表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/35

第14話 浮かんできた疑問

 お母さんとの再会を喜んでいた私だったが、すぐに疑問が湧いてきた。

 何故、お母さんがヴェルード公爵家に来ているのだろうか。その意味というものが、よくわからない。普通に考えて、当主の浮気相手を招かないと思うのだが。

 ヴェルード公爵夫人の反応というのも、私にとっては気になるものだった。どうしてお母さんと一緒にいて、あんなに笑顔だったのだろうか。


「えっと、ここは一応イフェネアお姉様の部屋で……私も一緒に暮らさせてもらっているから、私の部屋になっていて、あ、でもちゃんと許可は取っているから安心して。お母さんは……そこに座って」

「ええ」


 お母さんと会うのは、随分と久し振りである。

 そのためか、少し緊張してしまう。状況が理解できていないというのも、私の動揺を加速させていた。

 とはいえ、こうしてお母さんと過ごせるというのはとても嬉しい。色々と話したいことはある。ただまずは、状況を整理したい所だ。


「……それで、お母さんはどうしてヴェルード公爵家に来たの?」

「どうして、と言われると少々困ってしまうわね。元々そういう予定ではあったのだけど」

「元々そういう予定だった……村に遣いの人が来た時から、ってこと?」

「その前からね。クラリアが知らない時から、今回のことは決まっていたの。これは一応、秘密なのだけれど、まあもう漏れても大した問題にはならないから、あなたにも話しておくわね」


 お母さんの言葉に、私は固まっていた。

 てっきりお母さんも、私も同じく何も知らずにヴェルード公爵家の事情に振り回されているものだとばかり、思っていたからだ。


「驚くのも無理はないわね。ごめんなさい、黙っていて。でもこれに関しては、注意しなければならないことだったの。誰かに悟られたら、色々と問題になっていたかもしれないから」

「う、うん。そういうことは、私も多少は理解できるようになってきたから、わかるよ。でも、お母さんとヴェルード公爵家の関係がわからないというか……」

「ああ、えっと、私はヴェルード公爵家と険悪な関係ではないわ。というよりも、旦那様と奥様が寛大な心を持っているというか」

「うーん……」

「クラリア? どうかしたの?」


 私は、首を傾げて考えることになった。

 なんというか、お母さんのヴェルード公爵夫妻に対する言葉には違和感があった。


 旦那様と奥様、その呼び方には何かがあるような気がする。それはなんというか、まるで屋敷にいる使用人の人達みたいな言い方だ。

 そこまで考えて、私はある仮説を思いついた。もしかして、お母さんはどこかの家で使用人でもしていたのではないだろうか。


「お母さんは、メイドさんだったの?」

「え? どうしてそれを……」

「やっぱり……」


 私の質問に対して、お母さんは驚いたような表情をしていた。

 しかし、これは流石に私もわかる。ヴェルード公爵家の屋敷で過ごしていた故に、使用人の人達の口調というものは染みついているのだ。

 だから、お母さんの言動からわかった。ヴェルード公爵――つまりはお父様とどこで出会ったのかも説明がつくし、要するにお母さんはこの屋敷に仕えていたということなのだろう。


「お母さんは、ヴェルード公爵家のメイドさんだったんだね? それでお父様と浮気しちゃったの?」

「えっと……まあ、大まかに説明するとそういうことになるのだけれど」

「ヴェルード公爵夫人は、よくお母さんを屋敷に入れてくれたね。優しい人だって聞いてはいたけど、本当に寛大な人なんだ」

「まあ……」


 私の言葉に対して、お母さんはゆっくりと目をそらしていた。

 娘である私は、それがどのような意味があるのかがわかる。多分、私も予想というものは当たっている訳ではないのだ。

 とはいえ、外れているという訳でもなさそうである。その微妙な反応からは、それが読み取れた。


「何か間違っているの?」

「……ええ、その、私は元々ヴェルード公爵夫人に仕えていたメイドだったのよ」

「え?」

「それから奥様について、こっちに来て……色々とあったのだけれど、奥様とは今でも良好な関係を築いているというか、繰り返しになるけれど、寛大な心で接してもらっているの」

「……よくわからないや」


 お母さんの説明に対して、私はあまり納得することはできなかった。

 お母さんとヴェルード公爵が浮気した結果、私が生まれた。それは紛れもない事実であるはずだ。それが問題だったから、私は二人の令嬢に罵倒されたりもした。

 ヴェルード公爵夫人とお母さんがかつて主従の関係にあったとしても、それで浮気を許すという訳でもないような気がする。むしろ怒るんじゃないかと、私なんかは思ってしまう。


 考えれば考える程、この問題はわからなくなってくる。

 そこで私は、考えるのをやめた。お母さんもなんだか、全部話しているという感じではないし、考えるだけ無駄なのかもしれない。

 二人の仲が良いのは、私にとっては悪いことではない訳だし、そういうことだと思っておこう。


「お母さんは、いつまでここにいられるの?」

「ああ、それについてはずっと……」

「ずっと?」

「ええ、ここでお世話になるということになっているわ」

「それは……嬉しいね」


 私は重要なことをお母さんに聞いた。

 それに対して、何よりも嬉しい言葉が返ってきた。

 これからはお母さんと一緒にいられるようだ。それに私は喜びを感じながら、笑顔を浮かべるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ