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妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗


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第17話 真意を探るために

 私はエフェリアお姉様、オルディアお兄様、そしてロヴェリオ殿下とともにドルイトン侯爵家の屋敷の庭にいた。

 辺りには、他の貴族達の令息令嬢達がいる。その人達も、ディトナス様に招かれた人ということなのだろう。

 その件のディトナス様は、庭の中心で笑顔を浮かべている。主催ということもあって、色々な人と挨拶をしているようだ。


「さて、僕達も行こうか」

「あ、はい」


 オルディアお兄様の言葉で、私達はディトナス様の方へと歩き始めた。

 すると彼は、私達の方へと視線を向けた。その表情は、少し強張っているような気がする。それは私の気のせいだろうか。


「……ヴェルード公爵家の方々ですか?」

「ええ、そうですよ。私はエフェリアと申します」

「僕はオルディア」

「えっと、クラリアです」

「あ、こっちはロヴェリオ殿下です。私達とはいとこの関係で、今日はせっかくなので一緒に来てもらいました」

「歓迎しますよ。王家の方とお友達になれるなんて光栄ですからね」


 ディトナス様は、エフェリアお姉様の言葉に笑顔を浮かべていた。

 ただ、彼は私の自己紹介の時には、また少し表情を強張らせていたような気がする。多分これは、気のせいではない。彼は私に、思う所があるようだ。

 となると、少し心配になってくる。本当に今回の訪問は大丈夫なのだろうか。


「……さてと、まあ既にお聞きかとは思いますが、当家はヴェルード公爵家との婚約を望んでいます」


 そこでディトナス様は、小声でそのようなことを呟いた。

 婚約の件については、当然のことながら把握しているらしい。それなのに、その婚約の対象である私に対して渋い顔を見せているということは、彼自身は乗り気ではないということだろうか。


「僕としても、その婚約については是非とも叶えたいものだと思っています。当たり前のことではありますが、公爵家との繋がりは欲しいですからね」

「え? あ、はい。そうですか」


 ディトナス様は、エフェリアお姉様に対して話しかけていた。

 彼は私の方を見向きもしない。それでわかった。彼は私との婚約について、乗り気ではないということなのだ。

 そういえば、ドルイトン侯爵が私を挙げていたというだけで、彼がそうだとは聞いていない。つまり親子の間で、認識の違いのようなものがあるということだろう。


「まあ、とりあえずお茶会を楽しんでください。せっかくの場ですからね」


 ディトナス様は、私に視線を一瞬だけ向けてきた。

 その視線というものはとても鋭くて、少し怖い。その目を見て思い出すのは、二人の令嬢のことだった。彼はあの二人と、同じような目をしているのだ。


「なんか嫌だなぁ、私は……」

「まあ、気持ちはわかるよ」


 エフェリアお姉様の呟きに対して、オルディアお兄様はゆっくりと頷いた。

 それは恐らく、ディトナス様の態度についての話だろう。妹思いの二人は、私のことを無視したり厳しい視線を向けたりした彼のことが、気に入らないのかもしれない。


「とはいえ、彼の気持ちについて理解できないという訳でもない。色々な事情を考慮すると、嫌がることだってあるかもしれない」

「でも、仮に私と彼が婚約するのだとしても、結局クラリアは妹になる訳だし、それなのにあんなわかりやすい態度をするのは、ちょっとあれじゃない?」

「彼の方は、まだ僕達の距離感というものを計りかねているのかもしれない。ある程度接したら、その態度を改めるという可能性もあるかもね。ただ明確なのは、クラリアとの婚約は無理だという話だ。それは多分、もう揺るがないと思う」


 オルディアお兄様の結論に関しては、私も同意である。

 ディトナス様と婚約した所で、良いことにはならないと思う。彼にとっても私にとっても、お互いは良い相手ではない。

 もちろん、私はヴェルード公爵家の判断に従うつもりではあるが、できれば彼とは婚約したくないと思っている。それはきっと、彼も同じだ。


「まあ、無理をして婚約する必要なんて、ないだろうさ」

「ロヴェリオ殿下……」

「もちろん、家同士の事情でそうしなければならない時もあるかもしれないが、今はそういう時という訳でもないだろう」


 そこでロヴェリオ殿下が、私の肩に手を置いてそんなことを言ってきた。

 彼の表情は、心なしか明るいような気がする。何か良いことでもあったのだろうか。

 何はともあれ、ロヴェリオ殿下は私を励ましてくれているようだ。それはとてもありがたい。


「そうですよね。今回は結局、様子見みたいなものである訳ですし……」

「そうだ、つまり駄目だとわかったことも充分な収穫といえる」

「そうなると面倒なのは、私だよね? あの人すごく見てきたし……」

「まあ、ヴェルード公爵家との婚約を望んでいることは確かなんだろうね」

「改めて、様子を見る必要があるってことかな……」


 私との婚約の話というものは、エフェリアお姉様との婚約の話となった。

 するとオルディアお兄様の表情が、少しだけ変わった。その表情に、陰りが見える。

 それは恐らく、エフェリアお姉様の婚約について、複雑な感情を抱いているのだろう。双子ということもあって、色々と思う所があるのかもしれない。

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