第1話
ここは、どこだろう。
小さな家で目が覚める。
最後に見た天井よりも低い。
「いっ、っ……いったた……」
酷い頭痛がして、目眩もする。
私は、どうしてたんだっけ?
確か、確か……。
『ユーリア、もうここから出さないよ』
『ど、どうしてですか!?』
『どうして……?君がいちばんわかっているんじゃないかい?』
確か、閉じ込められたんだ。
どこか知らないお屋敷で、それで。
『ここは、どこですか』
『うーん。王都からはそう遠くないけど、でもみんな、探しには来ないよ』
そうだ、王都。王都に家が、帰る場所がある。
あれは家に帰るときだった。
王宮で一年暮らしてて……。あれ、なんで一年暮らしてたんだっけ?
『ユーリアは僕とずっと、一生、ここで暮らすんだ』
恍惚とした笑みで私を見つめる、知らない人。
この人は、誰?
『-様、やめて、帰して、お義父さまとお義母さまのところにっ…』
『…………無理だよ。もう君は……』
名前がよく聞こえない。
この人の言ってることもよく……。
「…リア!ユーリア!」
「ああ、ユーリア!起きて!」
うるさい、聞き慣れた声だ。
「お父さん、お母さん、どうしたの……」
「あなた、魘されてたわ。大丈夫?」
「う、うん……なんか変な夢みてたかも」
変な夢。多分、たしか、変な夢なはず。
どんな、夢だったっけ?
「もう、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、お母さん」
昨日の夜からずっと魘されていたみたいで、お母さんはずっと心配していたみたいだ。
お父さんは心配してくれていたが、仕事だったのでそのまま見送った。
「二人とも心配しすぎ」
「もう、仕方ないでしょ?あなたが寝てる間に魘されるなんて、今まで無かったんだもの」
「たまにはあるよ〜悪夢でも見てたんだって」
悪夢。そうだったのかな。
自分の中でもどう扱えばいいのか分からない、あまり覚えていない夢。
少し、いや、思ったよりも大きなモヤモヤが胸を支配する。
「もう、考え込んじゃって。どんな夢を見たの?」
「……それがあんまり覚えてなくて。でもなんか」
「なんか、怖いの?」
「こわ、くはないかな。なんだろう。忘れちゃダメな気がして」
そう、そうだ。忘れちゃダメな気がしたんだ。
なんでかは分からないけど。
「うーん…でも、あんまり気にしすぎてもよくないのかな」
「ユーリアは気にならないことはとことん気にしない子だから、気になる時点で、考えるべきなんじゃない?」
「そ、かなぁ」
お母さんは私をよく見てる。
確かに私は気にしなくていいことは気にしないし、どうでもいいと思ったら考えない。
お母さんと二人、並びながら洗濯物を干す。
少し涼しい秋風がお母さんと私の間を突き抜けて、洗濯物が揺れる。
「あ!今日、ミシェリアさんと約束があるんだったわ。ユーリアも来る?」
「ミシェリアおばさんと?私も行っていいなら行きたいな」
「そうしましょう!新しくカフェが出来たのよ」
「お母さん、そういうとこ好きだよね」
そこからはお母さんの動きが一段と早くなって、あっという間に洗濯物が終わった。
いつもよりオシャレをして待ち合わせ場所だという噴水広場へ向かう。
「ミシェリアさんとの約束は久しぶりだから楽しみだわ」
「そうだね。私も最近エドガーと会ってないなぁ」
「エドガーくん?確かに見かけないわね」
エドガー。私の幼なじみ。
昔はよく遊んだけど最近はあんまり会わないんだよね。
「ユーフィさん!」
「ミシェリアさん!お久しぶりです」
「こちらこそ、久しぶりです。ユーリアちゃんも久しぶりだね」
「久しぶりでーす!」
ミシェリアおばさんはいつ見ても綺麗だなぁ。
「今日はエドガー来ないって言われちゃった」
「あら、エドガーくんはあまり着いてこないのかしら」
「ええ!最近のあの子ったら……」
二人はお店に着く前から会話が耐えない。
本当に仲がいいんだろう。
噴水広場からそう遠くないお店で、少し歩いただけでお店の看板が見えてくる。
歩いているのが貴族も来るような高級住宅街だったからか、高そうな服を着た男性とすれ違う。
(誰だろう、あの人)
秋の風が吹いて、スカートを柔らかく揺らす。
透き通った金髪に、すらっとした上背。貴族、なんだろうな。
なぜか後ろ髪引かれる思いでカフェの扉を開く。
「いらっしゃいませ」
「三人です」
「こちらの席へどうぞ」
カフェは落ち着いた雰囲気で、流石は高級住宅街だと思う。
男爵位くらいの貴族と、お金持ちの平民と、有名な商家とかが暮らす街は流石に雰囲気が違う。
「綺麗なところだね」
「そうね!来てよかったわ」
「ええ。ユーフィさん、誘ってくれてありがとう」
「いえいえ!こちらこそ、ミシェリアさんに来てもらえて嬉しいです」
メニュー表を眺めながら母達の会話を耳に入れる。
楽しそうにしてる母達を見て私は少し心が温まった。
「私、これにする!」
選んだのはザッハトルテとストレートティー。
どこのでもチョコレートには目がない私は必ずチョコレートのものを頼むくせがある。
紅茶は絶対にストレートだ。
「あら、決まった?私はどれにしようかしら」
お母さんは好きな食べ物が多いからいつも悩んでる。
暫くして、店員さんが私たちが頼んだものを運んできた。
全部が美味しそうで、綺麗で、私は目を輝かせてザッハトルテを見る。
「ふふ、ユーリアちゃん、ザッハトルテ美味しそうね」
「うん!」
ひと口食べるとトロリとしたチョコが口の中で溶けて、甘い甘いケーキが口の中いっぱいに広がる。
それを少し苦めの紅茶でリセットするのが私のお気に入りだ。
「ほっぺたが落ちちゃいそう……」
「ん、ほんと美味しいね」
ミシェリアおばさんはシャルロットケーキを頼んでいて、お母さんはキルシュトルテを頼んでた。
「お母さんキルシュトルテ!?一口ちょーだい!」
「仕方ないわね、その代わりザッハトルテも一口ちょうだいな」
「やった!」
キルシュトルテもすごく美味しい。
「やっぱりチョコが最強……」
「もう、ユーリアったら」
ミシェリアおばさんにも少し微笑まれて、笑いが絶えない、楽しい一日中だった。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!
主人公 - ユーリア・アミリル
母親 - ユーフィ・アミリル
父親(今回出番0) - ローアン・アミリル
幼馴染の母親 - ミシェリア・ナイトレイ
幼馴染(今回出番0) - エドガー・ナイトレイ
名前ありの登場人物が出てきたときはこちらに書きます〜
一区切り着いたらキャラ紹介も書きたいな




