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妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗


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第27話 見知った顔

 私は、社交界に疎い。というよりも、平民は貴族のことなんて知らないのだ。

 ヴェルード公爵家のことだって、元々はそんなに知っている訳ではなかった。その領地で暮らしていたため、公爵家の名前と大まかな家族構成くらいまでしか知らなかったのだ。


 それ以上のことなど、辺境の村でひっそりと暮らしている私達には知る必要がないことであった。もちろん、大人の人達はもっと知っていたのだろうけれど、村の子供には正直関係がないことだったのだ。ヴェルード公爵家と関わり合うことも、ない訳だし。


 そんな私でも、詳しく知っていることがあった。

 それはこのアルフェリド王国の王族のことである。

 そちらとも関わりがないのだが、ヴェルード公爵家のことよりも知っていた。名前や何をしているのかなどが、王族の場合は平民にも大々的に発表されていたのだ。


「それじゃあ、俺のことも知っていたのか……」

「ええ、私と同い年の王子だと聞いていました」

「なるほど……」


 舞踏会の休憩中、私は客室でロヴェリオ殿下と言葉を交わしていた。

 ロヴェリオ殿下のことも、聞いたことがない訳ではない。

 ただ、彼のことを耳にする機会というものは、それ程多くなかったと思う。基本的に、年齢が高い王女や王子のことの方が、話題にはなりやすいのだ。


「僕のことも知っていたということかな?」

「あ、はい。それはもちろんです。リチャード殿下は、次期国王様でもありますし」

「まあ、どうなるのかはわからないのだけれどね」


 目の前にいる穏やかな青年、第一王子であるリチャード殿下のことは、特に良く聞いていた。

 次期国王の筆頭候補ということもあって、彼が何かをするとそれが瞬く間に王国中に広まっていくのだろう。それは末端の村にいる私達の耳にも、きちんと入ってくる程だった。

 とはいえ、そこまで伝わるまでに色々と脚色されていたのかもしれないし、それらの噂を全て鵜呑みにするべきではないだろう。リチャード殿下とは、あまり色眼鏡をかけずに接していった方が良い気がする。


「でも、クラリアさんとこうして会えて良かったよ。ずっと気になっていたんだ。君はただでさえ厳しい立場にある訳だし、色々と起こっていたようだからね」

「あ、はい。でも、ロヴェリオ殿下の助けなどもあって、なんとかなっています」

「それなら良かった。ロヴェリオもよく頑張ったね」

「いや、まあ、俺はそんなに何かした訳ではないんだが……」


 リチャード殿下は、穏やかな笑みを浮かべていた。

 彼は噂では優しい王子様であると言われていたが、それは本当であるらしい。その人を包み込むような雰囲気に、私は思わず笑みを浮かべていた。


「他の兄弟達も、クラリアさんには会いたいとは言っていたけれど、今日はどうなるか微妙な所かな……」


 リチャード殿下は、顎に手を当てて考えるような表情をしていた。

 王族の方々は、きっと忙しい身なのだろう。というか少なくとも一人とは絶対に会えないということを、私は知っている。なぜならその人は、今この王城所か国にいないからだ。


「えっと、ラナメシア姫は今この王城にはいらっしゃらないのですよね?」

「ああ、姉上のことか。クラリアも知っているんだな?」

「ええ、もちろんです。というか、この国で知らない人の方が少ないのではありませんか?」


 ロヴェリオ殿下の言葉に対して、私は率直な意見を述べていた。

 この国の第一王女であり、王家の長姉であるラナメシア姫は、隣国に嫁いだと聞いている。

 それは、二国の和平を示すための結婚であるらしい。確か、そんなことを村にいた時に聞いたことがある。


「クラリアさんの言う通り、姉様は今この国にはいないね。帰って来るのは、こちらの国で何か行事などがある時になるかな……まあでも、姉様もクラリアさんのことは気にしていたよ」

「そうですか……」

「他の二人は王城にいるから、暇になったら来るとは思うよ。とはいえ、舞踏会が終わるまでに間に合うかはわからないけれどね」


 私達は今回、舞踏会が終わったらすぐに帰ることになっている。

 私はともかくとして、エフェリアお姉様やオルディアお兄様も忙しい身だ。王城に留まっておくことは、できないらしい。

 という訳で、ラナメシア姫とリチャード殿下を除く王族達と会えるかは、舞踏会が終わるまでにそちらの予定が終わるかによって決まるということになる。


「まあ、会えたらラッキーくらいに思っていればいいだろう」

「そうですね……」

「僕達としても、こういった形で挨拶をするのは本意という訳ではないのだけれどね。もう少しちゃんとした場で、それぞれの兄弟が揃って挨拶できると良いのだけれど」

「いえ、それが難しいことだということは、流石の私でもわかっていますから……」

「難儀なものだね。アドルグ兄様やイフェネア、ウェリダンにも会いたいのだけれど。エフェリアやオルディアとも、満足に話せたとは言い難いし」


 リチャード殿下は、ゆっくりとため息をついた。お兄様方と楽に会えない現状に、彼は少し不満があるようだ。それが仕方ないことだということは、わかっているだろうけれど。

 ちなみにエフェリアお姉様とオルディアお兄様は、現在レフティス様と話している。舞踏会にて、二人の婚約を大々的に示すための準備を行っているのだ。

 結局の所、私以外のヴェルード公爵家の兄弟も忙しくしている。やはり立場上、落ち着いてゆっくりと話すなんてことはできないということだろう。

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