴンの魔力が凝り、無数の石つぶてへと変じます。


「【水鏡リフレクション・ミラー】!」


 私に石つぶてが降ると思った瞬間、フレルさんが水魔法を展開。石つぶては鏡で反射され、何もない空中へと飛んでいきます。


「ギャォォ!! ギャォォオオン!!」


 誇り高きドラゴンは、私たちがなかなかやられないのに焦れたのでしょう。空気が震えるほどの大声を上げます。

 そして今までにない強烈な魔力の波動を感じます。

 その次の刹那、燃える噴石の雨が、夕立のように降ってきたではありませんか!


「お嬢様!」


 ヴィオが私に覆い被さります。


「ぐっ……」


「ヴィオ!」


 噴石が収まってすぐ、私はヴィオに治癒魔法を使います。ヴィオの背中は火傷と出血でひどい様子でしたが、すぐに傷は元通りになります。


 私は周りを確認します。

 ドガンさん、ガルムさんは大けがをしています。フレルさんは倒れています。

 助けに行きたいですが、彼らのいるところは治癒魔法の射程外です。


「まずはドラゴンです。お嬢様の魔力ならあいつを倒せます。私が時間稼ぎをしますから」


 ヴィオが言い、私から体を離します。

 そして血まみれのまま、両手にナイフを握ります。


 私は侍女を、そして自分を信じることにしました。


「――星々の瞬きを束ね、悠久の熱をこの一指に。

 全魔を以て一線を成せ」


 私は全神経を集中し、詠唱をはじめます。

 そのとき、ドガンさんが起き上がってハンマーを置き、ドラゴンに格闘を仕掛けます。

 そしてがっぷり、両手両足でドラゴンの首にしがみつきました。


「【構造解析(アーキテクト・アイ)】!」


 ドガンさんはドラゴンに対してユニークスキルを発動。そして右手をウエストバッグに突っ込みました。出てきた手には、二十センチほどのピッケルが握られています。

 そのピッケルの刃の光沢には見覚えがありました。あれは、あのときの原石! オリハルコン製のピッケルです!


「ここじゃぁぁ!!」


 ドガンさんはドラゴンの顎の下、いわゆる「逆鱗」と呼ばれる箇所に、ピッケルを突き立てました。

 ドラゴンは激しく暴れ回り、周囲に首を、ドガンさんごと何度も打ち付けます。

 ドガンさんはドラゴンから引き剥がされ、地面に倒れます。


「我が前に立ち塞がりし者を貫き穿つ、ただ一点の楔となれ!」


 私は不安を抑え込み、詠唱を続けます。


 それは唐突なできごとでした。

 ドラゴンの動きが不意に止まったのです。


「準備は整いました。【影縫い(シャドウ・バインド)】!」


 ドラゴンの全身には、ヴィオの魔力の煙が張り巡らされていました。

 その煙を繋ぎ留める楔となっているのは、いくつもの投げナイフです。


 その千載一遇のチャンスをものにしたのはガルムさんです。


「逃がさねぇよ! 【斧術】奥義、【満月斬り】!!」


 ガルムさんの斧が大きく円を描き、ドラゴンの尻尾を断ち切りました。


「この断面のサシ……最高だ!」


 ガルムさんは獰猛な笑みを浮かべます。

 怒り狂ったドラゴンは、ヴィオとガルムさんに大きな石つぶてを発射します。ヴィオは回避しますが、ガルムさんはまともにくらい、倒れてしまいます。


 あわや全滅一歩手前。ですが私の詠唱は完了しました。


「放て――【熱光線(ピンポイントレーザー)】ですわあああ!!」


 今まで私は、低いDEXを補うため、魔力を拡散させて面攻撃を行っていました。

 しかし今回は、ドラゴンの厚い鱗を穿つため、私の最大出力を一点集中。ドガンさんが作ってくださった杖を構えて、当たってと祈ります。


「……くしゅんッ」


 しかしなんということでしょう。

 いざ発射というときに、舞い上がった花びらが、私の鼻にくっついたではありませんか。

 私がくしゃみをした瞬間、魔法はあさっての方向へと発射されてしまいました。


 ――私はどうしてこうなのかしら。


 私が絶望の沼に沈みかけたとき。


「さすがはお嬢様! 僕にトドメを刺せと仰るのですね!」


 フレルさんは起き上がってはいませんでしたが、その手は丁字の杖を放してはいませんでした。


「【水鏡】、【万華鏡(カレイド・スコープ)】」


 何枚もの【水鏡】が空中に展開。私が放った【熱光線】が、【水鏡】を次々と粉砕しながら、何度も何度も反射していきます。

 そして、ドガンさんが剥がした「逆鱗」の跡へ、はじめからそういう戦略(ストラテジー)であったかのように、きれいに吸い込まれていきます。


「――――!!」


 【熱光線】はドラゴンの顎の下から脳天へ、一直線に貫通。

 ドラゴンは悲鳴を上げる間もなく、即座に絶命したのでしょう。

 今までの喧騒が嘘だったかのように、巨体がどさり、と静かに倒れます。


「……勝った」


 ヴィオの呟きが私の耳朶に届きました。

 それで私は、ハッと気がつきます。


「そ、そうですわ〜〜っ! 皆さまに回復を……!!」


 かくして、私たち五人のはじめての戦いは、大苦戦の末見事勝利をおさめたのでした。

 ここまで読んでくださってありがとう!

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