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第3話 ※流血表現あり


 場面がスローモーションになって見える。

向かってくる馬車も、走ってくるお父さんも。


「お母さんったら!ねえ!おかあ、さ」


お母さんは馬車の方を見て唖然としていた。

あのスピードでぶつかってしまったら。


その瞬間、何かが脳裏を過ぎる。

違う、これは私の記憶だ。



『お……さん?』

『あ、あああああ』


泣いている声と、誰かの血。

目の前が真っ赤に染まって、鉄のようなツンとした匂いが鼻をつきぬける。


『な、んで?』


私は呆然として、血塗れになったまま起き上がらない誰かを見つめている。




(っ!なにこれ、お母さん、死んじゃうの!?)


刻一刻と馬車は迫っていて、私は動けなくて。

どうしたら、いいの?

さっきいきなり出てきた場面は何?


馬車がお母さんに当たる。

そんなとき、お母さんが誰かに押された。


(お母さん、たすかっ…た?)


道に倒れ込んでるお母さんは、押されたときの擦り傷はあれど、私の記憶の中の血塗れの姿にはなっていなかった。


「っつ…」

「お母さん、大丈、ぶ?」


血塗れだ。

誰かの血。さっき、見た、誰かの血。

馬車の方を振り返ると、見覚えのある黒髪が地面に倒れ込んでいた。


「おとうさん?」

「え、あ、あああああっ」


お母さんは目を見開いて、絶叫した。

私は呆然として、倒れ込んだまま起き上がらないお父さんを見つめていた。


「ユー、フィ、ユーリ、ア……」


お父さんがか細い声で私たちを呼ぶ。

その瞬間私はハッとして、お父さんに駆け寄った。


「お、お父さん!そ、そんな、え、なんで」

「ローアン!ローアン…!やめて、やめて!!」


「きみたち、が……」


事切れたように、意識を失うお父さん。

いや、いやだ。なんで、助けられなかったの?


王宮騎士が事故現場にやってくる。

衛兵もやってきて、御者が馬の制御ができず人を轢き殺してしまったがために捕まった。


お父さんは、王宮騎士の人に連れてかれてしまった。

お母さんは泣き崩れて、スカートが汚れるにも関わらず座り込んでいるし、私も立ち竦んだまま動けなかった。


私が、もっと早くに気付いてお母さんを連れ戻してたら。

お父さんは。



 その後はどうやって家に帰ったのか分からなかった。

お母さんは部屋から出てこないし、私はさっきの出来事が頭をグルグルと回って離れない。


ずっと、お母さんのすすり泣く声が聞こえてくる。

騎士団の方で預かられたお父さんの遺体はまだ帰ってこなくて、取り残された私はどうすればいいのか、分からなかった。



 数日後、市街地にある集団墓地にお父さんのお墓を作った。

お墓参りは幼なじみであるエドガーとその家族と一緒に行った。


お墓の前で手を合わせてお父さんのことを思い出す。

お父さんは、いつも私に優しかった。

私に甘くしすぎてよくお母さんに怒られてた。


「ローアンさんったら、ユーフィさんを守るために亡くなるだなんて」

「ほんと、憎たらしいわ」


目を真っ赤に晴らして吐き捨てるようにそういうお母さんは、また、涙が溢れそうになっていた。

お母さんに寄り添うミシェリアおばさんを、痛々しいめで見つめるテオドアおじさん。


「ローアンさん、気の毒だったな」

「……エドガー。気の毒もなにも……」


私を気を使ってくれたのは分かる。

でも今は、そんなの要らない。


「……何があったんだよ。父さんも母さんも教えてくれないし」

「お母さん、を庇ったの。暴走してた馬車から」


一言そうか、と呟いてエドガーはお父さんのお墓に向き直る。


あの一瞬、思い出したあの光景はなんだったんだろう。

数日前に見た夢と似ている。

考え込むのは苦手なのに、考えなきゃいけない。


お父さんのお墓に手を合わせていると、また何かを思い出した感覚がした。


これ、は、私の家?

私の家の周りに衛兵がたくさんいる。

なんで…?



ここまで読んでいただきありがとうございました!

思ったより流血表現多くなって滝汗……。


以下第3話の登場人物

主人公 - ユーリア・アミリル

母親 - ユーフィ・アミリル

父親 - ローアン・アミリル

幼馴染 - エドガー・ナイトレイ

エドガーの母親 - ミシェリア・ナイトレイ

エドガーの父親 - テオドア・ナイトレイ

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