第5話
お母さんが亡くなってから、一日が過ぎた。
ミシェリアおばさんとテオドアおじさんはセフィロトさん……ノアール子爵に連絡をとっているらしい。
私は、今は孤児院にいた。
まとまったらミシェリアおばさんが話に来てくれるらしい。
「まだかな」
「なにが?」
「お迎えだよ」
「ふーん、来るものなの?」
「うん、だって来るって言ってたもん」
孤児院に入ってから話したのは、男の子だけ。
フィリップっていうらしい。
「フィリップは来ないって思ってるの?」
「だって、俺三歳からいるけどお迎えが来た人なんていないよ」
吐き捨てるように、フィリップがそう言う。
私より二歳年上で、私よりずっとひとりぼっちの時間が長い。
笑ってくれないし、こっちを見てもくれない。
ミシェリアおばさんが来る前までに、フィリップと仲良くなれたらいいな。
(なんて、考えてたのに)
あっさりとお迎えが来てしまった。
じゃあね、とフィリップに手を振ってミシェリアおばさんと共にセフィロトさんの元へ向かう。
安っぽい馬車に乗って、がたがたと揺れる道を急ぐ。
メインの大きな鎖橋を渡ったら見えるのは、貴族たちのお屋敷とこの国の王家が住む王宮。
あまり詳しくは無いけど、お母さんが元々貴族を相手に商売をするおうちらしくて、色々と教えてもらった。
セフィロトさんの家なら今までも何回か行ったことがある。
お母さんとセフィロトさんのお嫁さんのクレアさんが仲良かったんだ。
橋を渡ってすぐ左の道を入れば見えるノアール邸。
王宮周りなんて高すぎて住める人すら少ないのに、集合住宅じゃなくて一軒家を持っている。
まあ、ここには集合住宅がそもそもないんだけど…。
「着いたよ、ユーリアちゃん」
「あ、ありがとう……」
「ノアール子爵様、いるかしら」
邸の呼び鈴を鳴らす。
すると真正面に見える玄関からメイド服を着たお姉さんが出てきた。
「お待ちしておりました。ミシェリア様、ユーリア様」
「こんにちは」
「旦那様はこちらです」
何度も来た家だけど、緊張する。
今までとは訳が違うからかな。
「ユーリアちゃん、大丈夫だからね」
「あっ……う、うん。ありがと……」
俯いて歩いていたら、ミシェリアおばさんに慰めてもらった。
それでも私、これからどうしたらいいんだろう。
「待っていたよ、ユーリアちゃん」
「セフィロトさん……こんにちは」
部屋の一室に案内され、そこで待っていたのはセフィロトさんとクレアさん。
メイドは知らない間に退室していて、部屋の中にいるのは、セフィロトさんとクレアさん、ミシェリアおばさんと私だけだ。
そこからはトントン拍子で話が進んだ。
元々二人は私を可愛がってくれていたから、快く養子として迎え入れてくれて、私だけが、助かってしまった。
「じゃあ、ユーリアちゃんをお願いします」
「ミシェリアさんも、ここまでありがとうございました」
「ミシェリアさん、またユーリアちゃんに会いに来てくださいね」
「はい、また見に来ますね!」
私だけ置いてけぼりで話が終わっていく。
私はセフィロトさんとクレアさんの娘になったらしい。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
下記第5話の登場人物
主人公 - ユーリア・アミリル(以降ユーリア・ノアール)
幼馴染の母親 - ミシェリア・ナイトレイ
養父 - セフィロト・ノアール
養母 - クレア・ノアール
孤児院の子 - フィリップ・???




