プロローグ
漆黒の空に浮かぶ、魔王城。
その玉座に座すは、魔王ヴァル=グラド。
彼の足元には、焼け落ちた都市の模型と、降伏した異世界の王たちのミニチュアが並んでいた。
「ふはははは!我が魔王軍、ついに第七世界《アーク=ゼルム》を完全制圧した!
抵抗勢力はすべて灰となり、民は我が名を讃えて泣いている!」
側近の参謀長グルドゥ=メルメルが、魔力スクリーンを操作しながら進言する。
「魔王様、次なる侵略先の選定を。候補は三つ。
一、魔力濃度が高いが、魔法文明が未発達の第十三世界《ル=ガル》。
二、魔力は薄いが、文明レベルが高く、資源豊富な第二十七世界《地球》。
三、聖なる魔力に覆われた神聖第一世界《セラフィ=エル》」
参謀長が最後に言い淀んだのを魔王は見逃さなかった。
「セラフィ=エルは時期尚早だと言いたいのであろう……ならば、地球だ。
魔力が薄い?構わん。文明があるなら、我が軍の魔法で蹂躙できよう。
まずは人間どもに気づかれぬよう、静かに拠点を築く。山奥などがよかろう。
ふはははは!地球よ、震えて待つがよい!」
こうして、魔王軍は地球侵略を開始した。
だが彼らはまだ知らなかった。
魔法を拒む大地にて生をうけし“未知なる怪物”の存在を。




