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第9話




 家に着くと、勉強会が始まった。

文字や名前は覚えにくくて、頭がこんがらがる。


「疲れちゃった?」

「うう……勉強嫌い……」

「でももう十四歳よ。少しずつでいいから覚えていきましょうね」

「はあーい……でも、難しいよ」


クレアさんは優しく笑い、私にノートを差し出す。


「このヴァレリアン王国は、干ばつにより争いが耐えなかったけれど、水の神ヴァレリオス様の慈悲の涙によって大きな川が国中を張り巡らせるようになったの」

「ヴァレリオス様…?うん……」


言われたことを少しずつ少しずつ渡されたノートに書き記す。


「そして、そのヴァレリオス様に加護を与えられたのが初代国王よ」

「全員名前似てて覚えにくいよ」


クレアさんはやっぱり優しく笑って、続きを教えてくれる。


「ゆっくり覚えていけたらいいから、今はノートを取りましょう?」

「うん…!」


「王子の立太子が完了してから一年が経つと、聖女候補というのが生まれるわ」

「聖女候補?」

「そう。平民の女の子の中から生まれるというヴァレリオス様の加護を賜った子で、王太子様と結ばれる運命にあるわ」

「王太子……」


やっぱり、胸が苦しい。

何かを思い出せと言わんばかりに頭痛がして、動悸がする。

何かを知っているような、そんな気がする。


「これは、もう言わなくちゃいけないわね。立太子がなされたわ。そして……ユーリアは聖女候補に当てはまるの」

「私が、当てはまるの?」

「そう。来年十五歳になる平民の女の子が対象よ。もちろん、もう少し細かい条件があるらしいけどね、これはあまり気にしなくていいわ」

「へぇ……一応当てはまるんだ」


聖女候補に、私が当てはまる。

もう少し細かい条件ってなに?


「だから、王宮から招待状が届いたら頑張ってね」

「……うん、頑張る。頑張った方がクレアさんは嬉しい?」

「そうね。ユーリアが幸せになれるというなら、私も嬉しいわ」


そういうのであれば、私も頑張ろう。

王太子様と結ばれたいとは思わないし、ずっとこの家にいたいけど、そんなこと許されるはずもない。

政治の為に結婚をして、ノアール家に貢献できるのであれば、王太子はこの上ないだろう。


「……うん、クレアさんが嬉しいなら少しずつ頑張る」

「ええ!その意気よ!」


頑張ろうと決心したところで、セフィロトさんが紅茶をいれてくれた。


「紅茶を淹れたよ。勉強はどう?進んでる?」

「今頑張ってるところ……」

「ユーリア、すごく頑張ってるわ!」


偉いと褒めて、撫でてくれた。

頑張る意欲も湧いてきて、自分から本を読み始める。


「あら、やる気出たの?」

「うん!」


正直、なんでこんなに引っかかるのかわからない。

けど、勉強していけば分かるかもしれない。

王宮にいけたら、もっとわかることだって増えるかも。



 あれからまた数日が経った。

朝起きるとリリアにすぐ話しかけられる。


「ユーリア様、本日はお手紙が届いております」

「……おはよう……ん、てがみ…?」


眠い目をこすりながら、リリアから渡される手紙を受け取る。

なにやら見覚えのあるマークのシーリングスタンプ。


「確かこれは…王家の、紋章?」


王家の紋章。

………え?


「な、なんで!?」

「おそらく、聖女候補に関することかと」

「……あ、ああ!そんなこともあったっけ…?」


ドタバタと急いで朝の準備を済ませ、食堂へ向かう。


「お、おはよう、クレアさん!あの、この手紙……」

「あら、手紙、渡された?リリアったらせっかちね」

「ああ。……ユーリア、君は聖女候補に選ばれた。もちろん行くか行かないかはユーリアが決めていい。どうしたい?」

「私は、私は……」


二人の役に立てるのであれば、そこに行って二人が嬉しいのであれば。


「行きたい、よ!」

「一年間も会えないのは寂しいけれど、ユーリアがそういうなら、応援しよう」

「………え、会えないの?」

「ええ、そうよ。そういうルールなの」


二人に会えないなんて。悲しい。

でも行くと言ってしまった手前意見を変えるのも気に食わない。


「そ、っかぁ……いつからなの?」

「来年の春から一年よ」


よかった、まだあと何ヶ月かある。

実際王宮に行けたらわかることも増えるだろうと信じていたし、クレアさんから聞いた話によれば王宮には図書館があるらしい。

市街地や城下町とは比べ物にならないくらい広くて、たくさんの本がある。

勉強するのはもってこいだ。


「頑張ってみるね」

(二人に恩返しができるなら)



それでも、来年の春には私はこの家を出なくちゃいけなくなってしまった。

もちろん終われば帰っていいんだろうけど、一年間は帰れないらしい。


(それなら、名前じゃなくてお義父さま、お義母さまって呼びたい)


二人はいきなり呼び方を変えても受け入れてくれるだろうし、なにより私がそう呼びたい。

ちょっとずつでいい。ちょっとずつでいいから、頑張ろう。



「……お義父さま、お義母さま」


口馴染みが良くない、新しい二人の呼び方。

リリア相手に練習も沢山した。

けど、恥ずかしいが買っちゃって、中々呼べずにいる。


「今日こそは言えるかな?」

「旦那様も奥様もユーリア様がそう呼ぶことを願っておりますよ」

「分かってる!もう……頑張るね」

「応援しております」


リリアから激励の言葉をもらって、いつも通りクレアさんのお手伝いをする。

メイドがやってくれることの方が多いし、私は上手じゃないけど、ありがとうって笑ってくれるのが嬉しくていつもできる範囲のお手伝いをしてる。


「いつもありがとうね」

「ううん!クレアさん……お義母さまの役に立てるのが嬉しいから」

「………まあ!!」


お義母さまが喜んだ顔をした。


(こんなに喜んでくれるなら、最初から呼べばよかったな)



ここまで読んでいただきありがとうございます!


以下第9話の登場人物

主人公 - ユーリア・ノアール

義母 - クレア・ノアール

義父 - セフィロト・ノアール

メイド - リリア・レビアーノ

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