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第6話



 ようやくノアール子爵邸にも慣れてきて、迷子にならなくなった。

周りの大人はみんな私を腫れ物みたいに扱って、気を使おうとしてくる。


「おはようございます、ユーリア様」

「あ、おはよう」


唯一、普通に接してくれるのは最初に案内してくれたメイドさんだけだ。

それ以外は、私の方を見ていても目が合えば逸らされてしまう。


「おはよう、ございます」

「おはよう。ユーリアちゃん!もう、敬語じゃなくていいのよ」

「クレアさん、でも」

「ユーフィだって敬語じゃなかったし、貴方だって前は敬語じゃなかったわ」


朝起きて、食堂へ行く。

そこには既にクレアさんがいて、食事の準備をしていた。


敬語じゃなくていい、って言ったって。


子爵家の中ではお金があるらしいけど、朝ごはんだけはクレアさんが用意しているらしい。

クレアさんが譲らなかったみたい。

ここに来てから毎日食べているけど、いつも美味しい。


「でも、私は……」


目線で、気にするな、いつも通りでいてと訴えられる。

少し俯いて、朝ごはんを食べる。

暖かくて、優しい味。


夜、眠れなくて廊下を歩いていたらセフィロトさんのお部屋から光が漏れているのを見た。

私は好奇心に抗えず、部屋を覗いた。


「……でも、もう三ヶ月よ」

「あの子にはあの子のペースがあるんだ」

「母親とまではいかなくても、もう少し打ち解けたいわ」


私の話、かな。

そう、私がノアール子爵に来てから三ヶ月が経った。

未だにお母さんとお父さんのことは夢に見る。

あの夢と、事故と、全部。


(……ちゃんとできなくて、ごめんなさい)


(もう、寝よう)


またあの夢、見るのかな。



またその夜、夢を見た。

いつもの夢とは違う夢。お父さんとお母さんは出てこなかった。


私は透明になっていて、どこか広いお屋敷を歩いている。


『……様はどこだ!?』

『…様もいらっしゃらない!』


慌てている燕尾服を来た男性と、騎士服の男性。

誰がいないんだろう。


『なんの騒ぎですの』


私の真後ろから声が聞こえる。

後ろを振り向くと、長い髪の毛をして、真っ白のドレスを着た女の子がいた。


『--様、それが………』



『なんですって!?』


誰かがいなくなったことを聞かされたのだろう。


『もう結婚式が始まるというのに』


結婚式?花嫁さんはこの女の子だとしても、いなくなった誰かと結婚する予定だったのかな?


『--様!……様の部屋にこんな書き置きが』

『…………そう。そうなんですのね』


どういうこと?

徐々に遠く離れていく女の子。

いや、離れていってるのは私だ。

夢にしてはリアルで、でも現実とは思えない。



目が覚めたら、もう部屋は明るくなっていた。

太陽がほとんど登りきっていて、朝ではないだろう。

今日の夢は、結局なんだったの?


頭がぼーっとして、上手く働かない。


「おはようございます。ユーリア様」

「……おはよう、リリアさん」


もうおはようの時間ではないと思うけれど。


「朝食の準備が整っております」

「ありがとう、急いでいくね」


食堂までの道を歩く。

これも、もういつも通りのルーティンになっている。


「少し寝坊してしまいました…おはようございます。セフィロトさん、クレアさん」

「あら。お寝坊さんね。おはよう、ユーリアちゃん」


昨日は二人とも少し寝るのが遅かったと思うけど、決まった時間に起きれるらしい。

羨ましいな。


ご飯を食べ始めても集中ができず、ずっと夢の女の子を思い出してしまう。

長い髪をしてた。光に透けると紫に見えるような黒髪で、真っ直ぐに降りていた。

真っ白な特別なドレスと似合っていて、綺麗だった。


(結婚式、だったんだよね?)


多分、相手の人がいなくなったんだ。誰かと一緒に。

でも、女の子はそんなに辛そうな顔をしてなくて、分かっていたような顔をしてた。

あの夢は、本当に夢なんだろうか?


「クレアさん、あの……」

「ん?どうしたの?」

「今日……いや、なんでもないです」


夢のことを話そうと思ったけど、やめよう。

変に心配をかけたくない。


「ユーリアちゃん、認めてくれなんて言わないわ。ただ、私は貴方の母親なの。気になったことがあればなんでも聞いて?」

「クレアさん……じゃあ、貴族の中で黒髪の女の人っていますか?紫にも見えるような」

「紫にも見える黒髪?そうね、何年か前に王宮であった舞踏会でいたような気がするわ」

「…!本当ですか?!どんな人?」

「気難しい人よ。私たちよりも爵位が上だから話す機会はなかったけれど、見てるだけで分かったわ」


気難しい人?そんな人には見えなかった。

でも、多分夢の子は貴族だ。

立ち振る舞いと、騎士の人からの呼ばれ方で分かる。


「多分、娘かしら?を連れているのは見えたわ。でも……」

「でも…?」

「なんでもないわ。その子はカーテシーがすごく上手だったわ。まだ十歳にも満たなかったはずなのに」


その子も同じ髪色なのかな?

クレアさんの言葉が詰まったのは気になったけれど、それよりもその子のことが気になった。

なんでだろう?


「会う機会、無いですか」

「ユーリアちゃんの頼みでも難しいわ。見かけることは出来ても会って話すのは……」

「そう、ですよね」


その子のことが気になって仕方がない。

知らないはずなのに、知っているような。

あの子と会って話せたら、夢のことも分かるかもしれないのに。


「うふふ。ユーリアちゃんが私を頼ってくれて嬉しいわ。これからも、何か知りたいことがあったらなんでも聞いてね。私が答えられる範囲にはなるけど、全部伝えるから」

「ありがとう、ございます!」


私から少し質問をするだけでこんなにも喜んでくれる。

クレアさんはずっと、こんな人だ。

優しく、気になったことは全部教えてくれる。

昔遊びに来たときだってそうだった。

敬語、やめていかないとな。



ここまで読んでいただきありがとうございます!


以下第6話の登場人物

主人公 - ユーリア・ノアール

義母 - クレア・ノアール

義父 - セフィロト・ノアール

メイド - リリア・レビアーノ

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