表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された不運令嬢ですが、辺境をダンジョンで開拓しますわ! 〜DEX2の不器用令嬢、LUK999とうっかりミスで借金一億を完済します〜  作者: 海底撈月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

22 村に帰ったら○○○が落ちていました

 村に帰ると、入り口前に青年が倒れていました。その全身は土にまみれ、とくに手がひどく汚れています。

 ここはドガンさんが作ってくれた防衛用の高い柵があって、村からはちょうど死角になっています。村人たちは作業所に詰めているということもあってか、まだ誰も彼に気づいていないようです。


「もし、あなた。いかがいたしましたの? おけがをなさっているのなら【治癒魔法】を……」


 倒れている人に近づいて、私は息をのみます。

 緑がかったまばゆい金の髪、極上のシルクのような白くきめ細かい肌。すらりとした体躯は彫刻のように均整が取れています。

 顔を地面に伏せるようにして倒れているので、顔立ちこそわかりませんが、何よりも、長く尖った耳が彼の出自を語っています。まだ後ろ姿しか確認していないとはいえ、このように美しい男性を、私は見たことがありません。


「この方は、森の民(エルフ)……?」


 私は一瞬ぼうっとしましたが、すぐにやろうとしたことを思い出します。


「もし、しっかりなさって!」


 私は彼を抱き起こそうとしました。すると、青年はカッと目を見開き、私の腕を掴みました。


 彼の目鼻立ちは計算し尽くされたように左右対称で、長く密で繊細なまつげに縁取られた瞳は、ペリドットのように高貴な深い緑色です。彼はどこか焦点の合わなかった目を数度まばたきさせました。そして宝石のような緑の瞳と目が合います。なんて美しい方でしょう。まるで物語の王子様か、精霊の落とし子のような……私は思わずときめいてしまいました。


 しかし、その整いすぎた唇から漏れたのは、甘い言葉ではなく――。


「……スゥーーッ! はぁぁ……たまらない……この腐葉土と鉄分が混じり合った、最高にドブ臭い香り……!」


「ひぃっ!?」


 前言撤回ですわ! この方、変な人です!

 彼は私の腕に顔をくっつけています。肌の香りではなく、私の服に付着した泥の匂いを、うっとりとした顔で吸い込んでいるのです。

 彼の瞳は、瀕死どころか、獲物を狙う肉食獣のようにギラギラと輝いていました。


 え? この方もしかして……、さっきまで倒れていたのではなく、地面の匂いを嗅いでいたのですか……? 私の頭が理解を拒みます。


「やっと……見つけました……このバスソルトの生産地を……!」


 彼は手に持った袋を掲げます。その袋には見覚えがあります。クロウリーさんに納品した、スカンピア産のバスソルトです。


「ま、まさか……」


 私は嫌な予感を覚えました。


「あなた、『草マニア』さん!?」


「ご存じいただいておりましたようで、なによりです! 僕、『草マニア』こと、元・宮廷薬師のフレルともうします!!」


 ぎゃ~~っ!! 来ちゃいましたわ!! この方、【セカンド・チャンネル】で特定厨をなさっていた方ですわ!


 私は彼――フレルさんの美しさなんてどうでもよくなってしまいました。ただただ、背中に悪寒が走ります。


「これ!! この梱包材のおがくず、間違いなくこの村で採れた木ですよねぇ!? 僕にはわかるんですよ! 後生です、この村に住まわせてください! 僕、ここに骨を埋める覚悟で辞表を出して来たんです!!!」


「お嬢様から離れなさい、下衆が」


 ヴィオが私とフレルさんの間に入ります。しかし、フレルさんはヴィオが背負っている袋や、肩に乗っていたキノコの妖精を見て、さらにテンションをブチ上げます。


「その袋から飛び出ているのは『青銅竹』じゃないですかッ! それに『ベニテングタケの妖精(アマニタ・フェアリー)』に、『ヒトヨタケの妖精(コプリノ・フェアリー)』まで!? ここは宝の山ですか!?」


 フレルさんの圧にヴィオがドン引きしています。しかし、ドガンさんはフレルさんの博識さに目を留めたようです。私のフードからキノコの妖精を抱き上げて、フレルさんの目の前に突き出します。


「おぬし、このキノコの中に酒を造るやつがおるかわかるか?」


 フレルさんがまじまじと妖精さんたちを観察します。至近距離からのなめ回すような視線に、妖精たちはおびえています。


「ふむふむ……。この子は……! 新種の酵母茸の妖精さんではないですか!? 学名は『サッカロマイセス・フェアリー』とでも名付けましょうか。王都に報告したら……が、学会が大変なことになります!!」


 妖精たちは「キャ~!」と叫んで私とヴィオの後ろに隠れます。ドガンさんはニヤニヤと笑っていますね。私はドガンさんの気持ちを察しました。


「フレルさんと言いましたわね。あなた、この村で酒造を手伝ってください。そういたしましたら、ここに住むのを許……」


「是非もありませんッ! ここに住めるのなら、酒造でも便所掃除でも、なんでもします!」


 お返事は食い気味でしたわね。ドガンさんはガッツポーズをしています。私は多少村の治安に心配を覚えましたが、スカンピア産の銘酒の誕生を予感し嬉しく思っていました。


 ここまで読んでくださってありがとう!

 下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくださると励みになります。

 【★★★★★】が一番嬉しいですが、【★☆☆☆☆】や【★★☆☆☆】でも嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ