表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

第5話 <人生ゲーム>

あくる日、芽郁は集めた紙をビリビリに破いて処分した。しかしその夜には、そんな芽郁をあざ笑うかのように、木には全く同じ紙が生えてきた。何か手はないかと何日か観察を繰り返したが、切っても破っても燃やしても、効果はないようだった。


憂鬱な日々が続く中、気晴らしでもしようと、芽郁はエレフから本を取り出した。白い表紙には「わすれもの」とタイトルだけが書かれており、それを開くと目にも鮮やかな黄緑色の見返しが広がっている。様々なジャンルの作品が一冊にまとまっているようで、犬の飼い方から、一編の詩、果ては道路地図までと見事にバラバラだった。芽郁も奇妙に思ったが、どんなに奇妙でも、ないよりはましだった。


芽郁は半日かけて本を読み進めると、ページとページの間に紙が挟まっていることに気づいた。紙を取り出し、広げてみると、すごろくのようだ。しかも既製品ではなく、手作りらしい。久々に感じる人の存在に、芽郁も思わずうれしくなる。大判の紙に油性ペンで書かれた文字やイラスト。作者は何を思って作ったのだろう。芽郁は1つ1つのマスにゆっくりと目を通そうとした。


するとラグの上にいるエレフが言った。


「気づいちゃった?それは<人生ゲーム>、私のお気に入り。あなたが沈んでいるのが見てられなくて、ちょっとしたサプライズを仕掛けたの。」

「気持ちはありがたいんだけど、人生ゲームって、ひとりじゃ遊べなくない?虚しさに拍車がかかりそうなんだけど。」

「大勢で億万長者を目指すやつと違って、もっと高尚な遊びよ。ひとりでもちゃんと楽しめるから心配しないで。」


そう言うとエレフは、中からピクニックシートを取り出し、床に広げた。<人生ゲーム>を上に乗せ、自分もちゃっかり横端に陣取っている。芽郁も靴を脱いでシートに座る。


「あと必要なのはコマとサイコロね、取り出してちょうだい。」


芽郁がそれらを取り出すと、エレフはコマをスタート地点へ、サイコロを空いた場所に置いた。


「ゲーム・スタート!」


いつになく高いテンションでエレフがしゃべると、部屋に芽郁の生まれた日の光景が映し出された。プロジェクターがないのが不思議だったが、部屋が真っ白なおかげでスクリーンがなくても良く見える。はじめはポカンとしていた芽郁だったが、しだいに状況を飲み込みはじめ、エレフにこう尋ねた。


「<人生ゲーム>って、自分の人生そのものがテーマのゲームってこと?」

「そうだけど。」

「ちょっと怖くない?」

「私がついてるから安心して。で、やるの?やらないの?」


そう言われると、やらないとは言えない。芽郁はエレフに流されるまま、ゲームを続けることにした。

気に入ってくださったら、ブックマーク、評価、コメントなどいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ