27 対ドラゴン会議ですわ!
●
村に戻ると、広場でフレルさんとガムルさんが私たちの帰還を待っていました。
「予定よりお早い帰投ですね。何かありましたか?」
「強敵に遭遇いたしまして、撤退してきたのです。ですが、戦利品はなかなかのものですわよ」
私が敷物の上に魔法鞄の中身をあけると、フレルさんとガムルさんは「おおっ」と驚愕します。
「これは『ホーリーバジル』に『シルフィーレモングラス』! こんなところで出会えるなんて」
「これは『丁字』か!? まさか、こんなレアな香辛料が採れるとは」
二人が喜んでくれて嬉しい気持ちになります。
しかし、悪いニュースも伝えねばなりません。
「お喜びのところ恐縮ですが、これらが採れる階層には思わぬ強敵がいたのです」
説明はヴィオがやってくれました。
ドガンさんの【鑑定】を弾くほどに高位の、翼のないドラゴン。その話を聞くとガムルさんが目の色を変えました。
「ドラゴンだと!? そいつの肉が欲しい!! 次の探索には俺も連れて行け!」
「ですが、すごく強敵なんですよ。危険ではないでしょうか」
はやるガムルさんを、ヴィオが不安そうに止めました。
「飛ぶのではなく走るタイプで、緑色。そのドラゴンはおそらく『グリーンレッサードラゴン』でしょう。ドラゴンの中でも最弱の部類です。
しかしながらドラゴンはドラゴン。ダンジョンのたかだか第三層に出るようなモンスターではありません。レッサードラゴン属は多くの場合、第五層以降に出現します。
……この異常は、もしや……」
フレルさんが言葉を濁します。フレルさんの言うことが合っているのなら、あの場にグリーンレッサードラゴンが出現したことはおかしいことだったようですね。
つまり、【セカンド・チャンネル】でささやかれていた、各地のダンジョンの魔素濃度が急上昇しているという噂が本当だったということでしょうか。
なんとなく重苦しい雰囲気が立ちこめます。その空気の中発言したのはドガンさんでした。
「わしはだいたいのダンジョンでは、第三層から第四層くらいを縄張りにしておった。第五層に挑んでろくな成果を上げられたことはないが、ソロだったからじゃ。
パーティーならやれんことはないと思っておる。
ドラゴン素材はわしだって欲しい。
トカゲは戦えるとして……おいエルフ、おぬしはどうじゃ」
「僕は宮廷に就職して長いので、フィールドワークは二十年ぶりになります。ステータスカードをお見せしましょう。ガムルさんもステータスカードはお持ちですか?」
ガムルさんはうなずきます。私たちはステータスカードを見せあい、作戦を練ることにしました。
【ガムル】
レベル:25
HP:3,550
MP:180
STR:656
VIT:281
INT:85
DEX:182
AGI:94
LUK:40
スキル:
・ユニーク
【暴食の探求者】
・一般
【解体lvMAX】【斧術lv7】【火耐性lv5】【毒耐性lv8】【鑑定lv3】【調理lv8】【食品加工】
ガムルさんは、かなり高いレベルをお持ちでした。ステータス傾向はアタッカー寄りで、頑丈さもドガンさんに匹敵するくらい高いです。頼もしい前衛になってくれそうです。
【フレル】
レベル:60
HP:920
MP:12,500
STR:35
VIT:36
INT:1,580
DEX:621
AGI:96
LUK:65
スキル:
・ユニーク
【緑の声】
・一般
【水魔法lv8】【風魔法lv7】【調合の匠】【鑑定lv8】【社畜】
【調合の匠】は【上位調合lvMAX】を達成したときに発生する上位スキルです。
【社畜】とは、【疲労耐性lvMAX】【空腹耐性lvMAX】【短時間睡眠】の三つの条件を満たしたときにスキルが統合されて発生する上位スキルです。彼の経歴を物語っていますね。
フレルさんは宮廷でのデスクワークが長かったせいか、MPとINTに偏ったピーキーなステータスのようです。
「お二人ともお強いですね。三人では厳しい戦いでも、五人ならやれるかもしれません」
ヴィオも強いと思っていましたが、ガルムさんとフレルさんのレベルはそれ以上でした。
しかしヴィオのAGIは私たちの中ではトップです。いざ戦闘になった場合、一番最初にアクションを起こせるのはヴィオでしょう。戦いの流れをこちらに引き寄せるには、ヴィオの動きが最も重要になりますね。
「お嬢様の魔力は多いと思っておりましたが、実際の数値を見るとすごいですね。六万ですか……え? え?」
フレルさんが私のステータスカードを二度見します。
「お嬢様のMPは620,250です」
ヴィオは少し自慢げですね。
「ふむ、なかなか戦力じゃな。あとは、嬢ちゃんの杖を更新するぞ。香木の枝を一本もらうが、かまわんな?」
「僕の杖も作ってもらえますか? 戦闘用の装備なんてとっくに処分してしまっているのです」
「エルフの装備か。作業所に行って素材を分けてもらわんとの。トカゲはどうじゃ?」
ガルムさんは自分の斧をドガンさんに見せます。
「ふむ……。これもいいものじゃが、あのドラゴンを相手取るには小ぶりじゃ。もう少し大きめのものを用意してやる」
「ドワーフが打つ大斧かよ。そいつは値打ちモンだなァ、ありがたい」
「ドガンさん、よろしくお願いします。僕は回復とバフのポーションを作っておきます」
動機のあるガムルさんはともかく、フレルさんまでダンジョンに同行していただく流れになりました。私は「いいのですか?」とフレルさんにたずねました。
「ドラゴンの血液はポーションの材料に、糞は極上の肥料になります。植物ではないものの、僕にとってもドラゴンは魅力的な獲物ですよ」
フレルさんは優しく言ってくれました。
本当に私は周囲に恵まれていますね。
そして、準備と休養を経て万全な状態になった私たち五人は、再び「花畑」へと赴いたのでした。
【白檀の魔杖】
高級素材「白檀木人」の心材を削り出した杖。凄まじい魔力伝導率を誇り、魔法の指向性を無理やり整える。
INT+15/DEX+20
【丁字の聖杖】
薬草学に精通したエルフ専用の杖。「丁字木人」の蕾を触媒として埋め込んでおり、水魔法の純度を極限まで高める。
INT+15/MP+500
【牙鼠の投擲刃】
鍛造によって鍛えられた軽銀製。刃にファングラットの牙を合成している。敵の魔力回路に干渉して麻痺のデバフを与えたり、煙の魔力を吸着し付与しやすく設計されている。
DEX+20/AGI+15
【荒鹿の戦闘ドレス】
ワイルドディアの革をベースに、肘・膝をフォレストボア革で補強。見た目のかわいさと、トレントの打撃に耐えうる防御力を両立。
VIT+12/AGI+8
【軽銀の剛甲】
ボス「軽銀騎士」から得た幻の金属を使用。熱伝導率が高いため、ドガンの魔力を一瞬で道具へ浸透させることが可能。
STR+30/VIT+25/DEX+50
【大鉄顎の斧】
アイアン・オークの牙を鋳潰した重斧。竜人の怪力でなければ振ることすら叶わない。魔物の部位破壊に特化している。
STR+50/部位破壊率+20%/AGI-10




