早朝デート?
振り返ると女神、いや麗奈さんがいた。
上下スウェットだというのに、その可愛さたるや想像を超える。
原因はなんだ? ……髪型か?
サイドテールにして、前髪がおりている。
何より、眼鏡をしておる……これが、ギャップ萌えというやつか?
「あ、あのぅ……? あっ! そ、そうだよねっ! 眼鏡してるから……松浦です!」
眼鏡を外していそいそしている……本当に年上なのだろうか?
可愛すぎやしないか……というか、俺がおかしい気がする。
「いや、わかってますよ。麗奈さんということは」
「え? あれ? そうなの? ぼけっとしてたような……」
「すみません、つい幻かと思いまして。今、麗奈さんのことを考えていたもので」
それか! つい夢心地というか、変な気分なのは。
「えぇ!? わ、私のことを……? 」
「ええ、ここで会ったなと思いまして……つい最近のことなのに、ずっと前のような感覚になってました」
「そ、そういうことね……うぅー……心臓に悪いよぉ〜」
「はい?」
「ううんっ! でも、そうだよね……ここで会わなかったら、水戸君と仲良くなることもなかったし……もし仲良くなるとしても、ずっと後だったかもしれないね」
「ええ、そうかもしれないですね」
「あれ?……そういえば、なんでここに? それも、こんな早くに」
「いや、実は……」
昨日の出来事を簡潔に伝える。
「あぁー……わかるわ……」
「れ、麗奈さん?」
麗奈さんが何かを悟ったように遠くを見つめている。
「私にもあったよ……良くない企画書とか、部下にどう言ったら良いかなとか……」
「やはり、そうですか。月曜日に、新人さん二人にどう伝えれば良いのか……」
「傷つけないっていうのは難しいもんね……でも、言う方も言われる方も、そうやって成長するんだと思うよ」
「なるほど、皆が通る道なのですね」
「ふふ……嬉しいな」
「え?」
「水戸君と悩みを共有できて……うちの部署では、課長くらいしかいないから」
「確かに……元々新設の部署ですし、基本的に平社員が多いですもんね」
「そうなのよねー……主任の人も、他所に行ってしまったし……新しい主任も決めないといけないけど……」
「そうですよね……立ち話もあれですから、座りませんか?」
スーパーの横にはベンチがあるし。
「う、うん……」
ベンチに座るまえに、俺の上着を敷く。
「さあ、どうぞ」
「えぇ!? わ、悪いよ!」
「いえ、ただのジャージなので」
「私だってスウェットだし……なんで私はスウェットなのよぉ〜……」
「え? ……散歩をしているからでは?」
「そ、そうなんだけど! もう!」
「す、すみません……俺の気がすまないので、どうぞ遠慮なく」
「そ、それじゃあ……失礼します」
並んで座ったのは良いが……。
「遠くないですか? もっと楽にして良いですよ」
何故か、ベンチの端っこに座っている。
「い、いえ! 気にしないでっ!」
「いや、そういうわけにも……はっ! 俺、臭いですかね!?」
あれ!? シャワーを浴びたんだけど!? いや、歩いたからか!?
「えぇ!? く、臭くないよ!? く、臭いのは私だもん!」
「え?」
「あっ——はぅ……だってだって、寝起きだしお風呂入ってないし、汗かいて臭いし、水戸君に会うなんて思ってなかったから髪だってボサボサだし……」
……なんだろう、この可愛い人。
「気にしませんよ。いつも通り可愛いらしいし、良い匂いがしますから」
「ひゃい!? か、可愛い……良い匂い……」
「あっ——すみません! 歳上の方に向かって……それに、変態みたいなことを……」
「え、あ、う、あぅぅ……」
「お、俺! ジュース買ってきますね!」
慌てて立ち上がり、自販機の前に立つ。
何を言っているんだ!?
落ち着け! 突然会ったからといって気を抜くな!
「……よし、こんな時はコーヒーを飲むに限る」
気持ちを落ち着かせて、麗奈さんのところへ戻る。
「あっ、水戸君……」
「紅茶が好きでしたよね? 遠慮なくどうぞ」
「ぁ、ありがとぅ……」
「いえ、お気になさらずに」
「そ、そういえば! お姉さんは元気かしら?」
「え? まあ、元気ですよ。ただ、色々と身体に変化があるそうなので、少し心配ですね」
「わかるわ、その気持ち。三十路に近づくと、色々あるわよね」
「良い相手が見つかると良いのですが……」
ほとんど、俺のせいなんだけどな……ハァ、どっかにいないかね。
メンタルが強くて、うちの親父もスルーできるようなお調子者は……。
それで料理上手なら言うことないんだが……。
「わ、私にも良い相手いないかなぁ〜……」
「え?」
俺をチラチラ見ている?
……まさか、俺のことか?
「何処かにかっこよくて優しくて素敵な男性いないかなぁ〜……」
……違った、俺のことじゃないな。
かっこよくも優しくもないし。
アブナイアブナイ……とんだ勘違いをするところだった。
「いると良いですね。麗奈さんなら、きっと平気ですよ」
よし、俺に出来るのは……それに近づけるように努力することだな!
幸い、いないかなぁ〜ってことは、今はいないということだし。
「み、み……」
「み?」
「水戸君の——バカァァ——!!」
「えぇ!? れ、麗奈さん!?」
麗奈さんは走り去ってしまった……。
「俺、何か悪いこと言ったか?」
ただその直後に、ごめんなさいとメールがきた。
「ほっ……怒ってはいないようだ」
はて? なんだったんだろうか?




