これからの自分について
森島さんに相談した翌日……。
昼食をを食べ終えた俺は、リビングにて思案を巡らしていた。
「まずは、整理しよう」
パソコンを開き、ファイルを作る。
「俺が麗奈さんとどうなりたいか、そしてそのためには何をすれば良いか……」
打ってみたが……我ながら訳がわからん題名だな。
でも、これで良いはず。
器用でない俺は、こうして計画や目標を立てていかないと……。
昨日森島さんも言っていたが、仕事に影響したらいけないし。
「まずは、どうなりたいか……」
好きということは間違いない……はず。
ただ、結婚かと言われると……まだ、ピンとこない。
「結婚……あまり、良いイメージがないんだよなぁ……」
親父のせいで……あと、たまに思うことがある。
父性を感じることがなかった俺が、子供を育てられるのか?
もしかしたら……俺も、親父のようになってしまうのでは?
「反面教師にしようとは思うけど……よく、血は争えないっていうしな……」
でも……仮に、もし仮に麗奈さんと付き合えるなら……。
「結婚は考えなくてはいけないよな……」
麗奈さんの年齢もあるし……。
俺とて、あっという間に三十歳くらいにはなるだろうし。
「そうなると……」
ただ、結婚を前提としたお付き合いならどうだろう?
それなら、良いのでは?
「だから、申し込む時はそれを伝えるべきか」
俺は口に出しつつ、心の中で考えながら整理していく。
さらに、それを入力していく。
「結婚を前提にお付き合いしてくださいと……さて、そのためには何をすれば良いかだな」
まずは、仲良くなること。
そして、お互いを理解すること。
結婚を前提に考えるなら、なおさらのことだ。
「好きだからといって上手くいくわけではないしな……俺がそうだったし」
まあ、冷静に考えてみると……俺が全部悪いんだろうな。
言われるがままに付き合って、煮え切らない俺が……。
「そう……俺には成功体験がない。そして、自分に自信がない」
告白したこともなし、振ったこともない。
仕事も言われた仕事はこなせるが、自発的に動いて仕事はしない。
「それは……怖いからだ」
告白は勇気がいるし、振るのは相手を傷つける。
余計な仕事に手を出して、失敗したらどうしようとか考えてしまう。
「……となると、次は自信をつけることか」
これは、新しい仕事をこなすことでつくかもしれない。
あとは……資格とかを取るか?
何か、自分に自信がついて……なおかつ、これからに役立つことを。
「そもそも、今の俺では……麗奈さんみたいな方と釣り合うわけがない」
そういった意味でも、昇格したり、自分に自信をつけることは悪くないはず。
「うん……少しずつだが、見えてきたな」
パソコンにまとめの文章を打つ。
「麗奈さんのことを知り、俺のことも知ってもらう→もしそれでも好きだと思ったら、結婚を前提としたお付き合いを申し込む→その前に自信をつけ、さらに麗奈さんに釣り合う男になる→そのためには、まず目の前の仕事に真面目に取り組む」
とりあえずは、こんな感じか?
まあ……そもそも、麗奈さんが俺をなんとも思ってなかったらどうにもならないけど。
「……こういうマイナス思考も直していかなきゃな……」
プラス思考すぎるのも考えものだけど……。
少しはあった方がいいだろうな。
その後夕方を迎え、俺は外出をして車を走らせる。
「姉貴の家行くのも久々かもな……」
作り置きのカレーと、昨日のケーキをお土産に持ったし……。
あとはサラダボックスも用意したし……。
「これで、車を借りたお礼にはなるだろう」
無事に到着して、部屋の中に入る。
「姉貴、車をありがとな。助かったよ」
「まあ、上がんなさいよ。土産話を聞く権利はあるでしょ?」
「ハハ……お手柔らかに」
テーブルにつき、食事を終えた後、麗奈さんとの出来事を話していく。
もちろん、麗奈さんの家庭の事情については言ってない。
プライベートなことだし、俺とて詳しい内容は知らないからだ。
憶測で物事を判断してはいけないし。
「なるほどね……とりあえず、好きなのね?」
「ああ、そうだと思う……ただ、経験がないのでいまいちわからんが」
「まあ、好きだと思うわよ?ドキドキしたり、その人のことが頭から離れなくなってるってことは……遅れてきた青春って感じね」
「ほっとけ」
「それどころじゃなかったもんね、アンタは……小さい頃から手伝いで遊ぶ暇もなくて、高校行ったら本格的にお父さんにしごかれて、その後は勉強漬けの毎日。大学行ってもバイト三昧で、寝るかバイトするかの生活。むしろ、そんな中……彼女が出来て良かったわね?」
「そのあたりは思い出したくもないが……少しずつ飲み込んでいこうかと思う。それと……確かに苦い思い出だけど、プラスに考えたらそうなのかもな」
「おっ、良い傾向ね?」
「実は、麗奈さんと付き合う上で……」
俺は、プランを立てたことを伝える。
「ハハハッ!」
「笑うなよ……自分でも、変だという自覚はある」
「ごめんごめん……あー、面白い。でも、アンタらしいと思うわ」
「そ、そうか……」
「いいんじゃない?自分が納得できなければ、どうにもならないし。今のままで付き合えたとしても、自分に自信がなくて一歩引いちゃったりしちゃうってことでしょ?」
「……そういうことだと思う」
「結局……付き合いました、でも別れましたっていうのは迷惑ではあるし……結婚を前提っていうのも悪くないと思う」
「ありがとう、姉貴。少しほっとした……後、母さんに電話したよ」
「あっ——聞いたわよ。お父さんと話すんだって?」
「まあ……そのうちね。あれも、俺が自信がない原因でもあるから、いずれは乗り越えないといけないと思うし」
「そうねー……よし!その時が来たら——私に言いなさい!」
「え?……姉貴を巻き込むわけには……」
ただでさえ、色々と苦労をかけているのに……。
「私だって家族よ?皆が仲良く……ってわけにはいかないけど、たまに会って喋るくらいにはなってほしいし」
「そうか……うん、わかった。その時が来たら相談するよ」
「うむ、素直でよろしい。あっ——もう、こんな時間ね」
19時前には来たが、すでに21時を過ぎていた……。
カレーとデザートを食べたとはいえ、あっという間に過ぎたな。
「じゃあ、帰るよ」
「そうね、また遊びに行くわ」
「……ほどほどでお願いします」
「はいはい、わかったわよ」
タクシーに乗り、家に帰る途中で思い出した。
「あっ——森島さんのこと言ってない……」
……まあ、いいか。
別に、いちいち言うことでもないか。




