25 王都で不穏の兆しですわ?
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【深刻】最近のポーション、品質落ちすぎじゃないか?
1:名無しの騎士
今日の演習でけがしたんだが、支給された下級ポーションを飲んでも傷が塞がるまで三十分もかかった。
前なら五分で治っただろ? 騎士団の連中もみんな困ってる。
2:名無しの衛生兵
>>1
現場も地獄ですよ。
最近のポーションは魔素の定着が悪くて、まるで水で薄めたみたいだって隊長がキレてました。
5:名無しの令息
そう言えば、宮廷薬師のあいつ(変態だけど天才だったエルフ)が突然辞めたって噂、マジだったのか?
あいつが作ってたポーションだけは「異常に」効きが良かったからな。
8:王室ウォッチャー
例の庭園を勝手に薬草畑に改造したエルフの薬師だろ。
不敬罪で追放されたって話だったが、実際は自分から辞表を叩きつけて消えたらしいぞ。
タイミング悪すぎだろ、今の王都。
12:名無しの魔術師
タイミングが悪いのはポーションだけじゃない。
各地のダンジョンの魔素濃度が急上昇してる。
魔物の数が増えて、さらに個体も強化されてる スタンピードの予兆か? って魔術師協会が警鐘を鳴らしてるぞ。
15:名無しの市民
えっ、魔物が強くなってるのにポーションが効かないの?
俺たち冒険者はどうすればいいんだよ。騎士団の皆さん、マジで頑張ってくれ!
20:次期国王
>>1-15
民草ども、不安がることはない!
我が国には「真の聖女」リリアがいる!
彼女の祈りがあれば、粗悪なポーションなど不要だ。
リリアの聖なる力で、傷も穢れも一瞬で浄化されるのだからな!
21:リリア親衛隊長
さすがは殿下!
リリアたんの回復スキル【聖なる癒天使猫姫】があれば無敵ですよね!
ポーションが足りないなら、リリアたんに直接癒やしてもらえばいいだけの話。
むしろご褒美だろ!
25:名無しの騎士
>20>>21
おい、聖女様が一人で数千人の騎士団員全員を治して回れるわけないだろ。
現実を見ろ。
今、前線の砦ではポーションの在庫が尽きかけてて、マジで笑えない状況なんだぞ。
30:壁の花子
……ねえ。
噂なんだけど、王都で手に入らなくなった「最高級のポーション」が、
北の果ての「スカンピア」で大量に流通してるって話、聞いたことない?
31:次期国王
>>30
バカを言え。
あんな素寒貧の死の大地で、ポーションの材料など育つはずがない。
不運な元婚約者が、泥水をポーションと偽って売っているだけだろう。
騙されるなよ、情弱ども。
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領主の館のテラスで、私とヴィオとフレルさんは【セカンド・チャンネル】に接続していました。
「フレルさん、王都の皆さまがお困りのようですの。ポーションの生産量を上げていただくことはできますか?」
「ううん……。正直申し上げますと、宮廷薬師時代はものすごいブラック労働だったんです。来る日も来る日も調合調合で、植物と触れ合う時間なんて皆無でした。あのときと同じ生産量をというのはお断りしたいですね」
「そんなにひどい労働環境だったんですの?」
「それはもう……。調合室にほぼ軟禁状態で、徹夜・休日出勤は当たり前!
ぎっしり箱詰めされている、刈り取られて時間が経ったしおしおの薬草さんを、ヘロヘロになりながらひたすらポーションにするんです。聞こえる声も『……シテ……コロシテ……』って感じなんですよ!
土に植わっておいしい水をたっぷり与えられて、イキイキ青々としているのが植物の本来あるべき姿でしょう?
あれは薬草さんたちに対する虐待です!!」
「……」
「それに比べて今は天国ですよ! 朝起きれば、瑞々しい植物さんにおはようのキスをし、仕事が終わればただいまのキスができる!
どの薬草さんも『僕たちを役に立てて〜! いっぱい増やして〜!』って、元気でかわいくて健気で、最高の状態で最高のお薬になってくれるんです!」
ちょっと何言ってるかわかりません。
私はフレルさんが喋っているのを呆然としばらく聞き流しておりました。
我慢して聞いていると、最後にフレルさんはきちんと結論を出してくれました。
「……でも、より効果の高いポーションを開発すれば、今までより少ない量で同じ程度の効き目を発揮することは可能だと思います。
実際、同じレシピでも、宮廷時代よりスカンピアのほうが素材の質が高いので、効果は上がっています。その方向性で解決してみませんか?」
フレルさんは一見まともなことを言っていますが、「そのためのレア素材、新種薬草が欲しい」と顔に書いています。目つきがヤバいですもの。
ちょっと気持ち悪いですが、何らかの対応をしなければ、騎士団の皆さまが危険です。
治癒魔法が使える人がいればポーションは不要という意見もありますが、魔法を使うにはある程度の魔力が必要。そして、貴族ほど魔力の高い子が生まれるように魔力の高い配偶者を求める傾向があります。そのため魔法が使える人は貴族が多いです。
貴族の次男三男は騎士になることが多いですが、実家の爵位が高いほど、近衛や王都の警邏の仕事に任命されがち。外に出てモンスターに対応するような部隊に所属しているのは、魔力に乏しい平民ばかりです。だから、治癒魔法が使える人は稀で、ポーションが必要なのです。
「ポーションの市場価格は日々上がっています。お嬢様の借金返済のためにも、フレルさんのやれるペースで、なるべく多く作っていただきたいものです。材料のほうは……畑ができたといえど、ダンジョンにも頼ることになりますね」
ヴィオは顎に指を当て、考えているような仕草をします。
「いずれにしても、より深い階層でより貴重な素材を集めることは必須です。
しかし、お嬢様の魔法鞄は決して大きくはありません。数頭魔獣を狩れば埋まってしまうサイズです。道中薬草を摘むにしても、大した量は持ち帰れないと思います。何度往復することになるか」
「それなら、僕の魔法鞄を持っていってください。容量は縦横奥行き八メートル、付与は時間停止つきです」
さすが元・宮廷薬師、いいものをお持ちです。
「エルヴンフラワーとブルーマッシュルームはいくらでも欲しいです。それと、研究用にいろんな種類の薬草を少量ずつお願いします。
シュガー・マンドラゴラがいたら掘ってきて欲しいです。これはただ甘いだけですが、ポーションは飲みやすいにこしたことはないですからね」
フレルさんは薬草図鑑をめくりながら欲しいものを言いました。私はスケッチを見て、その薬草の特徴を頭に叩き込みます。植物を採取するなら、森林エリアのさらに深層を目指すのがいいでしょう。
「お嬢様がダンジョンに潜られている間、僕はすでにある薬草を調合してしまいます。
畑にお水を撒いてからご出発いただけますか?」
「はい、わかりましたわ」
フレルさんの畑に水を撒くのは私の仕事です。私のほうが魔力が高いので、たくさん魔素を必要とする植物には、そのほうが成長にいいそうです。
それにしても、リリア様のユニークスキルは回復系だったでしょうか? 私はほんの少し不安を覚えました。
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